「遅いなー...」
「名前さん、そろそろ眠らなと...明日の朝には出発ですから」


窓の外を眺めながらポツリと呟けば、八戒が心配そうに声を掛ける。


「うん。...でも、もうちょっとだけ起きてる」
「そうですか...眠くなったら無理せず寝てください」
「ありがとう」
「女の子待たせるなんて三蔵らしいなぁ。俺だったら速攻で帰るけどねー」


ベッドに横になりながら悟浄が呆れたように呟き、名前は再び窓の外に目を向けるーーー。


「...やっぱり私、捜してくる！」


何か胸騒ぎの様なものを感じ、椅子から立ち上がり出て行こうとすると、不意に腕を掴まれその先を見る。


「！...悟空...」
「俺も捜しに行く！名前ひとりじゃ危ねーし、三蔵の事心配だから！」
「...仕方ないですね。僕も行きましょう」
「ホント、世話の妬ける大将だよなー」
「...ありがとう。みんな...」


宿から出て村の中を歩くーーー。


「あ、昼間のお嬢さん！」
「こんばんは。先程はどうも」


露店のおじいさんに声を掛けられ、八戒たちも露店へと足を向けた。


「アクセサリーの、露店ですか...」
「昼間、八戒たちに会う前にここに立ち寄ったの。あの...私といた金髪の男性、見ませんでした？目付きの悪い...」
「一緒にいた兄ちゃんか？それならさっき美人な女と一緒に歩いて行ったよ。確かあの女..."明伶(メイレイ)"って言ったかな...。すぐそこの屋敷に住んでんだよ」
「......美人な女......」


微かに名前の黒いオーラを感じた3人は、おじいさんにお礼を言うと悟浄が名前の腕を引っ張り屋敷へと向かう。


「なぁー。三蔵が美人な女について行くなんて今までなかったよな？なんか悟浄みてー！」
「俺と一緒にすんじゃねー。バカ猿！」
「理由もなく三蔵がついて行く事はありませんから、何かあったんじゃないんですか？」
「そ、だよね...」



何も心配する事はないーーー...

......なのに、すごく胸騒ぎがする。