想望の先
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「ごめん、みんな.....。三蔵と二人で話がしたいの」
顔を上げずに言う名前に三蔵以外の三人が顔を見合わせて、八戒が軽く頷く。
「わかりました。僕たちは部屋で待ってましょう」
「名前ちゃんが話したいって言ってんだ。行くぞ、悟空」
「うぅ~.....わかったー」
うな垂れた悟空を引き連れつつ、名前が力ない苦笑いを浮かべ三人を見送ると部屋には三蔵と二人きりとなり、数分間、沈黙が降りたーーー。
「ありがとう、三蔵.....薬飲ませてくれて.....」
背中を見せる三蔵に言葉をかけるのと同時に、三蔵が煙草を一本取り出して火をつけ紫煙を燻らせる。
「てめぇの身体は戻った。こっから決めるのはてめぇ次第だ」
「......私はっーーー.....」
名前が咄嗟に袖丈の裾をぎゅっと握り締めて後ろ姿を見上げるが、すぐに顔を横に逸らす。
「私は.....帰らない.....」
「それがてめぇにとって最善だと思ってんのか?」
「わからない....でも私は帰りたくない!三蔵と...みんなと一緒にいたい!」
「............」
何も言わず近くにあった灰皿に煙草を押し付けて火を消し、振り返ると名前の両腕を掴みベッドに組み敷くーーー。
ガシャン......
「いっ......!」
不意に名前の手からコップが滑り落ち、床に割れたコップと水が跡を残して、押し付けられた反動で名前が顔を歪ませて三蔵の鋭い若紫色の瞳と絡み合うーーー。
「てめぇの居る場所はここじゃねぇだろ」
「違うっ.....それを決めるのは三蔵じゃないっ....!」
「....違わねぇよ。俺たちと来ればいくら命があっても足りねぇ」
「.....!」
もしかして.....あの時のこと言ってるの....?
私が庇ったからーーー....
「仲間も......好きな人もっ、......守りたいって思うのは当たり前だよっ......」
「!」
名前の目尻から暖かいものが流れ落ち、その様子に三蔵が目を見開きすぐに眉間に眉を寄せ、涙の痕を拭う様に頬に手を添えるとゆっくりと唇が重なり、名前は静かに瞼を閉じた。
そして同じくゆっくりと離れて、三蔵が両腕を放して身体を起き上がらせると、名前は呆気に取られたような表情をした。
「これが最後だ」
「なん、でーーー.....」
「てめぇが帰らねぇって言うんなら、無理にでも帰らせるまでだ」
「待って......!」
引止めにも目もくれず、黙って出て行く三蔵を見て名前がベッドの上に突っ伏して声を押し殺し、気がつけばとめどなく涙が流れシーツを濡らしていたーーー。
ーーーーーーーーーーーーーーー
『.....ーーーた』
『ーーー守れなかった.....』
「.....クソっ!胸糞悪ぃな.....」
閉じたドアにもたれ掛かり、腕を目を覆うように乗せる。
「.....三蔵」
「!」
不意に目の前から八戒の名前を呼ぶ声が聞こえ、咄嗟に腕を下ろして気力のない眼差しで見据えた。
「名前さんと何を話したんです.....?」
「......帰れと言ったまでだ」
その瞬間、八戒が眉を潜め言葉を続けるーーー。
「それは、....三蔵が本当に思っている事なんですか?」
「何が言いたい?」
「本心ではないと言ってるんです。名前さんがどう決断したのかはわかりませんが、.....少なくとも三蔵と同じ、悟空も悟浄も僕も名前さんには一緒にいてほしいと思っていますよ」
「勝手に決め付けてんじゃねぇよ。誰がアイツとっーーー....」
「いい加減にしてください!」
八戒がグッと拳を握り締めてより一層、三蔵に向けた眼差しをきつくすれば三蔵がドアから背中を放してその場に留まる。
「....互いに思い合っているなら尚更です。二度と会えなくなるんですよ?名前さんに....。あなたや名前さんには僕と同じ思いにはさせたくないんですよ」
「アイツがここに留まれば、向こうのアイツは死ぬ。そこまでしてアイツと一緒にいる筋合いなんてねぇ」
「それで名前さんを守った気でいるつもりですか?」
「.....勝手に言ってろ」
そう言って三蔵が八戒の横をすり抜けてその場を後にすると、八戒が感情を押さえつけるように拳を一瞬だけ握り締め緩めて、名前のいる部屋のドアをノックしたーーー。
コンコン....
