最悪という言葉が似合う日
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最悪だーーー。
大学に進学後、1ヶ月前にアパートへ引越しをして新生活が始まった矢先に起きた出来事....
雨の中、傘もささず、言葉もなく煙が燻 るアパートの焼け跡を見つめていた。
「ーーー結構、古いアパートだったからねぇ....燃え広がるのが早かったみたいよ~」
「大家さんの火の不始末って....洗濯物、コタツに入れてたらそりゃ燃えるに決まってるわよねー」
そう。火事は大家さんがコタツの中に洗濯物を入れ、そのまま出し忘れた事によって起きた火事で。
近所のおばちゃんたちの会話がダイレクトに響き、思わずその場にへたり込むーーー。
「名前ちゃん、大丈夫かい?」
「.......1ヶ月前に越してきたばっかりなんです......授業で使う物とか、レポートとか全部燃えちゃってーーー....」
「......大家さんの息子さんも心配して頻繁に注意はしてたみたいなんだけど、....ほら。大家さん、結構、歳でしょう?なかなかその癖が直らなかったみたいで....」
そう言っておばちゃんが私の真上に傘をさした時、不意に頭の上に手のひらの感触が伝わり顔を上げた。
「あら....拓海くんじゃない」
「え.....」
「傘もささないで風邪引くぞ」
おばちゃんの声と共にタク兄が私の顔を覗き込み、持っていた傘を私に向けて頭を撫でる。その行動に糸が切れ、思わずタク兄に抱きつく。
「うっ.....タク兄!!」
「もう大丈夫だ。近所で火事があったって聞いてすぐ駆けつけた甲斐があったよ」
「私っ、.....明日からホームレスだよぉ~....」
泣きじゃくる私を見ておばちゃんたちが心配そうな表情で見つめる中、タク兄が服の袖で私の頬を流れる涙をぐっと拭く。
「行くところがないなら家に来ればいい。前に、この近くでシェアハウスの管理人やってるって言っただろ?」
「でも....そこは大学生は無理だって.....」
「あぁ。社会人だけのシェアハウスだけど、今回は仕方ないよ。きっとみんなも納得してくれる」
「...............」
二人の会話を聞いていたおばちゃんが私の肩に軽く置いて微笑み、私たちに話すように声をかけた。
「拓海くん、名前ちゃんの従兄 なんでしょ?こういう時は甘えなさい」
「おばちゃん.....」
おばちゃんからタク兄に目を向ければ、静かに頷いてその答えに私も躊躇しつつも頷いたーーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
二人で傘をさしながらシェアハウスへと歩き、私の肩にはタク兄の着ていたジャケットが掛けられ同じ歩幅で歩き出す。タク兄の顔をチラリと窺えば目と目が合い、慌てて俯く。
「大事な物は無事なのか?」
「あ、うん.....いつもカバンに入れてたから....」
「そうか。なら良かった」
「............」
どちらともなく会話が途切れた時、タク兄が不意に立ち止まって私の頬ほムギュっと軽くつねる。それは、昔から私が落ち込んだ時にする仕草で、案の定、変な声が口から漏れた。
「むっーーー....!」
「心配すんなって言っても、今は無理かも知れないけど俺も最大限、力になるから安心しろ」
「.....ひゃくにぃ .....」
鼻の奥がツンと熱く感じ、眉を潜めてコクリと頷けば納得したようにタク兄が優しく微笑んでようやく頬から手を離す。
「.....ありがとう」
早くに両親を亡くした私にとって、タク兄は近しい家族のような存在で心から頼れる存在だ。今まで何度、助けられただろうーーー。
タク兄は大学卒業後、アパレル関係の会社を立ち上げて今に至る言わば社長さん。
「ほら、着いたぞ。ここが雲蒸荘だ」
目の前の建物に顔を上げればそこは立派な洋館らしく、名前と釣り合わないほどの門構えの建物だった。
「うわっ....すごい....」
「前の住人がこの広い屋敷を使って部屋を貸していたらしくてさ。その住人が手放すっ聞いて、俺が買い取ったってわけ。だからそのままこの屋敷をシェアハウスに使わせてもらってる」
「そうなんだ....」
「じゃ、行くか」
「.....うん」
関心と不安が交互に押し寄せる中、私はタク兄の背中を追ってシェアハウスの中に足を踏み入れた。
大学に進学後、1ヶ月前にアパートへ引越しをして新生活が始まった矢先に起きた出来事....
