短編集
お買い物は計画的に
「じゃあ、お願いね……。センチェルス。買ってきてほしい物はそのメモの通り、だから……」
ある日、風邪を引いてしまったウィードの代わりに私が買い物に行く事になった。
事の発端は私が彼を無理させてしまった事が原因。
突然具合の悪くなった彼は今こほこほと咳き込みながら布団に包まっている。
しかし今日はスーパーの特売日。
買い物にどうしても行きたいと駄々を捏ねるウィードにそれなら私が行きますと告げた。
そして今、私の手元には買い物バッグとウィードが買ってきてほしい物が掛かれた一枚のメモ、可愛らしい水色の長財布があって。
「センチェルス」
「はい、なんですか?」
「……そのメモ以外の物は買ってきちゃ、だめ、だからね……?」
「わかってますよ」
任せてくださいと告げると部屋を出て家を出る。
すると目の前にいたのは待ってましたと言わんばかりなリーヴァで。
なぜ?と思っていると付き合いますよと歩み寄ってきた。
「センチェルス様一人で買い物に行かせられませんから」
「大丈夫ですよ。ちゃんとメモも貰いましたし、お財布だって中の金額はぴったりでしょうし」
「それでもやらかしたでしょう?」
「そうでした?」
「はい。なので僕も行きます。さ、お財布を僕に預けてください」
さぁと手を差し出してくるリーヴァに仕方ないと財布を預けるとこれでいいですと手持ちのバッグにしまうといきましょうかと歩きだした。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
そうして私たちはセールをやっているというスーパーに来た。
買い物かごをと手に取ろうとするとすかさずリーヴァが自分が持ちますからと取られてしまった。
これでは私が来た意味がないと訴えてもだめですとしか言われない。
「少しは信用してくださいよ、リーヴァ」
「これに関しては信用も信頼もできません。大体ウィードくんはどうしてセンチェルス様に買い物を頼んだんですか。僕が帰ってくるまで待っててくれればいいものを……」
「タイムセールがあるからと言ってました。確かメモによると16時から卵が安くなるみたいですね」
「なるほど。他のものはどうですか?」
「他は……あ、お肉が16時半からみたいです。今日のタイムセールで欲しいものはそれだけですね。あとは諸々って感じです」
「なるほど……」
それならと店内にある時計を見てからメモを貸してくださいとついに私の手元のメモまで奪われてしまった。
これでは本当に私が来た意味がない。
リーヴァに私にも何か……と告げると大人しくしててくださいと言われてしまった。
「貴方、最近私の扱い雑じゃありませんか? 私一応貴方の主ですよ?」
「知ってますよ。センチェルス様が僕のたった一人のご主人様だって。だから主人の不始末を片付けるのも、それを防止するのも従者としての役割です」
「買い物くらいでそんな……」
「お忘れですか? 実験所時代、みんなのご飯を買ってくると言って出てったセンチェルス様が何を買ってきたのか」
「チョコレートですね」
「ええ。そうです。チョコレートしか買ってこられなかった。あの時から僕はセンチェルス様に買い物はさせてはいけないんだと心に決めたんです」
美味しかったじゃないですかと呟くとそれでもだめですと言ってリーヴァはメモを見ると売り場へと向かい私もあとを追いかけた。
「まずは……野菜ですね。ネギと白菜、キャベツに人参。お豆腐もほしいようですね……。センチェルス様、あっちの冷蔵のとこから絹ごしの豆腐を持ってきてください。三連パックになっているやつを2つほどお願いします」
「わかりました。任せてください」
あっちと指示されて私は豆腐が置かれている場所へ向かいさくさくと歩いていく。
このくらいなら私にだってできると豆腐の場所へ向かうと言われた通り三連パックの絹ごし豆腐で一番安いものを手に取る。
これでいいと戻ろうとした私の視界に入ったのは特設コーナーにあるチョコレートゾーンで。
可愛らしいパッケージ。
きれいなラッピング。
そして甘い香りに誘われるように私はその特設コーナーに向かおうとした。
その時。
「センチェルス様」
「あ……」
どこに行こうとされているんですか?とリーヴァに声を掛けられ振り返ると彼はにこにこしながら私の腕を力強く握っていて。
これは怒っているなと思い、私は持っていた豆腐をリーヴァが持っている買い物かごに入れて惑わされてませんよととりあえず言っといた。
「惑わされてましたよね? ふらっと行こうとしてましたよね?」
「してません」
「してましたよね?」
「してませんよ」
「じゃあなんでそっちに向かおうとしてるんですか?」
「いや、それは……ウィードに買って行ってあげようかと……」
「喉が痛いと言って咳込んでるウィードくんにですか?」
「……」
「……行きますよ、センチェルス様」
こっちですと黙り込む私を連れてその場を後にするリーヴァ。
