御使いの聖歌隊
それから二人は聖に言われた通り、週一回の御使いの洗礼の時にだけ力を使うようになった。
人々はその歌声を聞き、癒され、さらに二人を賛美する。
二人が人とは違う存在になっていることに気づくともなく国民たちは今日も有難いと二人の歌を聴く。
二人も聖との約束をきちんと守って平穏な日々を過ごしていた。
そんなある日。
二人は与えられた自由時間でレグルスの城下町に来ていた。
たくさんの人がいてはぐれないようにきちんと手をつないで。
すれ違う人たちは二人を見るとありがたいと手を合わせたりしていた。
「ちいちゃん、どこいこっかー?」
「すいちゃんのいきたいとこー!」
「えー、またすいが決めるのー!? たまにはちいちゃんが決めてよー!」
「だってちいはすいちゃんがいればどこでもいいんだもん!」
ふてくされる水華に対してにこにこ笑っている千夏。
そんな二人を見て町の人たちは今日も仲良しだねぇと口々に言っていて。
千夏は仲良し仲良し!とはしゃぐも水華は相変わらず頬をぷくーっと膨らませたままで。
どしたの?と小首をかしげる千夏に水華はついにその手を離し、もう知らない!と先に駆けて行ってしまった。
千夏はなんで水華が怒っているのかわからず待ってよー!と慌てて追いかけるも彼女の方が足が速いのか追いつけない。
ついにはぐれてしまった千夏はえーんえーんと泣いて水華を呼びながら町の外れまで来てしまった。
「すいちゃああん! すいちゃんどこおおお!」
ついに歩き疲れた千夏はその場に座りこんで大声で泣きながら水華を呼び続ける。
けれどその声は空に消えるだけで肝心の水華には届かなくて。
「すいちゃああん! すいちゃんどこおおお!」
「千夏? 千夏ね?」
「んぅ……?」
そんな千夏に駆け寄ってきたのは自分たちがいた教会のシスターで。
やっと見つけたとシスターは駆け寄ってくると千夏を抱きしめ、水華は?と尋ねる。
その問いに千夏は首を横に振るとすいちゃんいないのとまた大声で泣き始めて。
シスターは泣かないでと千夏の涙を拭い、立ち上がらせると手を繋ぎ水華がいないか辺りを一緒に探し始めた。
「千夏、水華と喧嘩しちゃったの?」
「ん……。すいちゃん、わかんないけど突然怒っちゃって……。ちい、なにかした? ちいわからなくて……」
「水華が怒る前何をしたの?」
「すいちゃんね、ちいに、どこいきたい? って聞いてきたの。だからちいね、すいちゃんが行きたいとこでいいよって。そしたらほっぺた、お餅みたいにぷくーってさせて、ぴゅーってどっか行っちゃったの」
「そっかー」
「ちい、なにか悪いことした? ちい、どうしてすいちゃんが怒ったのかわからなくて……」
「そうだね……。水華はいつも自分が行きたいとこにばっか千夏を連れて行ってるから、今度は千夏が行きたいとこに二人で行きたかったんじゃないかな?」
行きたい場所とかないの?と尋ねられて千夏は、すいちゃんがいればどこでもいいと答えて。
その答えにシスターは、千夏は自分の意見がないんじゃなくて、心から水華と一緒にいれるならどこでもいいということを気づかされた。
千夏は水華が大事で、大切で、大好きで。
だからこそ水華が行きたいとこならどこでもいいと言ってしまったんだと。
けれど水華はきっといつも自分が千夏を振り回してるから、それじゃあ悪いと思ってどこに行きたい?と提案したんだと、二人の性格を知っているシスターはそういうことかと自分の中で納得した。
「ちい、すいちゃんいないと何もできない……。すいちゃん……っ」
「大丈夫だから。ね? もう少し探そうか?」
「ん……」
泣きそうになる千夏はごしごしと目を擦り、大きな声で水華を呼ぶ。
けれど、その声に返答はなくて。
この辺りにはもういないのかなとうなだれる千夏に、一緒にいたシスターは、今日はここまでにして明日、また探そうと提案する。
たくさん歩いて、泣いて疲れた千夏はその提案に頷き、シスターにだっこをねだり、抱き上げてもらうとぎゅっとしがみつきそのまま眠ってしまった。
