毒牙という名の罠
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
屯所の中に入れば少々、慌しさがありすれ違う隊士たちが忙しそうに走り去る。その様子に眉を潜めつつ局長の部屋に踏み入れれば先日、吉原にいた隊士が近藤と向かい合わせに座っているのが見え、一瞬だけ身じろいだ。
「名前?」
それを見た銀時が声をかけて覗き込むと、名前が咄嗟に後ろに身を隠して眉を潜め小声で呟くーーー。
「待って.....あの人、吉原にいたお客なんだけど......!」
「は?」
そう言って銀時が同じく眉を潜めて見つめれば、近藤が五人に気づきその隊士を退室させた。
「ーーー話の続きはあとからだ。行っていい」
「はい。では失礼します」
河原という男は土方と沖田に気づくと軽く一礼をして名前に気づく事無く部屋を出て行く。そのすぐ後にようやく名前が銀時から離れて大きく溜息を漏らせば、不意に土方が静かに煙草の煙を吐いて呟く。
「.......河原謙二郎。十番隊の隊士で主に御上と真選組の遣いをしてる。剣の腕前も度胸もある男だ。ただ、自分より強ぇモンにきわめて執着する傾向があるのも確か......」
「もしかして土方さんたち......吉原に来ていた隊士のことを知っていたんですか?」
「当たり前だ。真選組を舐められちゃ困る」
さすがこの時代の警察.....
やっぱり情報収集は当たり前、か......
新八の問いかけに土方が表情を変えずに背中で語れば、近藤さんが組んでいた腕を解いて深い溜息をもらせば、全員がそちらに目を向けた。
「.......厄介な事になったな」
「近藤さん。河原と何話してたんですかィ?」
「まさか.....御上から何か言われたのか?」
土方がより一層、眉に皺を寄せて呟けば近藤が同じ表情を浮かべるーーー。
「当初は名字さんを保護する名目として真選組に留まらせるつもりだったが、御上が見廻組に引き渡せと言ってるらしくてな」
「なんで一橋派のエリートが顔突っ込んでくる?」
「要はあれですよねィ?幸い、名前さんの素性は向こうにはバレてません。それを逆手にとってすべての罪を名前さんに擦り付けるって魂胆ですかィ?」
「擦り付けるってーーー.....!」
「それが本当なら名前さんがここにいるのは危険なんじゃっ.....」
名前が言葉を詰まらせてぐっと拳に力を入れれば、銀時が隣でチッと舌打ちをして頭を掻く。
「御上の方がてめぇらより一歩上手だったっことか.....だからてめぇらのとこには行かねぇっつったんだよ」
「何も策がねぇ訳じゃねーよ」
「あぁ。そこで名字さんに折り入って話がある」
土方が煙草の火を消し、近藤が名前たちに向かいに座るように即す。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーえ、.....わ、私を真選組にですか.....?」
「見廻組が嗅ぎつけるのも時間の問題......そこで名字さんを真選組に引き入れればこちらも名字さんもある程度は自由に動ける」
目が点になっている名前を横目に土方が再び煙草を咥えて火をつける。
「そもそも、真選組は女人禁制だ。俺は反対したんだがな」
「.....他の隊士の方は納得しているんですか?」
「してない隊士がいるのも確かでさァ。ただどちらが動きやすいかは、いくら名前さんでもわかりますよね?」
「...............」
『......組織なんてモノは所詮、手柄の奪い合いだのミスの擦り付け合いだ。その中でどれだけその目で見極めるかが重要だ、名前......』
「........見極めが重要........」
「名前さん......?」
考え込む名前に新八が心配そうに顔を覗き込み、それを横目にグッと顔を上げて近藤を見据えたーーー。
「わかりました。協力します」
その一言に土方と沖田が少し横目で見据え、他の三人が名前の真面目な表情を勢いよく覗き込む。
「はぁ!?お前正気か!?むさっ苦しいオッサンのいる場所だぞ!?」
「そうアル!!むさっ苦しいだけじゃなく、ニコチンまみれでストーカーゴリラがいる税金泥棒の巣窟アルよ!?」
「おい、チャイナ!黙って聞いてりゃ、言いたい放題言ってんじゃねーぞ!!」
「......正気です。ただし一つだけ条件があります」
その横で取っ組み合いをしていた土方と神楽も名前の一言に反応して動きを止め、近藤が再び腕を組んで耳を傾ける。