遠ざかっていく特設コーナーに後ろ髪を引かれながら私は泣く泣く買い物を再開した。
「卵は一人1個までなのでセンチェルス様が一個買ってください」
「わかりました」
「お肉は一人2パックまで……なら値段によってはこれも買っていただきますね。お金は僕が出しますので」
「なんだか私が子供みたいじゃないですか」
「拗ねないでください。大体センチェルス様がちゃんとお買い物が出来たらこんなことにはなっていないんですよ」
行きますよと手を引かれ向かったのは卵の売り場。
店員さんが並んだ人達に卵を一人一つずつ渡してて、私たちもその列に並ぶ。
しばらくして卵を1パックずつ受け取ると列を離れて今度はお肉のタイムセールの場所へと向かった。
「チラシによるとお肉の値段半額になるみたいなのでセンチェルス様も買ってくださいね」
「わかりました」
私たちの周りにはタイムセールのお肉を狙っている人たちが今か今かと待っていた。
半額は確かにほしいですよねと頷き共感しているとあっという間にその時間がやってきて私たちは一斉にお肉のパックをめがけて走り出す。
卵が割れないか心配ではあったがとりあえず一人2パック手にするとその場をさっさと後にしてお会計の列に並んだ。
リーヴァは自分の黒い折り畳み財布からいくらか取り出すとこれで買ってくださいと言いつけて私の後ろに並ぶ。
まるで私は列から離れないように監視でもするみたいに。
本当に信用がありませんねと肩を竦め溜息をつくと自分の順番が来るのを待った。
しばらくして自分の番が来て私は持っていた卵とお肉をレジに出す。
金額が出て持っているお金を渡すとおつりと袋に入れられた商品が渡され私は列を離る。
するとすぐにリーヴァのお会計も終わり私のところに戻ってくると帰りましょうかとスーパーを後にした。
「やはりお一人で買い物に行かせられませんね、センチェルス様は」
「そんなに警戒しなくてもいいじゃないですか。少し見ようとしただけで……」
「どの口がいうんですか?」
「……やはり貴方、私の扱い雑ですね」
「長年の付き合いですから。でもちゃんと敬いの心は持ってますよ」
「本当でしょうか。甚だ疑問です」
「ほんとですよ。じゃなきゃ僕は人間をやめてまで貴方に付き添いませんよ」
確かにその通りなんですがと少し納得のいかない様子で見てるとさっさと帰りますよと声を掛けられ私たちはウィードと子供たちが待っている家へと足早に帰っていった――。
「じゃあ、お願いね……。センチェルス。買ってきてほしい物はそのメモの通り、だから……」
ある日、風邪を引いてしまったウィードの代わりに私が買い物に行く事になった。
事の発端は私が彼を無理させてしまった事が原因。
突然具合の悪くなった彼は今こほこほと咳き込みながら布団に包まっている。
しかし今日はスーパーの特売日。
買い物にどうしても行きたいと駄々を捏ねるウィードにそれなら私が行きますと告げた。
そして今、私の手元には買い物バッグとウィードが買ってきてほしい物が掛かれた一枚のメモ、可愛らしい水色の長財布があって。
「センチェルス」
「はい、なんですか?」
「……そのメモ以外の物は買ってきちゃ、だめ、だからね……?」
「わかってますよ」
任せてくださいと告げると部屋を出て家を出る。
すると目の前にいたのは待ってましたと言わんばかりなリーヴァで。
なぜ?と思っていると付き合いますよと歩み寄ってきた。
「センチェルス様一人で買い物に行かせられませんから」
「大丈夫ですよ。ちゃんとメモも貰いましたし、お財布だって中の金額はぴったりでしょうし」
「それでもやらかしたでしょう?」
「そうでした?」
「はい。なので僕も行きます。さ、お財布を僕に預けてください」
さぁと手を差し出してくるリーヴァに仕方ないと財布を預けるとこれでいいですと手持ちのバッグにしまうといきましょうかと歩きだした。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
そうして私たちはセールをやっているというスーパーに来た。
買い物かごをと手に取ろうとするとすかさずリーヴァが自分が持ちますからと取られてしまった。
これでは私が来た意味がないと訴えてもだめですとしか言われない。
「少しは信用してくださいよ、リーヴァ」
「これに関しては信用も信頼もできません。大体ウィードくんはどうしてセンチェルス様に買い物を頼んだんですか。僕が帰ってくるまで待っててくれればいいものを……」
「タイムセールがあるからと言ってました。確かメモによると16時から卵が安くなるみたいですね」
「なるほど。他のものはどうですか?」
「他は……あ、お肉が16時半からみたいです。今日のタイムセールで欲しいものはそれだけですね。あとは諸々って感じです」
「なるほど……」
それならと店内にある時計を見てからメモを貸してくださいとついに私の手元のメモまで奪われてしまった。
