「ん......」


いつの間に眠りに引き込まれて、名前が目を覚ますと隣に冷たい感触が肌をくすぐる。


「......三蔵......？」


隣にいたはずの三蔵がいない事に気づき、胸が一気にざわめく。
身体のだるさが少し残るものの、着替えを済ませて宿の１階へと足を運ぶといつもの４人の声が耳に入った。


「あー！！なんで俺の炒飯、勝手に食べるんだよっ！」
「目の前にあったんだから食うに決まってんだろ！バカ猿！」
「俺は猿じゃねー！ゴキブリ河童！」
「......てめぇら静かに食え！！」


スパーンとハリセンの音が響くと同時に、その様子を苦笑いで見ていた八戒が名前の姿に気づき声を掛けるーーー。


「あ、名前さん。おはようございます。体調は大丈夫ですか？」
「あ、うん......」


コクリと頷きながら悟空と悟浄の前に立ち頭を下げると、２人が言い合いを止めて名前を見つめた。


「心配かけてごめんなさいっ......昨夜、何があったのかも全部覚えてるの...迷惑かけて、それにっ......」
「なぁ、名前ちゃん」


不意に悟浄が顔を覗き込み名前が顔を上げる。


「は、はい......」
「別に迷惑だなんて思ってねーよ。迷惑っつーか本気で心配はしたけど、名前ちゃん可愛い顔見れるだけでいいぜ」
「俺も全然気にしてねーし！よくわかんねーけど、名前が元気ならいいじゃねーのか？」
「おい、エロ河童。本当に頭ぶち抜かれたいか？」


黙って見ていた三蔵がすかさず悟浄の後頭部に銃口を向け、悟空も悟浄も思わず苦笑いしながら後ずさった。


「さっさと食え。食ったら村を出る」
「...うん...」


いつも通りの朝、いつも通りのみんなの様子に戸惑いつつも心の何かがストンと落ちた気がしていた。



ーーーーーーーーーー



ジープに乗り込み村を離れると砂漠地帯へと進む。


「あちーなぁ...」
「暑くて腹減って死にそー...」
「ーーーワン！」



ボンッ！！



不意にコマが名前の膝の上に現れ、後部座席の３人が肩を震わす。


「コマっ...！！」
「今までどこ行ってたんだぁ？このワンコ」
「恐らく...宿主が元に戻ったので名前さんの元に戻って来たのでしょうね」
「ワン！」


八戒の言葉に一瞬だけ曇った表情を見せるも、膝の上のコマをそっと撫でた。


「...心配かけてごめんね、コマ...」
「クゥーン...」



またーーー...

いつ"妖怪"にならないともわからない...

私は何を信じればーーー...