地面に煙草を落として靴の裏で火を消すと、三蔵は名前の隣に座り言葉を続けた。


「......戻りてぇか？」


全てを察したようで、三蔵が少し躊躇いつつも聞く。
名前がようやく顔を上げて三蔵に目をむけ、その表情は酷く悲しい表情だった。


「......わから、ない......」
「だろうな。...んな辛気臭いツラしてりゃ誰でもわかる」
「......相変わらず、酷いよね...」


一粒の涙が溢れそうになる前に、三蔵が名前の後頭部に手を回して広い胸に引き寄せる。
微かに煙草の香りがして不思議と落ち着く...


「...やはりお前は厄介女だな...」
「だから酷いって......でもね、ひとつだけ分かってる事があるよ」
「なんだ」
「...三蔵と、ずっと一緒にいたいっ...みんなと一緒にっ...」
「......もう黙れ」


言葉とは裏腹に優しい手つきで髪を梳き、肩を震わせる名前を抱き寄せた。



ーーーーーーーーー



「そういう事だったんですか。通りで元気がなかったんですね...」


三蔵の腕の中で眠る名前を後部座席に座らせ、八戒が納得した表情を見せる。


「要は肉体は向こうにあって、魂は下界にあるって訳か」
「でもよー、そもそもなんで名前の魂だけこっちに来ちまったんだ？」
「恐らくあのクソババァが仕組んだか、別の誰がそうさせたか」
「でも名前さんをここに呼ぶ理由が見つかりませんよ？」


八戒の言葉に全員が考え込み眠る名前に目を向けたーーー。



"呼ばれた理由"、か...

チッ...考えてもまるで答えが出ねぇ...