御使いの聖歌隊

次の日。
二人は再び王の前に呼び出されていた。
これから二人はこのお城の聖歌隊として過ごしてもらう。
国の行事や、お城内での行事。
そういう神聖な行事や大きなお祭りの時に歌ってほしいと、そう言われ二人はいいよー!と二つ返事で答えた。

「すいたち、お歌上手だもんね!」
「ちいたち、お歌大好きだもん!」
「そうかそうか。じゃあ、天使の御使いたち、さっそく国民の前でお歌を歌ってくれるかな?」
「「はーい!」」

元気よく手を挙げ返事をすると二人は王に連れられ国の人達が良く見えるバルコニーへ連れていかれた。
お城の周りに集まった住民たちは王の姿と二人の姿を見るなりわー!っと歓声を上げた。
突然の大きな声に驚いた二人は王の後ろに隠れるも大丈夫だからと優しく声を掛けられ前に出される。
王は両手を広げて二人を国民に紹介する。
二人は王の言葉が難しくて何を言っているのか理解できないけれど、王が何かを言う度に住民が歓声を上げるからなにかすごいことを言ってるんだな程度には感じていて。
王は住民に挨拶を終えると二人に、歌声を聞かせておくれと声をかけ、前に出す。
二人は顔を見合わせてさっきまで王が乗っていた少し高くなった台に乗ると息ぴったりの綺麗な歌声を響かせた。
みんな二人の歌声にうっとりと聞き惚れていて。
静かな空間に水華の透き通るような歌声と、千夏の包み込むような歌声が響き渡る。
聖堂で歌っていた聖歌を歌い上げると一気に歓声や拍手があがり沢山の人が二人の歌声を賞賛していることが伺えて。
聖堂では静かな拍手のみで、こんなに多くの人が喜んでくれる姿を、声を聞いた二人は大きな瞳をさらに大きくして嬉しいね!と笑いあった。
そうしてお披露目会が終わると二人は王の側近に連れられ住民たちの前に連れてこられ、交流をと勧められ、特に拒絶することなくいつも聖堂でやっていた通りみんなと交流を始めた。
住民たちは皆、天使様の御使いと二人を持て囃し、会話をしていく。
中には二人の頭を撫でる人や、逆に撫でてほしいと来る人、手を握ってほしいという肉体的接触を求める人もいて。
二人は嫌な顔一つせずその一つ一つに応えていった。
そんな中、ぽつんと少し離れた場所に白い影を見つけた水華はあっちにもいるよ!と千夏の手を引き走り出してしまう。
気づいた側近は慌てて追いかけてくるも小さな二人はすいすいと人の間をすり抜け離れていってしまう。
白い影は二人がこちらに向かってくるのを見ると城の裏の森へと姿を消してしまい、二人もそれを追いかけて森の中へと駆け込んでいった。
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