人々はその歌声を聞き、癒され、さらに二人を賛美する。
二人が人とは違う存在になっていることに気づくともなく国民たちは今日も有難いと二人の歌を聴く。
二人も聖との約束をきちんと守って平穏な日々を過ごしていた。
そんなある日。
二人は与えられた自由時間でレグルスの城下町に来ていた。
たくさんの人がいてはぐれないようにきちんと手をつないで。
すれ違う人たちは二人を見るとありがたいと手を合わせたりしていた。
「ちいちゃん、どこいこっかー?」
「すいちゃんのいきたいとこー!」
「えー、またすいが決めるのー!? たまにはちいちゃんが決めてよー!」
「だってちいはすいちゃんがいればどこでもいいんだもん!」
ふてくされる水華に対してにこにこ笑っている千夏。
そんな二人を見て町の人たちは今日も仲良しだねぇと口々に言っていて。
千夏は仲良し仲良し!とはしゃぐも水華は相変わらず頬をぷくーっと膨らませたままで。
どしたの?と小首をかしげる千夏に水華はついにその手を離し、もう知らない!と先に駆けて行ってしまった。
千夏はなんで水華が怒っているのかわからず待ってよー!と慌てて追いかけるも彼女の方が足が速いのか追いつけない。
ついにはぐれてしまった千夏はえーんえーんと泣いて水華を呼びながら町の外れまで来てしまった。
「すいちゃああん! すいちゃんどこおおお!」
ついに歩き疲れた千夏はその場に座りこんで大声で泣きながら水華を呼び続ける。
けれどその声は空に消えるだけで肝心の水華には届かなくて。
「すいちゃああん! すいちゃんどこおおお!」
「千夏? 千夏ね?」
「んぅ……?」
そんな千夏に駆け寄ってきたのは自分たちがいた教会のシスターで。
やっと見つけたとシスターは駆け寄ってくると千夏を抱きしめ、水華は?と尋ねる。
その問いに千夏は首を横に振るとすいちゃんいないのとまた大声で泣き始めて。
シスターは泣かないでと千夏の涙を拭い、立ち上がらせると手を繋ぎ水華がいないか辺りを一緒に探し始めた。
「千夏、水華と喧嘩しちゃったの?」
「ん……。すいちゃん、わかんないけど突然怒っちゃって……。ちい、なにかした? ちいわからなくて……」
「水華が怒る前何をしたの?」
「すいちゃんね、ちいに、どこいきたい? って聞いてきたの。だからちいね、すいちゃんが行きたいとこでいいよって。そしたらほっぺた、お餅みたいにぷくーってさせて、ぴゅーってどっか行っちゃったの」
「そっかー」
「ちい、なにか悪いことした? ちい、どうしてすいちゃんが怒ったのかわからなくて……」
「そうだね……。水華はいつも自分が行きたいとこにばっか千夏を連れて行ってるから、今度は千夏が行きたいとこに二人で行きたかったんじゃないかな?」
行きたい場所とかないの?と尋ねられて千夏は、すいちゃんがいればどこでもいいと答えて。
その答えにシスターは、千夏は自分の意見がないんじゃなくて、心から水華と一緒にいれるならどこでもいいということを気づかされた。
千夏は水華が大事で、大切で、大好きで。
だからこそ水華が行きたいとこならどこでもいいと言ってしまったんだと。
けれど水華はきっといつも自分が千夏を振り回してるから、それじゃあ悪いと思ってどこに行きたい?と提案したんだと、二人の性格を知っているシスターはそういうことかと自分の中で納得した。
「ちい、すいちゃんいないと何もできない……。すいちゃん……っ」
「大丈夫だから。ね? もう少し探そうか?」
「ん……」
泣きそうになる千夏はごしごしと目を擦り、大きな声で水華を呼ぶ。
けれど、その声に返答はなくて。
この辺りにはもういないのかなとうなだれる千夏に、一緒にいたシスターは、今日はここまでにして明日、また探そうと提案する。
たくさん歩いて、泣いて疲れた千夏はその提案に頷き、シスターにだっこをねだり、抱き上げてもらうとぎゅっとしがみつきそのまま眠ってしまった。