外は暗くなり駅近くのスーパーで買い物を済ませて、買い物袋を手に店を出る。華やかな駅前の広場に出た時、向こうに数人の男性と混じり話をする勇人を見つける。
何食わぬ顔で通り過ぎようとした瞬間、1人の男性が肩に手を置き、名前が振り返り睨みつけた。


「可愛いねー。てか、勇人と同じ学校じゃね？どこ行くの？一緒に遊ばない？」
「おい。クラスの女、ナンパすんなよ」


私服姿の勇人が肩に乗った手を払いのけ、名前が勇人に目を向けた。


「...友達？」
「まぁな。いつも連んでる奴ら」
「そっか...。でも友達は選んだ方がいいと思うよ？...って、私が言うことじゃないけど」
「おい、選ぶってーーー...」


そう言いかけた時、声をかけた男性がぐっと肩を持ち名前を振り向かせ胸倉を掴み、険悪な表情を見せた。


「...っ...！」
「下手に出てりゃ生意気言いやがって...！！」
「おい！やめろって！！」


胸倉を掴む男性の腕を勇人が掴み、その腕を払いのけ身体が離れ名前がキッと勇人を睨みつけ、逃げ出してその場から離れる。すると勇人もその背中を追ったーーー。


「おいっ！待てって...！！」
「着いてこないでっ...放して！」


名前の肩を掴み振り向かせると、微かに手が震えているのが分かるが俯いている顔からは表情を窺えない。


「......だから嫌なの！人と関わるなんてっ！！......もう放っておいてっ......」
「だったら俺が信じさせてやるよ」
「......は？」


勇人が肩から手を放して名前の目の前に手を差し伸べる。その自信に満ちた笑顔に一瞬だけ目を奪われた。


「......カメラ、壊したくせによく言う...」
「おまっ...まだ根に持ってんのか？謝ったじゃねーか」


チラリと勇人の表情を窺えば、頭をガシガシと掻き溜息を漏らし再び手を差し伸べる。



なんでそこまでするんだろ...
こんな面倒くさい私に...



「......言っておくけど、まだ信用したつもりはないから...」


名前が差し伸べた手を握り返し遠慮がちに微笑み返せば、勇人も同じく握り返して満足気に笑う。


「......じゃ、私こっちだから」
「名字」


クルリと振り返り勇人に背中を見せて歩き出そうとした時、呼び止められ顔だけ振り返えった。


「また明日な」
「...っ...」


不覚にも勇人の笑顔に胸が高鳴り、足早にその場から去るーーー。


「......素直じゃねぇな、アイツ...」