御使いの聖歌隊
それからしばらくして千夏は一人、ひっそりと建った教会でシスターに言われるがまま歌を奏で続けていた。
水華は相変わらず見つからず、千夏は一人寂しく音色を奏でる。
早く離れ離れになった水華に会えますようにと。
「シスター……。ちい、もうお歌うたいたくない……」
舞台上から浮かない顔をして降りてきた千夏はシスターにそんなことを呟いた。
いつも楽しく歌えていたことが今は苦しくて仕方ない。
お歌が楽しくないと訴える千夏にシスターはそれが貴女の仕事なのと言い聞いてくれなくて。
千夏はしょんぼりしたまま与えられた部屋に戻り、ベッドの上のいるかのぬいぐるみを抱きしめて声を殺して泣く。
寂しい、苦しい、もう歌いたくない。
水華に会いたいと。
そうしていつものように泣き疲れて眠り、目を覚ますと外は真っ暗な空が広がる夜になっていた。
睡眠が不規則になっていた千夏は夜に目を覚ましては窓から空を見上げ大きな黄色い月を見ていて。
ここはユークレストから離れたとても小さな集落。
かつて本当の天使の御使いと呼ばれていた【翼者 】という種族が生きていた場所。
天使様と同じきれいな白い翼をもった種族。
天使様から力を授かり人間に加護と乗り越えられる程度の困難を与える存在。
それが翼者。
ここに来た当初、シスターが千夏にそう教えてくれた。
そんな場所にひっそりと佇む教会。
千夏はそんな場所で天使の御使いと呼ばれ歌を奏でさせられ続けていた。
一人で、さみしく。
「すいちゃん……っ、すいちゃんっ……」
えぐえぐと嗚咽を繰り返しながら大粒の涙を流し泣きじゃくる日々。
そんな日々を繰り返していたある日……。
「……っ?」
今日も歌いたくないけどシスターに言われるまま舞台上で歌おうとした千夏はいつも通り声を出そうとした。
けれど、彼女の口からは何の音も発せられなくて。
千夏自身も驚きを隠せないようで、どうしようとなんとか声を出そうとするも一声も出ず。
どうして、なんで……とその場に蹲る千夏にシスターは駆け寄ると集まってくれた信者に御使い様は少し疲れてしまったようですと伝え彼女を抱きかかえると部屋へ運んだ。
「千夏? なにか変なものでも食べましたか?」
「……っ、……っ!」
食べてないといわんばかりに首を激しく横に振り涙目でシスターを見るとそのまま泣き始めて。
いつも見たいに大声で泣き始めるかと思ったシスターも、大口を開けてぼろぼろ泣く千夏に違和感を感じしばらくお歌はお休みにしましょうと言ってくれた。
そのあとシスターはこう続ける。
「水華の代わりを今度見つけてきますから」と。
その言葉に千夏はハッと顔を上げ、唇だけを動かしすいちゃんは……?とシスターに尋ねる。
シスターはそんな千夏にもう忘れなさいと伝えると部屋を出て行ってしまった。
突然の宣告に千夏は呆然とし、やっと理解をする。
――もう、水華とは歌えないんだと。
そのことが重くのしかかり千夏はその場で泣き崩れた。
ただ水華と一緒に歌えるだけで幸せだった日々を思い返しながら。
水華は相変わらず見つからず、千夏は一人寂しく音色を奏でる。
早く離れ離れになった水華に会えますようにと。
「シスター……。ちい、もうお歌うたいたくない……」
舞台上から浮かない顔をして降りてきた千夏はシスターにそんなことを呟いた。
いつも楽しく歌えていたことが今は苦しくて仕方ない。
お歌が楽しくないと訴える千夏にシスターはそれが貴女の仕事なのと言い聞いてくれなくて。
千夏はしょんぼりしたまま与えられた部屋に戻り、ベッドの上のいるかのぬいぐるみを抱きしめて声を殺して泣く。
寂しい、苦しい、もう歌いたくない。
水華に会いたいと。
そうしていつものように泣き疲れて眠り、目を覚ますと外は真っ暗な空が広がる夜になっていた。
睡眠が不規則になっていた千夏は夜に目を覚ましては窓から空を見上げ大きな黄色い月を見ていて。
ここはユークレストから離れたとても小さな集落。
かつて本当の天使の御使いと呼ばれていた【
天使様と同じきれいな白い翼をもった種族。
天使様から力を授かり人間に加護と乗り越えられる程度の困難を与える存在。
それが翼者。
ここに来た当初、シスターが千夏にそう教えてくれた。
そんな場所にひっそりと佇む教会。
千夏はそんな場所で天使の御使いと呼ばれ歌を奏でさせられ続けていた。
一人で、さみしく。
「すいちゃん……っ、すいちゃんっ……」
えぐえぐと嗚咽を繰り返しながら大粒の涙を流し泣きじゃくる日々。
そんな日々を繰り返していたある日……。
「……っ?」
今日も歌いたくないけどシスターに言われるまま舞台上で歌おうとした千夏はいつも通り声を出そうとした。
けれど、彼女の口からは何の音も発せられなくて。
千夏自身も驚きを隠せないようで、どうしようとなんとか声を出そうとするも一声も出ず。
どうして、なんで……とその場に蹲る千夏にシスターは駆け寄ると集まってくれた信者に御使い様は少し疲れてしまったようですと伝え彼女を抱きかかえると部屋へ運んだ。
「千夏? なにか変なものでも食べましたか?」
「……っ、……っ!」
食べてないといわんばかりに首を激しく横に振り涙目でシスターを見るとそのまま泣き始めて。
いつも見たいに大声で泣き始めるかと思ったシスターも、大口を開けてぼろぼろ泣く千夏に違和感を感じしばらくお歌はお休みにしましょうと言ってくれた。
そのあとシスターはこう続ける。
「水華の代わりを今度見つけてきますから」と。
その言葉に千夏はハッと顔を上げ、唇だけを動かしすいちゃんは……?とシスターに尋ねる。
シスターはそんな千夏にもう忘れなさいと伝えると部屋を出て行ってしまった。
突然の宣告に千夏は呆然とし、やっと理解をする。
――もう、水華とは歌えないんだと。
そのことが重くのしかかり千夏はその場で泣き崩れた。
ただ水華と一緒に歌えるだけで幸せだった日々を思い返しながら。