【GL】Fox Maiden-狐巫女の洗礼-

洞窟を出た彼女は辺りの様子を確認してから木陰に隠れ、隠していた水晶を取り出し主である彼女を呼び出す。
ぼうっと光が広がると目の前にホログラム化した彼女が現れ、うまくいったか?と尋ねてくる。
花月は小さく頷きだいじょーぶですと答える。

「みこさま、ひとつきいてもいいですか」
(どうした、花月。何か不満でもあるのか?)
「どうしてかげつのあたまはこんなにていか、しているのでしょうか」
(ああ、そのことか。そのほうが子供らしくてやつらも警戒してこまいと思ってなぁ。実際、その通りだっただろう?)
「こどもみたいでなんかいやです」
(実際子供だろう?)
「みこさまのところにもどったら、もどしてください」
(わかっている。心配せずともきちんと役目を果たし、妾のもとに戻ってくれば元に戻してやるから安心せい)
「わかりました」
(あとは子供は子供らしく笑え。そうすれば奴らも更に警戒を解くだろうて)
「かげつにはそういうのわかりません。みこさまがおしえてくれなかったので」

ムスッとした花月に巫女はそう不貞腐れるなと告げる。
花月は自分があんなに悪口を思ってないとはいえ言ってしまったことに彼女が気づいているはずなのに責めてこない様子に少し戸惑いながらも報告を続ける。
美月以外のメンバーのことも、自分がわかる範囲で。
巫女は報告を聞き終わるとそうかそうかとなにやら思いついたように、にやりと笑った。

「みこさま?」
(なぁに、ただ捕らえるだけではつまらんと思ってな。少しばかり趣向を変えてみようかと思っただけよ)
「いまのかげつには、みこさまがなにいっているのかわかりません。こどものかげつにもわかるようにいってください」
(ほんとに貴様は子供のようにしてもその辛辣な態度は変わらないな)
「みこさま」
(あーあー、わかった。つまりだ。そんなに力がいらぬようなら、奪えばよいということだ)
「そういうことですか」
(ああ。その為にはそやつらを妾のもとへ連れてくる必要がある。花月、やってくれるな?)
「わかりました。かげつがかのじょたちをむきずでやしろにつれていきます」

いい返事だ、と笑うと巫女はその場から姿を消した。
花月はふぅ……とひと息つくと水晶を袖口に隠し洞窟の中へと戻る。

中に戻ると先程まで起きていた美月が眠っていた。
“無傷で社に連れて行く”
花月はその約束を果たすべく、洞窟の入り口に結界を張る為の札を貼り付けると邪のモノが入り込まないように念を込め結界を発生させる。
これで一晩は大丈夫なはずと確認すると寝ていた時と同様にエルラの腕の中に戻り眠りについた。
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