「.................」
「名前、さん....?入りますよ」
「.................」
ドアの向こうからは何も聞こえず、少し躊躇しながらも部屋に踏み入れると頭からシーツを被ってベッドに横たわる名前の姿が目に入り、近くの椅子に腰を下ろす。
「......三蔵に、帰れって言われたんですね」
「......わかってる.....三蔵が嫌いで帰れって言ってる訳じゃないって.....でも、....近くにいたいとか、仲間を守りたいとか....好きな人と一緒にいたいとか、.....伝えても三蔵が考えてる事がわからないんだっ.....」
「今に知った事ではないですけど、.....三蔵は素直じゃありませんからね」
震える名前の声に八戒が静かに答え、軽く溜息を漏らしそのまま言葉を続ける。
「前に....名前さんに僕の大切な人がいた、って話をしましたよね?」
名前の身体がピクリと震えたかと思えばシーツを少しだけずらし、顔を覗かせて赤く充血した瞳で見つめ返したーーー。
「ーーー花喃 、....さん?」
「ええ、....そうです。花喃と僕はずっと一緒にいようと約束していたんです。でもそれは叶いませんでした.....百眼魔王が花喃を陵辱 し、僕が助ける前に彼女は自害しました.....」
「.....!」
八戒の過去を告げる彼に名前は思わず一瞬息を呑み言葉を失い目を逸らすが、すぐにまた視線を戻すと八戒が眉を下げ、切ない表情を浮かべていた。
「思い合っていて二度と会えないというのは.....状況は違いますが、あなたたちお二人には僕と同じくしてほしくないんです」
「それは....私だって同じだよ....八戒の気持ちも嬉しい。でも、片方の気持ちが違えばそれに従うしかないよ」
シーツをきつく握り締める拳が微かに震え、名前の頬に再び熱いものが流れ落ち、何かを決意したように少し力強く呟く。
「ーーー私は帰らない....でもみんなとは別々になって、離れた方がいいと思ってる」
「!......それは、...本当にそう思ってるんですか....?」
「もう決めたことだから....菩薩様にもそう伝えるし、この事は誰にも言わないでほしいの。ごめんね、八戒.....」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
部屋は静まり返り先ほどの八戒の言葉を思い出すーーー。
『......名前さんが決めたのなら、僕は黙っていることもできます。でもあの三人ならあなたを探すでしょう....僕も同じですよ』
「同じって.......そんなはずないっーーー.....」
「ーーーアイツも存外、素直じゃねぇな」
「!」
聞き覚えのある声にドアに目を向けると、腕を組み背中を預ける菩薩様の姿があり、気がつけばもう外には大きな満月が部屋を照らしていた。
「アイツらには話さねぇのか?」
「多分、....三蔵が話してると思うから....」
「そうか。アイツらと別々って事だな?」
「はい.....」
「名字名前、前にアンタは俺に聞いてきたよな?」
『もしもの話ですけど......もし、この下界で私に大事に思いたい人が出来たら、...それは許されますか...?』
「まさか、あの玄奘三蔵がここまで変わるなんて思ってもみなかったぜ。まぁ、それもアンタのお陰か.....」
「.....どういう、ことですか?」
少し鼻で笑いながら言う菩薩様の言葉が名前には理解出来ずに首を傾げる仕草をすると、菩薩様が名前に近づきそっと指の腹で下顎を軽く持ち上げた。
「いや。なんでもねーよ。天界に行きてーんだろ?連れて行ってやるよ」
「.....なんでもお見通しなんですね」
「ハッ。今更だな。ただし、天界に行けば二度と下界に戻って来れない....天界人ならまだしも、普通の人間は行き来するだけでも命を落とすかもしれねぇ。それでもいいんだな?」
「はい。でも一つだけお願いがあるんですーーー.....」
これでいい.....