「条件とは?」
「先ほども言った通り、私はあなたたちを信用した訳ではありません。いくら警察と言っても幕府内の組織に過ぎない......真選組の組織に入る代わりに、私もあなたたちを利用させてもらいます」
「テメー.....俺たちが利用してるとでも言いてぇのか?」
先ほどと同じく、それ以上に眉を潜めて土方が名前を見据えればそれをもろともせずに口元を上げて微笑み返す。
「ーーー敵を欺 く前に、まずは味方からって言うでしょう?」
「........良かったな、近藤さん。アンタの夢が叶ったぞ」
「え?」
微笑から目を瞬きさせる名前にチッと舌打ちをして苦虫を噛み潰した表情で呟く土方を見て、近藤が盛大に笑い声を上げて言葉を続けた。
「ガハハハ!!こりゃ、トシを納得させるなんて大した奴じゃねぇか」
「あの土方さんでも珍しく食い下がる事があるんですねィ.....いいものを見やした」
「総悟っ.......テメー.......」
「わかった。名字さんの条件を呑もう。それで異議はねぇな?」
「.......ありがとうございます」
座りながら頭を下げれば、隣で胡坐を掻く銀時が渋い表情で頭を掻きながら立ち上がり、新八と神楽が不思議そうに見上げた。
「銀さん?」
「......ったく。相変わらず言うこと聞かねぇ強情な女だな。行くぞ、てめぇら」
「待ってヨ!本当にいいアルか?」
「仕方ねぇだろーが。コイツにも何か考えがあんだろ」
名前が銀時を軽く睨むように見上げて目を合わせ、それを見た新八がボソッと呟く。
「.......銀さん、睨まれてますよ」
「言うこと聞かなくて強情な女で悪かったわね」
「最高の褒め言葉だろーが」
「どこが!?.....っていうか、帰る前に話があるの」
「は?」
土方たちと神楽たちを部屋から出させて向かい合わせに座り、銀時が胡坐を掻いてダルそうに腰を下ろした。
「で?何なの?銀さんとの別れが恋しくなったか~?」
「誰が?」
名前が眉を潜めて銀時を見据えれば、溜息混じりに両手を後ろに置いて体重をかける。
「まぁ、いいけどさ。何しようとしてる訳?」
「情報を集めるなら、真選組の方が集めれるでしょ?」
「それだけじゃねぇだろ。一人であの河原ってヤツどうにかしようとしてるんじゃねぇの?」
「..................」
その一言にピクリと一瞬だけ反応するが、銀時にニコッと微笑み返して呟く。
「......もし、そうだとしたら?」
「バカか、おめぇは。大した得物もねぇのにどう戦うんだよ」
「得物って......いくら幕府の役人でも強行突破みたいな真似はしないでしょ」
「......ったく。分かってねぇな」
銀時が溜息交じりで呟く様子に名前が再び眉を潜めて顔を覗かせるーーー。
「幕府の輩はてめぇの身のためなら汚ねぇことする奴が多いって言ってんだ。まぁ、今の将軍サマは少なからず信用できる奴だけどな」
「心配してくれるのは有難いけど......幕府が汚い手を使おうが、私は引く気は更々ない。得物が無ければ自分で体得すればいい」
「お前なァ......この短時間にどうやって体得するつもりだァ?」
「誰も真選組みたいに剣術を使おうとは思ってない。剣よりもっと扱いやすい物がある」
「扱いやすいモン.......?」
「名前?」
それを見た銀時が声をかけて覗き込むと、名前が咄嗟に後ろに身を隠して眉を潜め小声で呟くーーー。
「待って.....あの人、吉原にいたお客なんだけど......!」
「は?」
そう言って銀時が同じく眉を潜めて見つめれば、近藤が五人に気づきその隊士を退室させた。
「ーーー話の続きはあとからだ。行っていい」
「はい。では失礼します」
河原という男は土方と沖田に気づくと軽く一礼をして名前に気づく事無く部屋を出て行く。そのすぐ後にようやく名前が銀時から離れて大きく溜息を漏らせば、不意に土方が静かに煙草の煙を吐いて呟く。
「.......河原謙二郎。十番隊の隊士で主に御上と真選組の遣いをしてる。剣の腕前も度胸もある男だ。ただ、自分より強ぇモンにきわめて執着する傾向があるのも確か......」
「もしかして土方さんたち......吉原に来ていた隊士のことを知っていたんですか?」
「当たり前だ。真選組を舐められちゃ困る」
さすがこの時代の警察.....
やっぱり情報収集は当たり前、か......