雨の中、傘もささず、言葉もなく煙が
「ーーー結構、古いアパートだったからねぇ....燃え広がるのが早かったみたいよ~」
「大家さんの火の不始末って....洗濯物、コタツに入れてたらそりゃ燃えるに決まってるわよねー」
そう。火事は大家さんがコタツの中に洗濯物を入れ、そのまま出し忘れた事によって起きた火事で。
近所のおばちゃんたちの会話がダイレクトに響き、思わずその場にへたり込むーーー。
「名前ちゃん、大丈夫かい?」
「.......1ヶ月前に越してきたばっかりなんです......授業で使う物とか、レポートとか全部燃えちゃってーーー....」
「......大家さんの息子さんも心配して頻繁に注意はしてたみたいなんだけど、....ほら。大家さん、結構、歳でしょう?なかなかその癖が直らなかったみたいで....」
そう言っておばちゃんが私の真上に傘をさした時、不意に頭の上に手のひらの感触が伝わり顔を上げた。
「あら....拓海くんじゃない」
「え.....」
「傘もささないで風邪引くぞ」
おばちゃんの声と共にタク兄が私の顔を覗き込み、持っていた傘を私に向けて頭を撫でる。その行動に糸が切れ、思わずタク兄に抱きつく。
「うっ.....タク兄!!」
「もう大丈夫だ。近所で火事があったって聞いてすぐ駆けつけた甲斐があったよ」
「私っ、.....明日からホームレスだよぉ~....」
泣きじゃくる私を見ておばちゃんたちが心配そうな表情で見つめる中、タク兄が服の袖で私の頬を流れる涙をぐっと拭く。
「行くところがないなら家に来ればいい。前に、この近くでシェアハウスの管理人やってるって言っただろ?」
「でも....そこは大学生は無理だって.....」
「あぁ。社会人だけのシェアハウスだけど、今回は仕方ないよ。きっとみんなも納得してくれる」
「...............」
二人の会話を聞いていたおばちゃんが私の肩に軽く置いて微笑み、私たちに話すように声をかけた。
「拓海くん、名前ちゃんの
「おばちゃん.....」
おばちゃんからタク兄に目を向ければ、静かに頷いてその答えに私も躊躇しつつも頷いたーーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
二人で傘をさしながらシェアハウスへと歩き、私の肩にはタク兄の着ていたジャケットが掛けられ同じ歩幅で歩き出す。タク兄の顔をチラリと窺えば目と目が合い、慌てて俯く。
「大事な物は無事なのか?」
「あ、うん.....いつもカバンに入れてたから....」
「そうか。なら良かった」
「............」
どちらともなく会話が途切れた時、タク兄が不意に立ち止まって私の頬ほムギュっと軽くつねる。それは、昔から私が落ち込んだ時にする仕草で、案の定、変な声が口から漏れた。
「むっーーー....!」
「心配すんなって言っても、今は無理かも知れないけど俺も最大限、力になるから安心しろ」
「.....
鼻の奥がツンと熱く感じ、眉を潜めてコクリと頷けば納得したようにタク兄が優しく微笑んでようやく頬から手を離す。
「.....ありがとう」
早くに両親を亡くした私にとって、タク兄は近しい家族のような存在で心から頼れる存在だ。今まで何度、助けられただろうーーー。
タク兄は大学卒業後、アパレル関係の会社を立ち上げて今に至る言わば社長さん。
「ほら、着いたぞ。ここが雲蒸荘だ」
目の前の建物に顔を上げればそこは立派な洋館らしく、名前と釣り合わないほどの門構えの建物だった。
「うわっ....すごい....」
「前の住人がこの広い屋敷を使って部屋を貸していたらしくてさ。その住人が手放すっ聞いて、俺が買い取ったってわけ。だからそのままこの屋敷をシェアハウスに使わせてもらってる」
「そうなんだ....」
「じゃ、行くか」
「.....うん」
関心と不安が交互に押し寄せる中、私はタク兄の背中を追ってシェアハウスの中に足を踏み入れた。