役人のお仕事
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翌日になって真選組屯所を見上げる名前の姿があった。さかのぼること数時間前ーーー。
「あの、たまさん。真選組までの行き方、教えてもらえないかな....」
お登勢が不在中、たまと二人で店の掃除をしていた名前が口を開くと、たまが手を止めて不思議そうな表情を浮かべた。
「名前様、何かやらかしたのでしょうか?」
「いや.....やらかしたって言うか~....ちょっと誤解を解きに行こうかと....だからお願いしマス」
「....誤解、ですか?」
スッと頭を下げる名前にたまがモップをカウンターに立て掛けて、何やら紙に筆を走らせて手渡す。
「何があったのかは聞きませんが、お気をつけて行ってください」
「ありがとう、たまさん。お登勢さんにも伝えておいて」
「わかりました」
ーーーと、こんな感じで今、屯所の前に立ち改めて周りを見渡す。
「え、と.....」
誰もいないし広いし....どうしようか。
「ご、ごめん....くださーい.....」
「ーーーあ、屯所に御用ですか?」
「ひゃっ!?」
不意に背後から声をかけられ肩が跳ね上がり振り返れば、同じく黒い隊服を着てニコニコと笑顔の一人の見知らぬ男性が立ち、慌てた様子を見せた。
「わっ、すみません。驚かせるつもりはなかったんです!」
「い、いえ....あの、屯所の方ですか?」
「はい。山崎退といいます。どういった御用で....?」
「よかった...山崎さんですね。こちらの局長さんにお会いしたいんですけど....」
名前がほっと一息ついて山崎に事情を説明すると少し不思議な表情を浮かべ問い返す。
「え?局長にですか?.......あ!わかりました!もしかして、万事屋の旦那に世話になってる方ですよね!?」
「え、...まぁ...厳密にはお登勢さんのところでお世話になってます、名字です」
「やっぱり!副長から話は聞いてますよ。こちらへどうぞ」
そう言って山崎の表情が笑顔に変わり、屯所の中へと案内を始めると名前も少し躊躇しつつも後をついて行く。屯所と言うだけあり屋敷の中は広く、何人かの隊士とすれ違い隊服の違いでどういう構成か大体は予想はついた。
「ちょっと待っててください」
「あ、はい」
ある部屋の前に着くと山崎が部屋の中に入り、局長らしき人物と会話するのが耳に入り、すると部屋から顔を出して「どうぞ」と中へ即され名前が足を踏み入れる。胡坐をかいて座るその人物は厳しい表情のいかにも"局長"という人物で、素直に目の前に腰を下ろした。
「いや~。来るとは思っていましたよ、名字さん。俺が真選組局長の近藤勲です」
「.....今日は先日の事でお話に来ました」
表情を変える事無く名前が鞄の中から警察手帳を取り出して二人の間に置くーーー。
「こちらの副長さんにご説明したとおり、私はこの時代の者ではありません。ですが、端 から攘夷浪士と疑われ、万事屋の方々も同じく私のせいで疑われています。確かに私がこの時代に来た事によって疑われるのは自由です。ですが、関係のない人を疑うのは同じ警察官として許しがたいことです」
一通り名前が自分の意思を伝え終わると同時に、近藤が腕を組み深い溜息を漏らし一瞬だけ目を閉じてすぐに前を見据えた。
「大方、話は聞いていますよ。トシが有らぬことを言って申し訳ない。名字さんの怒る気持ちも良くわかる。なにぶん役人柄、疑ってかからねぇとやって行けねぇ性分でな。名字さんも同じ役人ならわかるでしょう?」
「だからと言って何も証拠もないのに攘夷浪士だと疑うのは納得がいきません。たとえ、坂田さんが元攘夷浪士だと知っていてもお世話になったからと言って疑うのはそれこそ横暴に過ぎません。.....この手帳は私にとって命の次に大切なもので、刑事として誇りを持っています。同じ警察官として、局長さんにもわかると思いますがーーー....」
この時代の"道理"は私たちの時代の"道理"には通用しない。
そんな事は端からわかってる。でもーーー...
