短編集

プレゼントは……


「毎年毎年飽きないやつらだな、まったく」

4月1日。
午前中は人が傷つかない嘘をついてもいい日らしい。
天使の間でもその行事が各所で行われていて、この日を利用して想いを伝えるやつらもいる。
ボクはそんな周りのやつらを見ては無駄な行事だなと思いながら部屋で寛いでいた。

「はっぴーばーすでー! ラグー!」

静かな部屋の中で本を読んでいると扉をノックもせずにバンと開け入ってきたのはサンダルクで。
手には赤いリボンが掛けられた白くて少し大きめな箱を持って現れたサンダルクはボクの返答も待たずに部屋に入ってくるなり扉を閉めて座りこんだ。
静かな時間を過ごせると思っていたのにと睨むボクにお誕生日おめでとう!とその白い箱を差し出してきた。

「別に誕生日なんて祝うほどいいもんじゃない」
「まぁまぁ、そういわずに! 僕がラグに会えたのもこの日に生まれてきてくれたからなんだからさ!」
「そういうお前だって今日が天使としての誕生日だろう?」
「え!? ラグ、覚えててくれたの!?」
「お前が毎年毎年祝うからだろう? ボクと同じ日に生まれて嬉しいとかなんとか言って」
「嬉しいなぁー。僕の誕生日覚えていてくれたなんてー。じゃあ、ラグも僕に何か用意してくれてるんだよね!? ね!?」

なにくれるのかな?とそわそわしているサンダルクに別に何も用意してないとも言えずどうするかと少し考える。
今から何かないか……と辺りを見回してもあるのはボクが読んだ本ばかり。
それならとボクはサンダルクの手から白い箱を受け取り、リボンを解くとそれを自分の首に巻き付けこれでどうだ?と見上げた。

「ラグ、本気で言ってる?」
「なんだ? いやなのか? いやなら別に受け取らなくても……」
「え、手加減できないけどいい?」
「は?」

どういうことだと言う前にボクはサンダルクに押し倒された。
何をする気なのか皆目見当がつかない。

「おい、サンダルク。重い」
「ねぇ、ラグってさほんと鈍感だよね。僕が男だってわかってる? 好きな相手にプレゼントは自分だって言われて我慢できるわけないでしょ?」
「は?」
「そういう純粋で鈍感なとこも好きだけど、少しは警戒した方がいいと僕は思うんだよね」
「さっきから何を言っているんだ? こんな首にリボンを巻いただけのボクだろう? いつものボクと何が違うって……」
「わかってない、ラグはわかってない。仕方ないから僕がラグに教えてあげるよ」

そう言ってサンダルクはボクを抱き上げるとベッドまで運んで覚悟してねと笑み、開眼したその碧い瞳にボクを映した。

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「よーくわかった……」
「でしょ? もう軽率にこういうことしないようにね、ラグ」

ベッドの上、抱き潰されたボクは身動きが取れないままサンダルクの腕の中にいた。

「ラグ、お誕生日おめでとう」
「ん。お前もな、サンディ」

触れるだけのキスをするとボクはそういえばあの箱は……?と尋ねると開けてごらんと離された。
わかったとベッドから出ていこうとするボクにサンダルクはやっぱりそこで待っててと自分の上着を羽織らせてきて、床に置いてある箱を取りに行く。
そして箱をボクに持たせると開けてと促してきて言われるままその箱を開ける。
中に入ってたのはサンダルクと同じ黄色の毛並みを持った狐のぬぐるみで。

「これがあればさ、少しは寂しくないでしょ? 僕がもし遠征に言っててもさ」
「サンディ……」
「これを僕だと思って大切にしてね、ラグ」
「ん……」

大事にすると抱き締めるボクにサンダルクは触れるだけのキスをするとぬいぐるみごと抱きしめて眠り、ボクもその後すぐに眠った。
こんな日々がずっと続けばいいなとそう、願いながら。
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