【GL】Fox Maiden-狐巫女の洗礼-
──翌日。
「花月ちゃん……! こんなところにいた……! もう、急にいなくなるからびっくりしたじゃん!」
広間にある大きな金の砂時計の前にいた花月に駆け寄ってくると息を整え一緒にそれを見上げる桜月。
昨夜のことなどあまり気にしていない様子の花月に桜月は少しホッとしながらこれは?と尋ねる。
「この砂が落ちきるまで逃げ切れたら美月たちの勝ち、捕まれば巫女様の勝ちです」
「そっかー。じゃああと少しでその美月って子が勝っちゃうんだね」
「それはないです」
「え?」
もうすぐ来ますからと一息つくと社の入り口が騒がしくなる。
なに!?と驚く桜月に来たみたいですねと入り口に振り返った花月の目に入ったのは狐面の数人に捕らえられた美月で。
他の人がいないところを見ると単独行動中に捕まったようだ。
「巫女様は!?」
「自室にいます。花月が連れていくので、名札をください。巫女様に報告します」
「あ、ああ。頼んだよ。花月」
ここに、と白い巾着袋を取り出すと狐面の人たちが自分の名前が刻まれた木札を入れていき、美月を縛っている縄を花月に手渡す。
花月は巾着袋の中の木札の枚数と今のここにいる狐面の人たちの人数を数えあっていることを確認し、行きますよと縄を引くも美月はその場から動かなくて。
負けたことが悔しいのか、なにか別のことで抵抗しているのか彼女にはわからずいいから立ってくださいと言っても微動だにしない。
困った彼女は桜月を傍に呼び運んでくださいと縄を手渡した。
「桜月なら運べます」
「あー、抱えて運べってことね。わかった!」
はいはいと桜月は美月の体を小脇に抱えると先に巫女様のところに向かい、その背をたかたかとついていく。
その道中。
「あんた、ここ出る気ないでしょ」
桜月に抱えられたまま美月は力なくそう尋ねてきて、その問いにそうですねと迷うことなく彼女は答える。
ここが自分の居場所だからと繰り返し、花月は後ろをついていく。
「エルラはあんたを本気でここから連れ出そうとしてるわ。なんとも思わないわけ?」
「思いません。だってあの時、あーでも言わなきゃエルラお姉ちゃんは動こうとしませんでしたから」
「ねぇ、花月ちゃん! あたしも桜月お姉ちゃんって読んでほしいな!」
「なんですか、桜月」
「うう……なんで……」
えーんと泣き真似をする桜月にため息をつきながら花月は美月と淡々と会話を続ける。
美月が捕まった時点でこの賭けは巫女の勝ちだということ。
貴女たちには巫女は倒せないと。
そうはっきり告げて。
美月は悔しそうな顔をしてそれっきり黙ってしまった。
「さ、着いたよ!」
「覚悟してくるといいですよ」
そう言い残し美月を巫女の部屋に入れ、木札の入った袋を巫女へ手渡すと二人は部屋をあとにした。
「花月ちゃん……! こんなところにいた……! もう、急にいなくなるからびっくりしたじゃん!」
広間にある大きな金の砂時計の前にいた花月に駆け寄ってくると息を整え一緒にそれを見上げる桜月。
昨夜のことなどあまり気にしていない様子の花月に桜月は少しホッとしながらこれは?と尋ねる。
「この砂が落ちきるまで逃げ切れたら美月たちの勝ち、捕まれば巫女様の勝ちです」
「そっかー。じゃああと少しでその美月って子が勝っちゃうんだね」
「それはないです」
「え?」
もうすぐ来ますからと一息つくと社の入り口が騒がしくなる。
なに!?と驚く桜月に来たみたいですねと入り口に振り返った花月の目に入ったのは狐面の数人に捕らえられた美月で。
他の人がいないところを見ると単独行動中に捕まったようだ。
「巫女様は!?」
「自室にいます。花月が連れていくので、名札をください。巫女様に報告します」
「あ、ああ。頼んだよ。花月」
ここに、と白い巾着袋を取り出すと狐面の人たちが自分の名前が刻まれた木札を入れていき、美月を縛っている縄を花月に手渡す。
花月は巾着袋の中の木札の枚数と今のここにいる狐面の人たちの人数を数えあっていることを確認し、行きますよと縄を引くも美月はその場から動かなくて。
負けたことが悔しいのか、なにか別のことで抵抗しているのか彼女にはわからずいいから立ってくださいと言っても微動だにしない。
困った彼女は桜月を傍に呼び運んでくださいと縄を手渡した。
「桜月なら運べます」
「あー、抱えて運べってことね。わかった!」
はいはいと桜月は美月の体を小脇に抱えると先に巫女様のところに向かい、その背をたかたかとついていく。
その道中。
「あんた、ここ出る気ないでしょ」
桜月に抱えられたまま美月は力なくそう尋ねてきて、その問いにそうですねと迷うことなく彼女は答える。
ここが自分の居場所だからと繰り返し、花月は後ろをついていく。
「エルラはあんたを本気でここから連れ出そうとしてるわ。なんとも思わないわけ?」
「思いません。だってあの時、あーでも言わなきゃエルラお姉ちゃんは動こうとしませんでしたから」
「ねぇ、花月ちゃん! あたしも桜月お姉ちゃんって読んでほしいな!」
「なんですか、桜月」
「うう……なんで……」
えーんと泣き真似をする桜月にため息をつきながら花月は美月と淡々と会話を続ける。
美月が捕まった時点でこの賭けは巫女の勝ちだということ。
貴女たちには巫女は倒せないと。
そうはっきり告げて。
美月は悔しそうな顔をしてそれっきり黙ってしまった。
「さ、着いたよ!」
「覚悟してくるといいですよ」
そう言い残し美月を巫女の部屋に入れ、木札の入った袋を巫女へ手渡すと二人は部屋をあとにした。