近くにいなくても、見守れるならーーー....
顔を上げずに言う名前に三蔵以外の三人が顔を見合わせて、八戒が軽く頷く。
「わかりました。僕たちは部屋で待ってましょう」
「名前ちゃんが話したいって言ってんだ。行くぞ、悟空」
「うぅ~.....わかったー」
うな垂れた悟空を引き連れつつ、名前が力ない苦笑いを浮かべ三人を見送ると部屋には三蔵と二人きりとなり、数分間、沈黙が降りたーーー。
「ありがとう、三蔵.....薬飲ませてくれて.....」
背中を見せる三蔵に言葉をかけるのと同時に、三蔵が煙草を一本取り出して火をつけ紫煙を燻らせる。
「てめぇの身体は戻った。こっから決めるのはてめぇ次第だ」
「......私はっーーー.....」
名前が咄嗟に袖丈の裾をぎゅっと握り締めて後ろ姿を見上げるが、すぐに顔を横に逸らす。
「私は.....帰らない.....」
「それがてめぇにとって最善だと思ってんのか?」
「わからない....でも私は帰りたくない!三蔵と...みんなと一緒にいたい!」
「............」
何も言わず近くにあった灰皿に煙草を押し付けて火を消し、振り返ると名前の両腕を掴みベッドに組み敷くーーー。
ガシャン......
「いっ......!」
不意に名前の手からコップが滑り落ち、床に割れたコップと水が跡を残して、押し付けられた反動で名前が顔を歪ませて三蔵の鋭い若紫色の瞳と絡み合うーーー。
「てめぇの居る場所はここじゃねぇだろ」
「違うっ.....それを決めるのは三蔵じゃないっ....!」
「....違わねぇよ。俺たちと来ればいくら命があっても足りねぇ」
「.....!」
もしかして.....あの時のこと言ってるの....?
私が庇ったからーーー....
「仲間も......好きな人もっ、......守りたいって思うのは当たり前だよっ......」
「!」
名前の目尻から暖かいものが流れ落ち、その様子に三蔵が目を見開きすぐに眉間に眉を寄せ、涙の痕を拭う様に頬に手を添えるとゆっくりと唇が重なり、名前は静かに瞼を閉じた。
そして同じくゆっくりと離れて、三蔵が両腕を放して身体を起き上がらせると、名前は呆気に取られたような表情をした。
「これが最後だ」
「なん、でーーー.....」
「てめぇが帰らねぇって言うんなら、無理にでも帰らせるまでだ」
「待って......!」
引止めにも目もくれず、黙って出て行く三蔵を見て名前がベッドの上に突っ伏して声を押し殺し、気がつけばとめどなく涙が流れシーツを濡らしていたーーー。
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『.....ーーーた』
『ーーー守れなかった.....』
「.....クソっ!胸糞悪ぃな.....」
閉じたドアにもたれ掛かり、腕を目を覆うように乗せる。
「.....三蔵」
「!」
不意に目の前から八戒の名前を呼ぶ声が聞こえ、咄嗟に腕を下ろして気力のない眼差しで見据えた。
「名前さんと何を話したんです.....?」
「......帰れと言ったまでだ」
その瞬間、八戒が眉を潜め言葉を続けるーーー。
「それは、....三蔵が本当に思っている事なんですか?」
「何が言いたい?」
「本心ではないと言ってるんです。名前さんがどう決断したのかはわかりませんが、.....少なくとも三蔵と同じ、悟空も悟浄も僕も名前さんには一緒にいてほしいと思っていますよ」
「勝手に決め付けてんじゃねぇよ。誰がアイツとっーーー....」
「いい加減にしてください!」
八戒がグッと拳を握り締めてより一層、三蔵に向けた眼差しをきつくすれば三蔵がドアから背中を放してその場に留まる。
「....互いに思い合っているなら尚更です。二度と会えなくなるんですよ?名前さんに....。あなたや名前さんには僕と同じ思いにはさせたくないんですよ」
「アイツがここに留まれば、向こうのアイツは死ぬ。そこまでしてアイツと一緒にいる筋合いなんてねぇ」
「それで名前さんを守った気でいるつもりですか?」
「.....勝手に言ってろ」
そう言って三蔵が八戒の横をすり抜けてその場を後にすると、八戒が感情を押さえつけるように拳を一瞬だけ握り締め緩めて、名前のいる部屋のドアをノックしたーーー。
コンコン....
