「ご馳走さま」


食事後、名前がテーブルに肘をつきそっぽを向いて眉を寄せる。
その様子に新聞を読む三蔵以外の3人が顔を見合わせて眉を下げた。


「みんなの分の食器、...片付けてくるね」
「ありがとうございます...お願いしますね」



八戒に少し笑顔を見せつつ、食器を片付けて名前がキッチンに消えると今度は八戒も単刀直入に聞く。


「三蔵、名前さんと何かあったんですか？」
「さあな」


横になって本を読む三蔵に八戒が溜息を漏らす。
すると悟空がしゅんと切ない表情を浮かべた。


「......やっぱり今朝のこと、気にしてんのかな」
「無理するなって言う方が無理だろーな」
「.........」
「泣いたのを見るのは2回目ですね....。名前さんがどんな事があってもあまり涙を見せないのは、僕たちに気を使っているのが大きいと思いますよーーー...」


水道の水が流れる音と共に、名前は壁に背を向け耳をすませていた。



涙を見せることは、自分の弱さを見せることと一緒ーーー...

だから妖怪に会っても、三蔵たちが戦っても、自分が戦っても、絶対涙は見せないと密かに決めたーーー...



「.......心配されてるようじゃ、私はまだまだだな......」



食器を洗ったあと、すぐに寝室へ行きベッドの上でコマを撫でるーーー。


「天籟くん...大丈夫かな」
「クゥーン...」



コンコン...



不意にノックが響いてドアに目を向ける。


「はい...」


ドアが開き三蔵が煙草を口に咥えながら入って来ると、あからさまに名前が不機嫌な表情を浮かべた。


「この部屋は禁煙デス」
「うるせぇ。どこで吸おうが勝手だろ」
「ここは私の部屋なの！」
「チッ...ごちゃごちゃうるせぇ...」


備え付けの灰皿を差し出せば、三蔵が眉を潜めて煙草を押し付けて名前の座るベッドにまた背中を向けて座るーーー。


「理由......話に来てくれたの？」
「違う。勝手に足が向いた」
「...何それ」


クスリと微かに笑う名前に三蔵が振り返り、手を伸ばすと胸へと抱き寄せた。