【GL】Fox Maiden-狐巫女の洗礼-

それからどのくらいの時間が経っただろう。
鬼ごっこは美月以外の者は逃げ伸びてはいたがみんな社に戻ってくることもなく、奪った力は未だ花月が持っている水晶の中に残されたまま。
美月は巫女の代わりとして社で日々を過ごしいていた。
花月や桜月の手を借りながらなんとかその任務をこなす日々。
力を手に入れればその分自分の時間が削られるというのに皆、人ならざる力を求めて社に来る。
そして、都合が悪くなれば巫女を責めに来る。
うんざりするわねと美月は大広間のいつも巫女が座っていた場所にふんぞり返っていた。

「あの性悪巫女、よくこんなのに耐えられたわね……。あたしだったらぶっ飛ばしてるわ」
「美月達も同じことしてきてたじゃないですか」
「ええ、そうね。でもこんなに身勝手な奴ばっかりだと思わなかったのよ。言ってくるのあたしたちくらいかなって」
「とんだ勘違いですね」
「そうね」

二人で話していると巡回を終えた桜月が葉月と風月を連れて現れた。
風月は花月の姿を見るなり怯えて葉月の後ろに隠れてしまい、葉月もそんな風月に大丈夫大丈夫と声を掛けながら一緒に歩み寄ってくる。

「久しぶりだねー、花月ちゃん! 元気そうで何より! あ、えっと、美月ちゃん、だっけ? 今の巫女様。こんにちわ!」
「ええ、こんにちは。って、あたしのことなんで知ってるわけ? あたしが美月だってことは桜月と花月しか知らないはずなんだけど?」
「え? 桜月が嬉しそうにさっき話してくれたけど、秘密だったの?」
「えへへ~。葉月たちならいいかなぁって」
「桜月、あとで裏に来なさい。罰を受けてもらうわ」
「そんなぁ!」
「桜月、秘密をばらすからいけないんですよ」
「花月ちゃんまでー……」

がっくりと項垂れる桜月に花月は歩み寄ると帰ってきたらなでなでしてあげますとその頭をぽんぽんとする。

「花月ちゃん……」
「だからしっかり怒られてくるですよ、桜月」
「膝枕もして……」
「わかりました」
「それはともかくとして、巡回どうだったの?」
「あ、それはばっちし大丈夫でーす! 今日も平和な日常ですっ」
「そう。ならいいわ。花月、あたしは桜月と裏にいるからなにかあったら呼んでちょうだい」
「わかりました」

こっちに来なさいと美月に連れられ桜月はその場を後にする。
残された花月はふぅと一息ついた後、葉月たちに振り返り久しぶりの会話をする。
特に特別なわけでもない、他愛のない話。
最近、葉月は風月を連れて狩りにいく事が多いという。
お互い弓同士で相性がよく、森の中に入って狩りがてら自分たちの腕を磨いているらしい。

「風月ちゃんもなかなか腕がよくてねー、最近は5発中1発当たる様になったんだから―!」
「あまりうまくないのでは?」
「そんなことないよ! この前まで10発打っても当たらなかったんだからー」
「そうですか」
「あ、あ、あの……花月さん……あの……」
「なんですか? はっきり話してください。花月ははっきりしない子は嫌いです」
「あ、あの……その……ごめんなさい……、葉月ねえさま、取っちゃって……」

ごめんなさいと葉月の後ろで小さくなりながら謝る風月に花月は許しませんとはっきり告げ、まっすぐ彼女を見つめる。

「花月の葉月を取ったの絶対に許しません。葉月も、勝手に花月から離れたのも許しません。ですが、花月は大人なので他愛のない会話くらいならします」
「花月ちゃん……」
「だから花月は桜月を大事にします。葉月には渡しません。絶対に。それに、桜月は今、花月に夢中ですから。花月なしでは生きられない体にされてますから」
「ちょ、ちょっと……! 桜月になにしたの!? 花月ちゃん!?」
「内緒です」

内緒と妖艶に笑う花月に葉月は背筋が凍るような感覚を覚え、無意識に風月を庇うように一歩後ずさっていた。
そんな葉月に花月はだから桜月は渡しませんと告げると自室に戻っていった。

その夜。

「花月ちゃーん!」

やっと帰ってきた桜月を出迎え、花月はよく頑張りましたとその頭を撫でた。
よしよしと頭を撫でた後、赤い座布団に座り、どうぞと両手を広げると桜月がやったーと飛び込んできて、頭を乗せてくる。
頭を撫でながらよく頑張りましたと優しく声を掛ける。
桜月は頑張ったよー!と涙ながらに美月にされたことを話す。

「これに懲りてもう秘密はばらさないことですね」
「うん……」
「そうですね……。今度ばらしたら花月が知っている桜月の秘密を葉月にばらします」
「え!?」
「桜月が毎晩、花月に何をされているのか、事細かく葉月に話します」
「や、やめて……! 花月ちゃんの鬼ー!」
「だから黙っておくんですよ」

黙るから!と身を起こし涙を溜めながら訴えてくる桜月にいい子ですねと頭を撫で、そのまま頬に手を添えると優しくキスをする。
ちゅっちゅっとキスをすると唇を離し、妖艶に笑うとどうして欲しいですか?と桜月に尋ねる。

「頑張った桜月に花月がご褒美をあげます」
「花月ちゃぁん……」
「花月は桜月の主様ですから。下僕にご褒美をあげるのも花月の仕事です。さぁ、言ってください。桜月。花月にどうしてほしいですか?」
「かげつちゃん、ほし、いよぉ……、かげつちゃん……」
「いいですよ、いつものように“してあげます”」

にやりと笑い花月は桜月を立ち上がらせると布団に投げるとその上に乗りいつものようにしてあげますよと耳元で囁くとその服を剥ぎ取りその行為を始めた。
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