言い終わるのと同じく近藤がガハハと不意に笑い出し、名前がその様子に思わず目を丸くして見つめる。
「いや、すまない。さすが同じ警察の者として納得をしただけだ。トシの言い分ももちろん、名字さんの言いたい事もわからくはねぇ。名字さんのいた時代の役人と俺たち真選組の考え方は違いがあるのは仕方がないこと....。だが、ここは江戸だ。真選組には真選組のやり方ってもんがある」
「そのやり方が端から人を疑うことなんですか?」
「まぁ、話を聞いてくれ。俺たち真選組は学も思想もねぇ頃、一から鍛え今の真選組を保ってんのと同じだ。理屈より感情が先走って動く連中も多い。それでも江戸のため、将軍様のために江戸の街を守ってる。名字さんには迷惑をかけたことは申し訳ないが、こちらの事情も把握してもらいたい」
「............」
"理屈より感情"かーーー。
今の私の時代じゃ、考えられない事だな....。
この時代だからこそ、なのかもしれない。
考えつつも名前が目の前に置いた手帳を鞄にしまいこみ、再び目線を逸らさずにいる近藤を見据えた。
「.....わかりました。この時代の警察の仕組みまでとは言いませんが、真選組の意思やその考えが伝わりました。ただ、人を安易に疑う事だけは納得がいかないのも事実ーーー....」
「ーーーだったら何か確証につながるモンでも出せばいいだけの話だろ」
不意に声と共に部屋の障子が開き、煙草の紫煙を燻らせた土方が部屋に入り名前を横目に見る。
「トシ....」
「近藤さんが何と言おうと俺はまだアンタの疑いを晴らした覚えはねぇ」
名前は目を逸らす事無く土方を見据えると再び近藤に目を向け、落ち着いた様子で呟く。
「ご自由にしてください。それがあなた達の仕事なら、私は何も言うつもりはありません。突然、この時代に飛ばされて....一ヶ月後には私は自分のいた時代に戻る身ですから」
「....突然、飛ばされた?」
「名字さん、それはどういう事ですか?」
「ある装置でこの時代に飛ばされたんです。その装置は未完成で直り次第、私は自分のいた時代に戻ります」
「その装置、とは....」
「それ以上の事は話せません....。というか、取調べとは別なので話す義務はないと思いますが」
言い終わるのと同じくして土方がチッと舌打ちをして煙草の煙を吐き出すと、近藤がチラリと一瞬だけ目線で土方を牽制 して再び名前を見据えた。
「とにかく、名字さんから話を聞けてよかった。お引き取りいただいても結構です」
「....そうですか。私もお話を聞いていただいて良かったです。ありがとうございました。ではーーー....」
名前が立ち上がり、部屋を出て行くついでにチラリと土方を見つめてすぐに前を見据え部屋を出て行くーーー。
完全に名前が部屋を出て行ったところで、土方が部屋に入って帯刀を畳に置き、近藤の前に腰を下ろした。
「見たか、トシ....名字さんの目が一瞬にして俺たちと同じ目をしてた。肝が据わってやがる....。女じゃなけりゃ、是非とも真選組 に引き入れてぇもんだよ」
「....本気で言ってんのか?近藤さん」
「お前の目でもわかっただろ?名字さんもダテに役人やってる訳じゃねぇって」
「...........」
苦虫を噛み殺した様な表情の土方に近藤がふと笑い、静かに言葉を続ける。
「俺はお前を止めるつもりはねぇ。だが、お前にも名字さんの意思が伝わったのなら、受け入れるのも勇気だぞ」
「.....そんな勇気なんざいらねぇよ。俺は真選組副長として全うするだけだ」
「相変わらず、素直じゃねぇな」
「.....俺は疑い深いんだよ。納得するまで俺は引かねぇ」
煙草の煙を燻らせたまま土方が部屋を静かに部屋を出で行き、近藤が深い溜息と共に苦笑いを浮かべて腕を組みなおす。
