「遅いですね、名前さん」
「腹でも壊したのかなぁ？」
「てめぇと一緒にすんな、猿。てめぇは食べすぎなんだよ！」
「なんだよ、エロ河童！誰だって腹は下すだろーが！」
「てめぇの食欲は尋常じゃねーんだよっ！」
「朝からてめぇらうるせぇぞ！！」


スパーンっとハリセンの音が響き、三蔵はドサリと腰を下ろし煙草に火をつける。
煙草の本数と朝から落ち着かない三蔵の様子に八戒が問いかけた。


「そんなに心配なら、三蔵が見てきては？」
「誰が見に行くか」
「はぁ。素直じゃありませんね」
「黙れ」


そう言って立ち上がり、宿の二階へと足をすすめ、3人は顔を見合わせるーーー...


「どこに行くんですか？」
「寝る」


三蔵が二階へと消えると、悟浄が煙草に火をつけてふと笑う。


「ウチの大将は素直じゃないねぇ」
「俺が見に行こうかー？」
「大丈夫ですよ、悟空。三蔵が見に行きましたから」
「なーんだっ」



朝からどいつもこいつもうるせぇ...



青筋を浮かべながら名前の部屋の前まで来ると、やけに物静かな事に気づく。
ドアノブに手をかけ開けると、そこには名前の姿はなかった。


「あれ？なぁ三蔵ー。名前は？」
「消えた」
「消えたって...昨日まではちゃんといましたよね？」
「買い物、......じゃなさそうだな」