大きな外壁に囲まれた、大きな村ーーー。
そしていつもと比べ物にならないくらいの、ホテルの様な洋館風の宿に三蔵一行はいた。


「うわー！フカフカのベッドだぜ！やったー！」


ボフッとベッドにダイブをしてはしゃぐ悟空を横目に、八戒ぎニコッと微笑む。


「そうですね。この村は随分、栄えている様ですし妖怪の脅威も感じさせませんね」
「これだけ広い村なら、かわい子ちゃんの、1人や2人いそうだなぁ」
「エロ河童。遊びに来てんじゃねぇんだよ」


みんなの会話を聞いて名前がクスリと笑い、荷物の整理を終える。


「終わったー！みんなのお茶、淹れて来るね」
「すみません。お願いします」
「いいえー」


名前が部屋にある備え付けのキッチンに消えると、悟空がムクリと起き上がり呟いた。


「なぁ...名前、なんか吹っ切れた顔してたけどなんかあったのか？」
「なんかって、そりゃ三蔵サマが名前ちゃんを慰めたんだろ？帰って来た時、名前ちゃんの顔、真っ赤だったしー」
「三蔵もたまにはいいところがあるんですね」



『みんな、ごめんね...。私、過去の自分が嫌で強くなりたいって思ってたの。みんなを守れるように...。でももう背伸びはしないっ！ーーー...』



3人がチラリと新聞を読む三蔵を見つめると、新聞を読んだままチッと舌打ちをして眉を潜めた。


「お待たせ。お茶どーぞ」


ちょうど話が途切れたところで名前がお盆に湯呑みを乗せてやって来る。


「ありがとうございます。僕が置きますよ」
「ありがとう、八戒」


お茶を置いて名前も一息つき腰を下ろすと、悟浄と八戒がにこやかな視線を送り名前が首を傾げるーーー。


「え、何？どうしたの？」
「いいえ、何でもありません。悟浄、悟空。買い出しに行きますよ」
「あ、私もっ...」
「いーの。名前ちゃんは休んでな」
「あ...う、うん」


悟浄にポンと肩を叩かれ、立とうとしていた姿勢を椅子に座り元に戻すと3人が部屋を出て行き、三蔵と名前が2人きりの状態に。
お茶を啜りながら、眼鏡をかけて新聞を読む三蔵を盗み見たーーー。


「ジロジロ見るな。気が散る」
「そういえば、三蔵って眼鏡かけるんだね。新聞読む時だけ」
「それがなんだ」
「別に...」



「.........」
「.........」



もっと話せたと思ってたんだけどなー...



テーブルに肘をつき、そんな事を考えていると不意にコマが三蔵の足元に擦り寄り喉を鳴らす。


「クゥーン...」
「あ...」
「......チッ」


眉を潜めて見下すように見つめる三蔵に名前も同じように眉を潜めて小さく溜息をついた。


「...そんなに怒らなくてもいいのに。コマだって三蔵に心開いたんだよ」
「余計なお世話だ」
「またそんな事言って...」


名前がコマの元に近づきしゃがみ込み、困った表情でコマの頭を撫でた瞬間ーーー。



ドクンッーーー...



なんだっーーー...

この感情は......