「.................」
「名前、さん....?入りますよ」
「.................」
ドアの向こうからは何も聞こえず、少し躊躇しながらも部屋に踏み入れると頭からシーツを被ってベッドに横たわる名前の姿が目に入り、近くの椅子に腰を下ろす。
「......三蔵に、帰れって言われたんですね」
「......わかってる.....三蔵が嫌いで帰れって言ってる訳じゃないって.....でも、....近くにいたいとか、仲間を守りたいとか....好きな人と一緒にいたいとか、.....伝えても三蔵が考えてる事がわからないんだっ.....」
「今に知った事ではないですけど、.....三蔵は素直じゃありませんからね」
震える名前の声に八戒が静かに答え、軽く溜息を漏らしそのまま言葉を続ける。
「前に....名前さんに僕の大切な人がいた、って話をしましたよね?」
名前の身体がピクリと震えたかと思えばシーツを少しだけずらし、顔を覗かせて赤く充血した瞳で見つめ返したーーー。
「ーーー
「ええ、....そうです。花喃と僕はずっと一緒にいようと約束していたんです。でもそれは叶いませんでした.....百眼魔王が花喃を
「.....!」
八戒の過去を告げる彼に名前は思わず一瞬息を呑み言葉を失い目を逸らすが、すぐにまた視線を戻すと八戒が眉を下げ、切ない表情を浮かべていた。
「思い合っていて二度と会えないというのは.....状況は違いますが、あなたたちお二人には僕と同じくしてほしくないんです」
「それは....私だって同じだよ....八戒の気持ちも嬉しい。でも、片方の気持ちが違えばそれに従うしかないよ」
シーツをきつく握り締める拳が微かに震え、名前の頬に再び熱いものが流れ落ち、何かを決意したように少し力強く呟く。
「ーーー私は帰らない....でもみんなとは別々になって、離れた方がいいと思ってる」
「!......それは、...本当にそう思ってるんですか....?」
「もう決めたことだから....菩薩様にもそう伝えるし、この事は誰にも言わないでほしいの。ごめんね、八戒.....」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
部屋は静まり返り先ほどの八戒の言葉を思い出すーーー。
『......名前さんが決めたのなら、僕は黙っていることもできます。でもあの三人ならあなたを探すでしょう....僕も同じですよ』
「同じって.......そんなはずないっーーー.....」
「ーーーアイツも存外、素直じゃねぇな」
「!」
聞き覚えのある声にドアに目を向けると、腕を組み背中を預ける菩薩様の姿があり、気がつけばもう外には大きな満月が部屋を照らしていた。
「アイツらには話さねぇのか?」
「多分、....三蔵が話してると思うから....」
「そうか。アイツらと別々って事だな?」
「はい.....」
「名字名前、前にアンタは俺に聞いてきたよな?」
『もしもの話ですけど......もし、この下界で私に大事に思いたい人が出来たら、...それは許されますか...?』
「まさか、あの玄奘三蔵がここまで変わるなんて思ってもみなかったぜ。まぁ、それもアンタのお陰か.....」
「.....どういう、ことですか?」
少し鼻で笑いながら言う菩薩様の言葉が名前には理解出来ずに首を傾げる仕草をすると、菩薩様が名前に近づきそっと指の腹で下顎を軽く持ち上げた。
「いや。なんでもねーよ。天界に行きてーんだろ?連れて行ってやるよ」
「.....なんでもお見通しなんですね」
「ハッ。今更だな。ただし、天界に行けば二度と下界に戻って来れない....天界人ならまだしも、普通の人間は行き来するだけでも命を落とすかもしれねぇ。それでもいいんだな?」
「はい。でも一つだけお願いがあるんですーーー.....」
これでいい.....
近くにいなくても、見守れるならーーー....