「仕方ねぇ奴だな.....」
「あの、たまさん。真選組までの行き方、教えてもらえないかな....」
お登勢が不在中、たまと二人で店の掃除をしていた名前が口を開くと、たまが手を止めて不思議そうな表情を浮かべた。
「名前様、何かやらかしたのでしょうか?」
「いや.....やらかしたって言うか~....ちょっと誤解を解きに行こうかと....だからお願いしマス」
「....誤解、ですか?」
スッと頭を下げる名前にたまがモップをカウンターに立て掛けて、何やら紙に筆を走らせて手渡す。
「何があったのかは聞きませんが、お気をつけて行ってください」
「ありがとう、たまさん。お登勢さんにも伝えておいて」
「わかりました」
ーーーと、こんな感じで今、屯所の前に立ち改めて周りを見渡す。
「え、と.....」
誰もいないし広いし....どうしようか。
「ご、ごめん....くださーい.....」
「ーーーあ、屯所に御用ですか?」
「ひゃっ!?」
不意に背後から声をかけられ肩が跳ね上がり振り返れば、同じく黒い隊服を着てニコニコと笑顔の一人の見知らぬ男性が立ち、慌てた様子を見せた。
「わっ、すみません。驚かせるつもりはなかったんです!」
「い、いえ....あの、屯所の方ですか?」
「はい。山崎退といいます。どういった御用で....?」
「よかった...山崎さんですね。こちらの局長さんにお会いしたいんですけど....」
名前がほっと一息ついて山崎に事情を説明すると少し不思議な表情を浮かべ問い返す。
「え?局長にですか?.......あ!わかりました!もしかして、万事屋の旦那に世話になってる方ですよね!?」
「え、...まぁ...厳密にはお登勢さんのところでお世話になってます、名字です」
「やっぱり!副長から話は聞いてますよ。こちらへどうぞ」
そう言って山崎の表情が笑顔に変わり、屯所の中へと案内を始めると名前も少し躊躇しつつも後をついて行く。屯所と言うだけあり屋敷の中は広く、何人かの隊士とすれ違い隊服の違いでどういう構成か大体は予想はついた。
「ちょっと待っててください」
「あ、はい」
ある部屋の前に着くと山崎が部屋の中に入り、局長らしき人物と会話するのが耳に入り、すると部屋から顔を出して「どうぞ」と中へ即され名前が足を踏み入れる。胡坐をかいて座るその人物は厳しい表情のいかにも"局長"という人物で、素直に目の前に腰を下ろした。
「いや~。来るとは思っていましたよ、名字さん。俺が真選組局長の近藤勲です」
「.....今日は先日の事でお話に来ました」
表情を変える事無く名前が鞄の中から警察手帳を取り出して二人の間に置くーーー。
「こちらの副長さんにご説明したとおり、私はこの時代の者ではありません。ですが、
一通り名前が自分の意思を伝え終わると同時に、近藤が腕を組み深い溜息を漏らし一瞬だけ目を閉じてすぐに前を見据えた。
「大方、話は聞いていますよ。トシが有らぬことを言って申し訳ない。名字さんの怒る気持ちも良くわかる。なにぶん役人柄、疑ってかからねぇとやって行けねぇ性分でな。名字さんも同じ役人ならわかるでしょう?」
「だからと言って何も証拠もないのに攘夷浪士だと疑うのは納得がいきません。たとえ、坂田さんが元攘夷浪士だと知っていてもお世話になったからと言って疑うのはそれこそ横暴に過ぎません。.....この手帳は私にとって命の次に大切なもので、刑事として誇りを持っています。同じ警察官として、局長さんにもわかると思いますがーーー....」
この時代の"道理"は私たちの時代の"道理"には通用しない。
そんな事は端からわかってる。でもーーー...
