御使いの聖歌隊

朝になり、水華は朝日の光で目を覚ます。
穴から出てくるとぐーっと伸びをすると辺りを見回して様子を確認。
道らしい道もなく、人の気配さえしない。
困ったなぁと思いながらも水華はとりあえず進めそうな道を行くことにした。
しばらく歩いていくと大きな湖にたどりつく。
お水ー!と湖に駆け寄り、水を掬おうと覗き込んだ時だった。

「これ……すい……?」

青く綺麗だった瞳は血のような真っ赤な色に染まり、白かった服も真っ黒に染まった自分の姿が水面に映っていて、どういうこと……?と困惑を隠せず、その場にへたりこんでしまった。
どうして、なんで……?と驚く水華の前に現れたのは彼女がずっと会いたがっていた聖で。
彼は水華に歩みよると無事に覚醒したみたいですねと声をかけてきた。

「おにーさん……?」
「本当は同時に覚醒させた方がよかったんですが……。案外貴女の方が寂しがりやだった、ということですか」
「どいうこと……? すい、どうなっちゃったの……?」
「水華、貴女は私に選ばれたんですよ。最初に言ったでしょう? 貴女達の力を貸してほしいと」
「すいたちの……ちから……? おにーさん、すいに何したの……?」
「貴女達に力を与えただけですよ。本当は二人まとめて覚醒させて、魔王としての力を更に与えてこちらに連れて行きたかったんですがね……。まぁ、仕方ないです」
「おにーさん、ちいちゃんは……? すい、ちいちゃんに会いたい……。一人ぼっちはやだよぉ……」
「大丈夫ですよ。すぐに千夏も傍に来ますから。とりあえず貴女に自分の力の使い方をわかってもらう必要がありますね。歌での洗脳行為は千夏があってこそのものですから」
「おにーさん、難しいことばっか……。すい、何言ってるのかわからない……」
「そうですね。とりあえず水華、千夏とまた一緒にいられるようになるために、自分にどんな力があるか、確認してみましょう」
「はーい!」

いい子です、と頭を撫でるとえへへと嬉しそうに笑う水華。
そんな彼女を見て聖は少し表情を曇らせたかと思うとすぐにいつもの優しい笑みを浮かべ、では最初に……とまだ覚醒したばかりの彼女に力の使い方を教え始めた。
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