御使いの聖歌隊
それから二人はお城で何不自由ない生活を送りながら、王に言われるまま歌を歌った。
一緒に連れてこられた人たちはどうしたのかな?と思うこともあったが、別にお互いがそこにいるならそれでいいと特に気にすることもなく。
二人はこの国に降り立った天使の御使いとして日々を過ごす。
聖の言ったようなことも起こることもなく。
そんなある日、二人は与えられた自由時間でお城の中の探索をしていた。
だだっ広いこの城を回るのは小さな二人にとっては冒険のような感覚と似ていて。
扉という扉をノックをしてから開けてここはなぁに、ここは?と見て回る。
みんな天使の御使いが来てくれたと喜び、人によってはこれを持って行ってとお菓子をくれた。
両手にいっぱいのお菓子を持っているとこれを使いなとかごを渡されて二人はありがとー!とお礼を言うと再び散策へと繰り出す。
「いっぱいもらったー!」
「だねー!」
「ね! ちいちゃん! あの森また行こうよ! おにーさんにもまた会えるかも!」
「いくいく!」
おにーさーん!と二人はお菓子をたくさん持ったかごを手に森の中に入ると聖と出会ったあの場所まで走っていく。
けれどそこに聖はいなくて。
いないねーと顔を見合わせると光が差し込んでいる中心に座り込んでもらったお菓子を一つずつ食べていく。
「せっかくだからおにーさんとも食べたかったなぁ」
「ねー」
「まほーつかいのおにーさん、いつ会えるかな?」
「んー、ちいたちがまほーつかいになったら、とか?」
「ちいちゃん、おっかしー! すいたち人間だからまほーつかいになんてなれないよー?」
「なれるかもしれないじゃん! すいちゃんのばか!」
「あー! ちいちゃんがすいのことばかって言った! ばかって言ったほうがばかなんだよー! ちいちゃんのばーかー!」
「すいちゃんだって言った!! 今ちいのことばかって言った!」
「ちいちゃんが先だもん!」
「すいちゃんがちいのことばかっていったー!」
うわーー!!と声を上げ泣き始めた千夏に連れられて水華も声を上げて泣き始める。
静かな森に二人の泣き声だけが響き渡り、それに驚いた鳥や獣が逃げていく。
それでも二人は泣きやまない。
お互いをばかばかと罵りあって、片方が髪を引っ張ればもう片方も相手の髪を引っ張る。
手加減なんて知らない二人はその痛みで更に泣きじゃくる。
「ああぁああああぁあああっ! ちいちゃんのばかぁ!!!!」
「ぅわぁぁあああああっ! すいちゃんだってばかぁ!!」
「どうして二人とも泣いているんですか?」
「おにーさん!」
「まほーつかいのおにーさん!」
不意に聞こえた声に振り返るとそこには聖が立っていた。
二人は彼に駆け寄ると会いたかったぁ!と揃えて口にして。
聖は少し驚きながらもそうですかと小さく笑みを零し、もう泣かないでと二人の頭をぽんぽんとなでた。
「ほらせっかく綺麗な髪なのにぐしゃぐしゃじゃないですか。水華、そこに座りなさい。直してあげますから」
「わーい!」
「おにーさん! ちいも! ちいも!」
「はいはい、順番にやりますから」
崩れたツーサイドアップを一度解き、手の中に出現させたブラシで丁寧に水華の髪を梳いていく。
水華の青い髪は光に照らされきらきらと光ってとてもきれいで。
大人しく座って髪を梳かされる水華に千夏はいいないいな!とそわそわしていて。
聖は水華の髪を元のとおりに綺麗なツーサイドアップにすると次は千夏ですねと声をかけ、自分の前に座らせた。
「すいちゃん、ごめんね?」
「ううん、すいこそ、ごめんね」
「ちゃんと仲直りできて偉いですね。水華、千夏」
「うん! すいたち仲良しだから!」
「ちいたちずーっと一緒なのー!」
「そうですか。……はい、できましたよ」
「わーい! ありがとー! おにーさん!」
見て見てー!と千夏は立ち上がるとさらさらの髪を見せるようにその場でくるくる回りだして。
