御使いの聖歌隊

ーーそのころ水華は。

「ちいちゃんのばかっ、ばかっ」

千夏の手を離し走った水華はいつもの森の中にいた。
聖と出会ったあの場所で膝を抱えてひくひくと嗚咽を漏らしながら泣いていて。
独りぼっちでさみしいと泣きじゃくる水華の周りには誰もいなくて。
ここに来れば聖に会えると思っていたのか水華はずっとその場から動かなくて。
けれど待てども待てども誰も来ない。
独りぼっちの水華はしばらく泣いて、千夏を探そうとその場を後にし、森の中を探す。
いつも通いなれた道。
なのに一人だというだけで辺りの雰囲気はがらりと変わって。
鳥の飛び立つ音や、風の音でさえ怖くて水華は知らないうちに城とは逆の道を歩いてしまっていた。
森の奥の方。
真っ暗な闇の中、水華はもう歩けないよぉ……とその場にうずくまってしまう。

「ちいちゃぁあん……っ、ちいちゃんごめんねっ……、ちいちゃんっ」

独りにしないでよぉと泣きじゃくる水華に反応するように付けていたブレスレットが突然青く光りだす。
なになにっ、と驚く水華を余所にその光はどんどん強くなり、目も開けてられないほど輝くとその場で倒れてしまった。
しばらくして光が収まると水華はゆっくり立ち上がり、突然光りだしたブレスレットを見る。
ブレスレットはすでに光を失っており、いつもみたいにただ水華の腕にはまっているだけの状態に戻っていた。
一体何だったんだろうと首をかしげながら辺りをきょろきょろ見渡してから大きな木の穴を見つけてそこに身を隠すとそのまま眠りに落ちていった。
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