社殿を通り本殿へと足を進めて、不意に悟浄が再び腕を出して制止する。


「悟浄...？」
「シッ！......何か聞こえないか？」
「えーーー」


悟浄の言う通り耳を傾けると、微かに女性の声と神主の話し声が聞こえるが、何を話しているのか聞き取れない。
名前が悟浄の裾を引っ張り、その場を離れようとした瞬間ーーー...


「ーーーおや...お客様が来たようですね...。どうぞ。お入りになっては？」


まるで知っていたかの様な言葉に2人は顔を見合わせ静かに中に入る。
すると神主の他に巫女姿の女性を見つけ、目を疑う。
なぜなら名前自身によく似た女性だったから......


「嘘、でしょっ......」
「...名前ちゃんが2人.....でも、人間じゃないな」
「......妖怪......」


巫女姿の女性が名前を見て不敵な笑みを浮かべる。


「本当に私に似た女性がいらっしゃったんですね」
「比丘尼(びくに)様はこの社殿を守ってらしたお方...。ある火事の事故で亡くなり、我々の力で一時的に蘇らせたのです」



"火事の事故"......？

私と同じだーーー...



「...仏様からの思し召しがあったんです。近くその生贄が現れる...比丘尼様を蘇生させるためには、容姿も全て同じあなたが生贄になる事、そして玄奘三蔵法師様の経文が必要だと...」
「......生贄って......」
「なるほどね...その仏様とやらは妖怪にまで悟り開いちゃうようになったワケか」
「私は...生贄にもならないし、経文も絶対に渡さない......！」
「それは残念ですね......」


刹那、比丘尼様が背後からグイッと天籟を引き寄せて鋭い爪を首筋に立てる。
その瞬間、悟浄が錫月杖を出して威嚇した。


「天籟くん...！」
「お、...お姉ちゃんっ...」
「さぁ、どうしますか？私の生贄になるか、この子を犠牲にするか...」
「それはっ......」
「それはてめぇが死ぬ事だ」
「「！？」」


2人が振り向くと銃口を比丘尼様に向ける三蔵とその両脇には八戒と悟空の姿が...


「三蔵......」


そして悟空が2人の間に割り込み拗ねた表情を見せた。


「2人だけで面白そうな事やっててズリーよ！！」
「この状況のどこがおもしれぇんだよ！バカ猿！」
「黙れ、バカコンビ。特にエロ河童、てめぇはあとで一発ぶち込まれろ。拒否権はない」