ゴゴゴゴッ...



まただ。

またあの音だーーー。

これって...何だっけ？

あ、そっか。"デジャヴ"ってヤツだーーー。



「...っ...！！」


覚醒された目を見開き、立ち上がろうとすると身体中に痛みが走り手先しか動かせない事に気付く。


「ワンっ！」
「ぁ、...え...」


鳴き声と共に頬に生温さを感じ、目だけを動かす。
そこには白く尻尾が火の玉のような一匹の犬が...


「ワンちゃん...だ」
「ワン！」


そっと頭を撫でてやると頬をすり寄せ、気持ちよさそうな表情を浮かべる。
周りの異変に気付いたのはその時だった。



ーーー鉄の匂い...。

焦げ臭い匂い...。



人間でも分かる、酷い鉄の香り。
何かを焼かれている焦げ臭い香り。


「ぅっ...くっ...」


ゆっくりと、時間をかけて立ち上がればようやく周りの景色を見渡せる事が出来た。
燃え盛る建物に倒れた人達ーーー。
そしてそれと比例して耳の尖った身体...


「...な、に...これ...」



ーーー"妖怪"ーーー...



ザッと背後から忍び寄る気配に、背筋に嫌な汗が流れ出す、...


「女、だ。まだ生き残りがいやがった！」
「変な犬連れてやがるぞ。犬はどうでもいいが、女はオモチャにできそうだなー」


気づけば周りには数人の妖怪。
そしてみんな、それぞれニヤリと笑いジリジリと距離を詰めた。



どうする？

最悪な状況だ。



チラリとワンちゃんを見てみれば、服の裾を引っ張り見つめてくる。


「ワンっ！ワンっ！」
「......力、貸してくれるの？」
「ワン！」


そう思った瞬間には、ワンちゃんから神々しいほどの金色の光が現れ周りを囲うように包み込む。


「ワンちゃんから光......まさか結界っ...！？」
「なっ、...なんだ、この光はっ...！」
「こ、この女...何モンだ！？」



暖かいーーー。

向こうで声が聞こえる。

ーーー叫び声が......