新八の問いかけに土方が表情を変えずに背中で語れば、近藤さんが組んでいた腕を解いて深い溜息をもらせば、全員がそちらに目を向けた。
「.......厄介な事になったな」
「近藤さん。河原と何話してたんですかィ?」
「まさか.....御上から何か言われたのか?」
土方がより一層、眉に皺を寄せて呟けば近藤が同じ表情を浮かべるーーー。
「当初は名字さんを保護する名目として真選組に留まらせるつもりだったが、御上が見廻組に引き渡せと言ってるらしくてな」
「なんで一橋派のエリートが顔突っ込んでくる?」
「要はあれですよねィ?幸い、名前さんの素性は向こうにはバレてません。それを逆手にとってすべての罪を名前さんに擦り付けるって魂胆ですかィ?」
「擦り付けるってーーー.....!」
「それが本当なら名前さんがここにいるのは危険なんじゃっ.....」
名前が言葉を詰まらせてぐっと拳に力を入れれば、銀時が隣でチッと舌打ちをして頭を掻く。
「御上の方がてめぇらより一歩上手だったっことか.....だからてめぇらのとこには行かねぇっつったんだよ」
「何も策がねぇ訳じゃねーよ」
「あぁ。そこで名字さんに折り入って話がある」
土方が煙草の火を消し、近藤が名前たちに向かいに座るように即す。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーえ、.....わ、私を真選組にですか.....?」
「見廻組が嗅ぎつけるのも時間の問題......そこで名字さんを真選組に引き入れればこちらも名字さんもある程度は自由に動ける」
目が点になっている名前を横目に土方が再び煙草を咥えて火をつける。
「そもそも、真選組は女人禁制だ。俺は反対したんだがな」
「.....他の隊士の方は納得しているんですか?」
「してない隊士がいるのも確かでさァ。ただどちらが動きやすいかは、いくら名前さんでもわかりますよね?」
「...............」
『......組織なんてモノは所詮、手柄の奪い合いだのミスの擦り付け合いだ。その中でどれだけその目で見極めるかが重要だ、名前......』
「........見極めが重要........」
「名前さん......?」
考え込む名前に新八が心配そうに顔を覗き込み、それを横目にグッと顔を上げて近藤を見据えたーーー。
「わかりました。協力します」
その一言に土方と沖田が少し横目で見据え、他の三人が名前の真面目な表情を勢いよく覗き込む。
「はぁ!?お前正気か!?むさっ苦しいオッサンのいる場所だぞ!?」
「そうアル!!むさっ苦しいだけじゃなく、ニコチンまみれでストーカーゴリラがいる税金泥棒の巣窟アルよ!?」
「おい、チャイナ!黙って聞いてりゃ、言いたい放題言ってんじゃねーぞ!!」
「......正気です。ただし一つだけ条件があります」
その横で取っ組み合いをしていた土方と神楽も名前の一言に反応して動きを止め、近藤が再び腕を組んで耳を傾ける。
「条件とは?」
「先ほども言った通り、私はあなたたちを信用した訳ではありません。いくら警察と言っても幕府内の組織に過ぎない......真選組の組織に入る代わりに、私もあなたたちを利用させてもらいます」
「テメー.....俺たちが利用してるとでも言いてぇのか?」
先ほどと同じく、それ以上に眉を潜めて土方が名前を見据えればそれをもろともせずに口元を上げて微笑み返す。
「ーーー敵を
「........良かったな、近藤さん。アンタの夢が叶ったぞ」
「え?」
微笑から目を瞬きさせる名前にチッと舌打ちをして苦虫を噛み潰した表情で呟く土方を見て、近藤が盛大に笑い声を上げて言葉を続けた。
「ガハハハ!!こりゃ、トシを納得させるなんて大した奴じゃねぇか」
「あの土方さんでも珍しく食い下がる事があるんですねィ.....いいものを見やした」
「総悟っ.......テメー.......」
「わかった。名字さんの条件を呑もう。それで異議はねぇな?」
「.......ありがとうございます」
座りながら頭を下げれば、隣で胡坐を掻く銀時が渋い表情で頭を掻きながら立ち上がり、新八と神楽が不思議そうに見上げた。
「銀さん?」
「......ったく。相変わらず言うこと聞かねぇ強情な女だな。行くぞ、てめぇら」
「待ってヨ!本当にいいアルか?」
「仕方ねぇだろーが。コイツにも何か考えがあんだろ」
名前が銀時を軽く睨むように見上げて目を合わせ、それを見た新八がボソッと呟く。
「.......銀さん、睨まれてますよ」
「言うこと聞かなくて強情な女で悪かったわね」
「最高の褒め言葉だろーが」
「どこが!?.....っていうか、帰る前に話があるの」
「は?」
土方たちと神楽たちを部屋から出させて向かい合わせに座り、銀時が胡坐を掻いてダルそうに腰を下ろした。
「で?何なの?銀さんとの別れが恋しくなったか~?」
「誰が?」
名前が眉を潜めて銀時を見据えれば、溜息混じりに両手を後ろに置いて体重をかける。
「まぁ、いいけどさ。何しようとしてる訳?」
「情報を集めるなら、真選組の方が集めれるでしょ?」
「それだけじゃねぇだろ。一人であの河原ってヤツどうにかしようとしてるんじゃねぇの?」
「..................」
その一言にピクリと一瞬だけ反応するが、銀時にニコッと微笑み返して呟く。
「......もし、そうだとしたら?」
「バカか、おめぇは。大した得物もねぇのにどう戦うんだよ」
「得物って......いくら幕府の役人でも強行突破みたいな真似はしないでしょ」
「......ったく。分かってねぇな」
銀時が溜息交じりで呟く様子に名前が再び眉を潜めて顔を覗かせるーーー。
「幕府の輩はてめぇの身のためなら汚ねぇことする奴が多いって言ってんだ。まぁ、今の将軍サマは少なからず信用できる奴だけどな」
「心配してくれるのは有難いけど......幕府が汚い手を使おうが、私は引く気は更々ない。得物が無ければ自分で体得すればいい」
「お前なァ......この短時間にどうやって体得するつもりだァ?」
「誰も真選組みたいに剣術を使おうとは思ってない。剣よりもっと扱いやすい物がある」
「扱いやすいモン.......?」