それにつられて水華も一緒になってくるくる回って、きれいだね!と笑いあった。
一緒に連れてこられた人たちはどうしたのかな?と思うこともあったが、別にお互いがそこにいるならそれでいいと特に気にすることもなく。
二人はこの国に降り立った天使の御使いとして日々を過ごす。
聖の言ったようなことも起こることもなく。
そんなある日、二人は与えられた自由時間でお城の中の探索をしていた。
だだっ広いこの城を回るのは小さな二人にとっては冒険のような感覚と似ていて。
扉という扉をノックをしてから開けてここはなぁに、ここは?と見て回る。
みんな天使の御使いが来てくれたと喜び、人によってはこれを持って行ってとお菓子をくれた。
両手にいっぱいのお菓子を持っているとこれを使いなとかごを渡されて二人はありがとー!とお礼を言うと再び散策へと繰り出す。
「いっぱいもらったー!」
「だねー!」
「ね! ちいちゃん! あの森また行こうよ! おにーさんにもまた会えるかも!」
「いくいく!」
おにーさーん!と二人はお菓子をたくさん持ったかごを手に森の中に入ると聖と出会ったあの場所まで走っていく。
けれどそこに聖はいなくて。
いないねーと顔を見合わせると光が差し込んでいる中心に座り込んでもらったお菓子を一つずつ食べていく。
「せっかくだからおにーさんとも食べたかったなぁ」
「ねー」
「まほーつかいのおにーさん、いつ会えるかな?」
「んー、ちいたちがまほーつかいになったら、とか?」
「ちいちゃん、おっかしー! すいたち人間だからまほーつかいになんてなれないよー?」
「なれるかもしれないじゃん! すいちゃんのばか!」
「あー! ちいちゃんがすいのことばかって言った! ばかって言ったほうがばかなんだよー! ちいちゃんのばーかー!」
「すいちゃんだって言った!! 今ちいのことばかって言った!」
「ちいちゃんが先だもん!」
「すいちゃんがちいのことばかっていったー!」
うわーー!!と声を上げ泣き始めた千夏に連れられて水華も声を上げて泣き始める。
静かな森に二人の泣き声だけが響き渡り、それに驚いた鳥や獣が逃げていく。
それでも二人は泣きやまない。
お互いをばかばかと罵りあって、片方が髪を引っ張ればもう片方も相手の髪を引っ張る。
手加減なんて知らない二人はその痛みで更に泣きじゃくる。
「ああぁああああぁあああっ! ちいちゃんのばかぁ!!!!」
「ぅわぁぁあああああっ! すいちゃんだってばかぁ!!」
「どうして二人とも泣いているんですか?」
「おにーさん!」
「まほーつかいのおにーさん!」
不意に聞こえた声に振り返るとそこには聖が立っていた。
二人は彼に駆け寄ると会いたかったぁ!と揃えて口にして。
聖は少し驚きながらもそうですかと小さく笑みを零し、もう泣かないでと二人の頭をぽんぽんとなでた。
「ほらせっかく綺麗な髪なのにぐしゃぐしゃじゃないですか。水華、そこに座りなさい。直してあげますから」
「わーい!」
「おにーさん! ちいも! ちいも!」
「はいはい、順番にやりますから」
崩れたツーサイドアップを一度解き、手の中に出現させたブラシで丁寧に水華の髪を梳いていく。
水華の青い髪は光に照らされきらきらと光ってとてもきれいで。
大人しく座って髪を梳かされる水華に千夏はいいないいな!とそわそわしていて。
聖は水華の髪を元のとおりに綺麗なツーサイドアップにすると次は千夏ですねと声をかけ、自分の前に座らせた。
「すいちゃん、ごめんね?」
「ううん、すいこそ、ごめんね」
「ちゃんと仲直りできて偉いですね。水華、千夏」
「うん! すいたち仲良しだから!」
「ちいたちずーっと一緒なのー!」
「そうですか。……はい、できましたよ」
「わーい! ありがとー! おにーさん!」
見て見てー!と千夏は立ち上がるとさらさらの髪を見せるようにその場でくるくる回りだして。
それにつられて水華も一緒になってくるくる回って、きれいだね!と笑いあった。