陽が暮れて宿のレストランでいつものように食事をしていると、不意に三蔵が立ち上がり名前が首を傾げた。


「もうご飯いいの？」
「あぁ。バカ猿、てめぇで食え」
「マジ！？いいのか！？いっただきまーすっ！」


驚いた表情を浮かべる横で悟空がすごい勢いで三蔵の食事を頬張るーーー。


「明日は雪、ですかね...」
「いや、槍かもしれねーぞ？」
「黙れ。出て来る」


そう言って三蔵が出て行くのを見送ると、名前が眉を下げて視線をみんなへと戻す。


「...どっか体調でも悪いのかな」
「どうでしょう...。顔色も普通だったかと...」
「あれだろー。俺たちと会ったから機嫌悪いんだろ？」
「...どうして悟浄たちと会ったからって、機嫌悪くなるの？」
「それは三蔵がっ......むぐっ......！」


不思議そうに問いかける名前の質問に悟空が食べながら答えようとした時、八戒と悟浄が慌てて口を抑え込み2人とも苦笑いを浮かべた。


「え？...どういうこと？」
「い、いえ。何でもありませんよ」
「そうそう！ほら。飯食わねーと冷めちまうぞ～」
「.........」



その頃、三蔵は名前と来た露店の前にいたーーー。
あの時、八戒に欲しい物を聞かれ名前の目線がこの店に向けられていた事を思い出す。


「あ、先程のお客さん...どうされました？」


露店のおじいさんの声とともにブレスレットを探すが見つからず...


「おい。あのブレスレットはどこだ？」
「あー、...あれね。他のお客さんが買って行ったんだよ。綺麗な女の人だった」
「...女？」
「おっ！...あの女の人だよ」


おじいさんの視線の先には、自分と同じ金の髪に琥珀のピアスをつけた女性が目に入った。


「チッ...めんどくせぇな」


そう言いながらも女の後をついて行くーーー...