【GL】Fox Maiden-狐巫女の洗礼-
それからどのくらいの時間が経っただろう。
花月が巫女となったことで社の崩壊は止まった。
しかし、彼女が巫女になるまでの間にこの社にいた住人はほとんど残らず消えた。
たった一人、桜月を残して。
けれど桜月は社の崩壊の影響が消えずあの時のまま感情のない人形のような状態から変わらず、ただ花月の傍にいるだけ。
彼女の腕の中に抱かれた狐の姿をした巫女は今日も安らかに眠り続ける。
平和で穏やかな日常。
人間たちがたまに来るけれど力の代償を話すとそこまではと言って帰っていく。
これでいい。
これで、誰にも邪魔されずに過ごせる。
けれど花月はとても寂しかった。
隣に居る桜月は前みたいにやかましくしゃべってくれない。
腕の中の巫女……結月もただ眠るだけ。
非常に寂しい空間。
「桜月、どうしたらまた前みたいにしゃべってくれますか」
問い掛けても隣の桜月はうんともすんとも言わない。
ただ佇んでいるだけ。
はぁ……とため息をついているとこんにちはと誰かが入ってきた。
紫の髪に白衣、丸い眼鏡をかけたいかにも好青年といった感じの男。
誰ですか?と尋ねると失礼、と指を鳴らす。
すると彼の姿が白衣から紫色を主とした豪華な服へと変わり初めましてと挨拶をしてきた。
「私はセンチェルス。コーキセリアの新王です」
「コーキセリア……あの魔界ですか?」
「そうです。貴女がこの社の主ですね?」
「花月は花月といいます。この社の主。巫女です。それで? 何の用ですか? コーキセリアの新王」
「まどろっこしいのはなしにしましょう。花月。貴女を私たちの仲間に迎えたい」
「仲間?」
どういう事ですか?と尋ねるとセンチェルスと名乗った彼は端的に自分の目的を話す。
自分の愛する人が天界に囚われていること。
その人を救うために各属性の魔王を揃える必要があること。
そのためにここに来たとそう話した。
「貴女を光属性の魔王として迎えたい。天界に突入するために貴女の力が必要なんです」
「光の王……。花月を魔王にする、という事ですか?」
「はい」
「……お断りします。花月はここを離れるわけにはいきません」
「なぜ?」
「花月がここを離れれば結月様はともかくとして桜月は生きられません。だから花月はここを離れるわけにはいきません。貴方の大切な人を助けたいという気持ちはよくわかります。ですが……」
「なるほど。では、彼女を生かせられると言ったらどうしますか?」
「……!?」
どういう事ですかと驚いた様子で尋ねてくる花月にセンチェルスは自らの能力について、魔王について話す。
センチェルスは時空術師という時と空間を操ることのできる種族だという。
そして魔王は特殊な武器でしか死ねない存在だと。
魔王になればセンチェルスの術により、自分の時を分け与え、桜月を生かすことができると。
ついでに魔王が最大限の力を発揮するために必要な姫契約の事も話してくれた。
そのどれもが花月にとって魅力的な特典だった。
花月が巫女となったことで社の崩壊は止まった。
しかし、彼女が巫女になるまでの間にこの社にいた住人はほとんど残らず消えた。
たった一人、桜月を残して。
けれど桜月は社の崩壊の影響が消えずあの時のまま感情のない人形のような状態から変わらず、ただ花月の傍にいるだけ。
彼女の腕の中に抱かれた狐の姿をした巫女は今日も安らかに眠り続ける。
平和で穏やかな日常。
人間たちがたまに来るけれど力の代償を話すとそこまではと言って帰っていく。
これでいい。
これで、誰にも邪魔されずに過ごせる。
けれど花月はとても寂しかった。
隣に居る桜月は前みたいにやかましくしゃべってくれない。
腕の中の巫女……結月もただ眠るだけ。
非常に寂しい空間。
「桜月、どうしたらまた前みたいにしゃべってくれますか」
問い掛けても隣の桜月はうんともすんとも言わない。
ただ佇んでいるだけ。
はぁ……とため息をついているとこんにちはと誰かが入ってきた。
紫の髪に白衣、丸い眼鏡をかけたいかにも好青年といった感じの男。
誰ですか?と尋ねると失礼、と指を鳴らす。
すると彼の姿が白衣から紫色を主とした豪華な服へと変わり初めましてと挨拶をしてきた。
「私はセンチェルス。コーキセリアの新王です」
「コーキセリア……あの魔界ですか?」
「そうです。貴女がこの社の主ですね?」
「花月は花月といいます。この社の主。巫女です。それで? 何の用ですか? コーキセリアの新王」
「まどろっこしいのはなしにしましょう。花月。貴女を私たちの仲間に迎えたい」
「仲間?」
どういう事ですか?と尋ねるとセンチェルスと名乗った彼は端的に自分の目的を話す。
自分の愛する人が天界に囚われていること。
その人を救うために各属性の魔王を揃える必要があること。
そのためにここに来たとそう話した。
「貴女を光属性の魔王として迎えたい。天界に突入するために貴女の力が必要なんです」
「光の王……。花月を魔王にする、という事ですか?」
「はい」
「……お断りします。花月はここを離れるわけにはいきません」
「なぜ?」
「花月がここを離れれば結月様はともかくとして桜月は生きられません。だから花月はここを離れるわけにはいきません。貴方の大切な人を助けたいという気持ちはよくわかります。ですが……」
「なるほど。では、彼女を生かせられると言ったらどうしますか?」
「……!?」
どういう事ですかと驚いた様子で尋ねてくる花月にセンチェルスは自らの能力について、魔王について話す。
センチェルスは時空術師という時と空間を操ることのできる種族だという。
そして魔王は特殊な武器でしか死ねない存在だと。
魔王になればセンチェルスの術により、自分の時を分け与え、桜月を生かすことができると。
ついでに魔王が最大限の力を発揮するために必要な姫契約の事も話してくれた。
そのどれもが花月にとって魅力的な特典だった。
