「その方は......」
「あ、...私、旅をしててこの村に立ち寄ったんです」



この神主さんは、...

普通の人間...？



「あぁ、旅のお方でしたか。お一人で？」
「いいえ。他に4人......」
「おい、厄介女！」


遠くで聞き覚えのある声が聞こえ、振り返ると煙草の紫煙をくゆらし眉を寄せる三蔵の姿が。


「三蔵......ごめん。ちょっと気になって見に来ちゃった」
「見に来ちゃったじゃねぇだろ。てめぇ、ひとりでウロつくんじゃねぇ」
「......もしや、お連れ様というのは、玄奘三蔵法師様ですか！？」
「だったら何だ」
「まさかここでお会い出来るとは...ぜひ、この神社にお越しになられては...」
「行かん」


より一層、眉間の皺が濃くなり名前は小さく溜息を漏らす。


「そんなに警戒しなくてもいいでしょ？」
「てめぇは警戒心なさすぎだ。行くぞ」
「ちょっ....三蔵！もうっ....。ごめんね、天籟くん。もう行くね」
「あ、...お姉ちゃんっ...」


手を振ると名残惜しそうに天籟が見つめるが、急いで三蔵の元に走り隣を歩く。


「もうあそこには近づくな」
「え...どうして？」
「てめぇは言われた通りにすりゃいい」
「理由を言ってくれないと納得できない！それに...あの天籟くんって子、神使の妖怪に妹を殺されたって言った...」
「だから何だ」
「普通は神使ってコマみたいな動物なのに、ここでは妖怪が神使ってちょっと引っかかるなって...」
「関係ねぇよ。無駄な足止めは御免だ」


鋭い眼差しで見る三蔵の言葉に、思わずカチンと頭にきて睨み返すーーー。


「もういい！三蔵には頼まないから」


そう言って膨れっ面で歩いて行く名前に三蔵が煙草の煙を吐いて舌打ちをした。


「チッ...あのバカ女っ...」