言い終わるのと同じく近藤がガハハと不意に笑い出し、名前がその様子に思わず目を丸くして見つめる。
「いや、すまない。さすが同じ警察の者として納得をしただけだ。トシの言い分ももちろん、名字さんの言いたい事もわからくはねぇ。名字さんのいた時代の役人と俺たち真選組の考え方は違いがあるのは仕方がないこと....。だが、ここは江戸だ。真選組には真選組のやり方ってもんがある」
「そのやり方が端から人を疑うことなんですか?」
「まぁ、話を聞いてくれ。俺たち真選組は学も思想もねぇ頃、一から鍛え今の真選組を保ってんのと同じだ。理屈より感情が先走って動く連中も多い。それでも江戸のため、将軍様のために江戸の街を守ってる。名字さんには迷惑をかけたことは申し訳ないが、こちらの事情も把握してもらいたい」
「............」
"理屈より感情"かーーー。
今の私の時代じゃ、考えられない事だな....。
この時代だからこそ、なのかもしれない。
考えつつも名前が目の前に置いた手帳を鞄にしまいこみ、再び目線を逸らさずにいる近藤を見据えた。
「.....わかりました。この時代の警察の仕組みまでとは言いませんが、真選組の意思やその考えが伝わりました。ただ、人を安易に疑う事だけは納得がいかないのも事実ーーー....」
「ーーーだったら何か確証につながるモンでも出せばいいだけの話だろ」
不意に声と共に部屋の障子が開き、煙草の紫煙を燻らせた土方が部屋に入り名前を横目に見る。
「トシ....」
「近藤さんが何と言おうと俺はまだアンタの疑いを晴らした覚えはねぇ」
名前は目を逸らす事無く土方を見据えると再び近藤に目を向け、落ち着いた様子で呟く。
「ご自由にしてください。それがあなた達の仕事なら、私は何も言うつもりはありません。突然、この時代に飛ばされて....一ヶ月後には私は自分のいた時代に戻る身ですから」
「....突然、飛ばされた?」
「名字さん、それはどういう事ですか?」
「ある装置でこの時代に飛ばされたんです。その装置は未完成で直り次第、私は自分のいた時代に戻ります」
「その装置、とは....」
「それ以上の事は話せません....。というか、取調べとは別なので話す義務はないと思いますが」
言い終わるのと同じくして土方がチッと舌打ちをして煙草の煙を吐き出すと、近藤がチラリと一瞬だけ目線で土方を
「とにかく、名字さんから話を聞けてよかった。お引き取りいただいても結構です」
「....そうですか。私もお話を聞いていただいて良かったです。ありがとうございました。ではーーー....」
名前が立ち上がり、部屋を出て行くついでにチラリと土方を見つめてすぐに前を見据え部屋を出て行くーーー。
完全に名前が部屋を出て行ったところで、土方が部屋に入って帯刀を畳に置き、近藤の前に腰を下ろした。
「見たか、トシ....名字さんの目が一瞬にして俺たちと同じ目をしてた。肝が据わってやがる....。女じゃなけりゃ、是非とも
「....本気で言ってんのか?近藤さん」
「お前の目でもわかっただろ?名字さんもダテに役人やってる訳じゃねぇって」
「...........」
苦虫を噛み殺した様な表情の土方に近藤がふと笑い、静かに言葉を続ける。
「俺はお前を止めるつもりはねぇ。だが、お前にも名字さんの意思が伝わったのなら、受け入れるのも勇気だぞ」
「.....そんな勇気なんざいらねぇよ。俺は真選組副長として全うするだけだ」
「相変わらず、素直じゃねぇな」
「.....俺は疑い深いんだよ。納得するまで俺は引かねぇ」
煙草の煙を燻らせたまま土方が部屋を静かに部屋を出で行き、近藤が深い溜息と共に苦笑いを浮かべて腕を組みなおす。
「仕方ねぇ奴だな.....」