これでは本当に私が来た意味がない。
リーヴァに私にも何か……と告げると大人しくしててくださいと言われてしまった。
「貴方、最近私の扱い雑じゃありませんか? 私一応貴方の主ですよ?」
「知ってますよ。センチェルス様が僕のたった一人のご主人様だって。だから主人の不始末を片付けるのも、それを防止するのも従者としての役割です」
「買い物くらいでそんな……」
「お忘れですか? 実験所時代、みんなのご飯を買ってくると言って出てったセンチェルス様が何を買ってきたのか」
「チョコレートですね」
「ええ。そうです。チョコレートしか買ってこられなかった。あの時から僕はセンチェルス様に買い物はさせてはいけないんだと心に決めたんです」
美味しかったじゃないですかと呟くとそれでもだめですと言ってリーヴァはメモを見ると売り場へと向かい私もあとを追いかけた。
「まずは……野菜ですね。ネギと白菜、キャベツに人参。お豆腐もほしいようですね……。センチェルス様、あっちの冷蔵のとこから絹ごしの豆腐を持ってきてください。三連パックになっているやつを2つほどお願いします」
「わかりました。任せてください」
あっちと指示されて私は豆腐が置かれている場所へ向かいさくさくと歩いていく。
このくらいなら私にだってできると豆腐の場所へ向かうと言われた通り三連パックの絹ごし豆腐で一番安いものを手に取る。
これでいいと戻ろうとした私の視界に入ったのは特設コーナーにあるチョコレートゾーンで。
可愛らしいパッケージ。
きれいなラッピング。
そして甘い香りに誘われるように私はその特設コーナーに向かおうとした。
その時。
「センチェルス様」
「あ……」
どこに行こうとされているんですか?とリーヴァに声を掛けられ振り返ると彼はにこにこしながら私の腕を力強く握っていて。
これは怒っているなと思い、私は持っていた豆腐をリーヴァが持っている買い物かごに入れて惑わされてませんよととりあえず言っといた。
「惑わされてましたよね? ふらっと行こうとしてましたよね?」
「してません」
「してましたよね?」
「してませんよ」
「じゃあなんでそっちに向かおうとしてるんですか?」
「いや、それは……ウィードに買って行ってあげようかと……」
「喉が痛いと言って咳込んでるウィードくんにですか?」
「……」
「……行きますよ、センチェルス様」
こっちですと黙り込む私を連れてその場を後にするリーヴァ。
遠ざかっていく特設コーナーに後ろ髪を引かれながら私は泣く泣く買い物を再開した。
「卵は一人1個までなのでセンチェルス様が一個買ってください」
「わかりました」
「お肉は一人2パックまで……なら値段によってはこれも買っていただきますね。お金は僕が出しますので」
「なんだか私が子供みたいじゃないですか」
「拗ねないでください。大体センチェルス様がちゃんとお買い物が出来たらこんなことにはなっていないんですよ」
行きますよと手を引かれ向かったのは卵の売り場。
店員さんが並んだ人達に卵を一人一つずつ渡してて、私たちもその列に並ぶ。
しばらくして卵を1パックずつ受け取ると列を離れて今度はお肉のタイムセールの場所へと向かった。
「チラシによるとお肉の値段半額になるみたいなのでセンチェルス様も買ってくださいね」
「わかりました」
私たちの周りにはタイムセールのお肉を狙っている人たちが今か今かと待っていた。
半額は確かにほしいですよねと頷き共感しているとあっという間にその時間がやってきて私たちは一斉にお肉のパックをめがけて走り出す。
卵が割れないか心配ではあったがとりあえず一人2パック手にするとその場をさっさと後にしてお会計の列に並んだ。
リーヴァは自分の黒い折り畳み財布からいくらか取り出すとこれで買ってくださいと言いつけて私の後ろに並ぶ。
まるで私は列から離れないように監視でもするみたいに。
本当に信用がありませんねと肩を竦め溜息をつくと自分の順番が来るのを待った。
しばらくして自分の番が来て私は持っていた卵とお肉をレジに出す。
金額が出て持っているお金を渡すとおつりと袋に入れられた商品が渡され私は列を離る。
するとすぐにリーヴァのお会計も終わり私のところに戻ってくると帰りましょうかとスーパーを後にした。
「やはりお一人で買い物に行かせられませんね、センチェルス様は」
「そんなに警戒しなくてもいいじゃないですか。少し見ようとしただけで……」
「どの口がいうんですか?」
「……やはり貴方、私の扱い雑ですね」
「長年の付き合いですから。でもちゃんと敬いの心は持ってますよ」
「本当でしょうか。甚だ疑問です」
「ほんとですよ。じゃなきゃ僕は人間をやめてまで貴方に付き添いませんよ」
確かにその通りなんですがと少し納得のいかない様子で見てるとさっさと帰りますよと声を掛けられ私たちはウィードと子供たちが待っている家へと足早に帰っていった――。