御使いの聖歌隊
「ちいたちが……まおー?」
「すい、まおーになるの?」
「ええ。言ったでしょう? 貴女たちの力がほしいと」
そのために必要なことですと話すと聖は杖を消し、代わりに羽ペンを手にするとわかりやすいほうがいいですねと何か決まったかのように呟いた。
「水華は水を司る水帝アクア、千夏は地を司る地帝アース、お互いエンジェでいいでしょう」
「すい、おにーさんがなにいってるのかわかんなーい」
「ちいもー」
「貴女たちを魔王として迎えるための新しい名前ですよ。あまり小難しい名前よりわかりやすい方がいいでしょう?」
「新しいお名前?」
「ちいたち、ちいじゃなくなるのー?」
「貴女たちは貴女たちのままですよ。ただ、力を授けるのに必要なことだと考えてもらえれば」
「んー、すい、よくわからないけどちいちゃんと一緒にいられるならいいや!」
「ちいもー!」
では行きますよと聖は羽ペンで「Aqua・Ange」「Earth・Ange」と記すと二人にそれぞれ取り込ませる。
すると二人の体がそれぞれ青とオレンジに光り出し、彼女たちはそれに驚きながらも自分の中に何か大きな力が溢れてくるのを感じているようで。
聖はそれを満足気に見守りながら彼女たちの覚醒を待った。
「あ、あなた……、うちの御使いに何をっ……」
「うちの御使い? 何を言っているんですか? 千夏も水華も貴女は手放したじゃないですか」
「手放したなんて、そんなこと……」
覚醒を見守る中、やっと立ち上がったシスターは聖に問いかけるも彼はそちらに見向きもせずそう返す。
手放した。
たしかにシスターはいなくなった水華を、歌えなくなった千夏をそれぞれ御使いとしての地位を奪いそれを愛美へと譲渡した。
その結果が現状。
けれどシスター自身、それが原因だと微塵も思っていないようで聖に御使いとしての任を解いたつもりはないと告げた。
「解いたつもりはない? ではなぜ千夏の隣には水華ではなくあの子がいたのでしょうか? それに、どうしてもっと真剣に水華を探してあげなかったのでしょうか? 任を解いていないのであればもっと丁寧に、真剣に探したでしょう? どんな手を使ってでも。ですが、貴女たちはそれをしなかった。それどころか歌えなくなった千夏をまるで道具のように扱うあの子を止めもしなかった。そうでしょう?」
「そ、それは……」
「貴女方はあの子たちを捨てたんですよ。役に立たないゴミ同然に。可哀想な二人。あんなに天使様の御使いだと持て囃されて、大事にされてきたのに歌えなくなったらこのザマ。貴女たちにとって御使いとは使い勝手のいい道具なんでしょうね?」
「違う……! 私たちは天使様のお導きのままに御使いとなる子たちを選んで大事にしてきた……! それは千夏も水華も同じです……!」
「大事に? ではどうして千夏はあんなに傷ついてしまったんでしょうか? ねぇ? 答えてくださいよ。天使様のお導きはどう仰っているんですか?」
ねぇ?と嘲るように笑い尋ねる聖にシスターは一歩、また一歩と後ずさっていく。
そんな彼女に詰め寄るように聖は一歩、また一歩と距離を詰めていった。
「さぁさぁ、教えてくださいよ。貴女たちが信じる天使様はどう仰っているんですか。黙ってないで教えてくださいよ。どうしてあの子たちだけがこんなに苦しい思いをしなくてはならなかったのか。さぁ!」
「ひっ……!」
壁際に追い詰めるとシスターはそのまま壁伝いに座り込んでしまい、聖の問いに答えることもなくただ頭を抱えてごめんなさいを繰り返し始めて。
その光景に聖はため息をつくと天使なんてこの程度ですよと吐き捨て二人の元へと戻っていった。
「すい、まおーになるの?」
「ええ。言ったでしょう? 貴女たちの力がほしいと」
そのために必要なことですと話すと聖は杖を消し、代わりに羽ペンを手にするとわかりやすいほうがいいですねと何か決まったかのように呟いた。
「水華は水を司る水帝アクア、千夏は地を司る地帝アース、お互いエンジェでいいでしょう」
「すい、おにーさんがなにいってるのかわかんなーい」
「ちいもー」
「貴女たちを魔王として迎えるための新しい名前ですよ。あまり小難しい名前よりわかりやすい方がいいでしょう?」
「新しいお名前?」
「ちいたち、ちいじゃなくなるのー?」
「貴女たちは貴女たちのままですよ。ただ、力を授けるのに必要なことだと考えてもらえれば」
「んー、すい、よくわからないけどちいちゃんと一緒にいられるならいいや!」
「ちいもー!」
では行きますよと聖は羽ペンで「Aqua・Ange」「Earth・Ange」と記すと二人にそれぞれ取り込ませる。
すると二人の体がそれぞれ青とオレンジに光り出し、彼女たちはそれに驚きながらも自分の中に何か大きな力が溢れてくるのを感じているようで。
聖はそれを満足気に見守りながら彼女たちの覚醒を待った。
「あ、あなた……、うちの御使いに何をっ……」
「うちの御使い? 何を言っているんですか? 千夏も水華も貴女は手放したじゃないですか」
「手放したなんて、そんなこと……」
覚醒を見守る中、やっと立ち上がったシスターは聖に問いかけるも彼はそちらに見向きもせずそう返す。
手放した。
たしかにシスターはいなくなった水華を、歌えなくなった千夏をそれぞれ御使いとしての地位を奪いそれを愛美へと譲渡した。
その結果が現状。
けれどシスター自身、それが原因だと微塵も思っていないようで聖に御使いとしての任を解いたつもりはないと告げた。
「解いたつもりはない? ではなぜ千夏の隣には水華ではなくあの子がいたのでしょうか? それに、どうしてもっと真剣に水華を探してあげなかったのでしょうか? 任を解いていないのであればもっと丁寧に、真剣に探したでしょう? どんな手を使ってでも。ですが、貴女たちはそれをしなかった。それどころか歌えなくなった千夏をまるで道具のように扱うあの子を止めもしなかった。そうでしょう?」
「そ、それは……」
「貴女方はあの子たちを捨てたんですよ。役に立たないゴミ同然に。可哀想な二人。あんなに天使様の御使いだと持て囃されて、大事にされてきたのに歌えなくなったらこのザマ。貴女たちにとって御使いとは使い勝手のいい道具なんでしょうね?」
「違う……! 私たちは天使様のお導きのままに御使いとなる子たちを選んで大事にしてきた……! それは千夏も水華も同じです……!」
「大事に? ではどうして千夏はあんなに傷ついてしまったんでしょうか? ねぇ? 答えてくださいよ。天使様のお導きはどう仰っているんですか?」
ねぇ?と嘲るように笑い尋ねる聖にシスターは一歩、また一歩と後ずさっていく。
そんな彼女に詰め寄るように聖は一歩、また一歩と距離を詰めていった。
「さぁさぁ、教えてくださいよ。貴女たちが信じる天使様はどう仰っているんですか。黙ってないで教えてくださいよ。どうしてあの子たちだけがこんなに苦しい思いをしなくてはならなかったのか。さぁ!」
「ひっ……!」
壁際に追い詰めるとシスターはそのまま壁伝いに座り込んでしまい、聖の問いに答えることもなくただ頭を抱えてごめんなさいを繰り返し始めて。
その光景に聖はため息をつくと天使なんてこの程度ですよと吐き捨て二人の元へと戻っていった。