【GL】Fox Maiden-狐巫女の洗礼-
巫女と美月たちの鬼ごっこが始まって数週間が経った。
花月は社の中でいつもと変わらない毎日を送る。
力を求めてやってきた人間を巫女のもとへ連れていき、与えられた者を送り返す。
時折巫女の目に適った者も居たりしてその人は社内に迎えられていたりもして。
桜月と葉月は次第にその人のお世話をすることになり花月の世話係から外されることとなった。
「なんで桜月と葉月は花月から外されるのですか」
「なんでって、そなたはもう世話係などいらぬだろう?」
「納得いきません」
「いくもいかぬもこれは決定事項だ」
「いやです。桜月も葉月も花月のです」
「わからず屋だな。よいではないか。妾がおるだろう?」
「そう、ですが……」
「ならこの話は終いだ。やることがないのなら美月たちの動向でも探ってこい。バレぬようにな」
「わかりました」
ムスッとしたまま花月は身を翻しさっさと部屋を出ていき、巫女に言われたとおりに行動を開始する。
長い廊下を歩き社を出、鳥居を潜る。
すると前から楽しげに話しながら戻ってくる桜月、葉月、そして新入りの娘と出会した。
花月はその光景を見ると自分を落ち着けるために一つ深呼吸をする。
今の花月には巫女に言われた大切な任務がある。
美月たちを監視する大切な任務。
まずはそれを遂行しなくてはと石畳の階段を一段一段降りていった。
「あ! 花月ちゃん! これからお仕事?」
「そうです。桜月たちは見回りからの帰りですか?」
「うん!風月 ちゃんも連れて行って来たんだー! ねー?」
「はいっ! ふづきは桜月ねえさまと葉月ねえさまといっしょにいろいろ見れてとっても楽しかったです!」
「……そうですか」
元気よくニコニコ笑う緑色の娘。
その姿が花月にはとても眩しくて、羨ましくて。
──妬ましく感じた。
その場所は花月のものなのに。
その場所は花月がいるべき場所なのに。
桜月と葉月の隣にいるのは花月だけでいいのに。
ぎりっと歯を食いしばるけれど、生まれた感情をうまく理解できない花月は懐から小刀を取り出すとそのまま躊躇うことなくその娘に向けて刺しこむ。
けれど間一髪のところで葉月が風月を抱え避けられてしまう。
二人は花月の突然の行動に驚くほかなく、どうしたの!?と戸惑いを隠せない様子だった。
「花月ちゃん! 風月ちゃんになにするの!?」
「……さいっ……」
「花月ちゃん、きっとなにか理由があるんだよね? ね? あたしに教えてよ、ね?」
「……るさい……っ! 五月蝿い五月蝿い五月蝿い!! おまえなんか!! おまえなんか!!」
死んじゃえ!!と叫びながら花月は力を解放し薙刀を手に風月に襲いかかり、まずいと思った桜月が咄嗟に自身の武器で応戦する。
「葉月! 風月ちゃんを安全なとこに連れてって!」
「わ、わかった! 桜月も気をつけて!」
「大丈夫!」
桜月に言われるまま怯える風月を抱きかかえ葉月がこの場を去ろうとする。
けれどそれを見過ごさない花月はその二人の身体を青い宝珠のついた数珠に力を込めて拘束し、逃げられないようにしてしまう。
「花月ちゃん……! どうしたの!? 落ち着いて、話しをしようよ……!」
「五月蝿い!! 五月蝿い!!」
「花月ちゃん……」
五月蝿い五月蝿いと叫びながら無造作に薙刀を振るう様はまるで癇癪を起こした子供さながらで。
桜月は必死に受け流していくが、力の差は歴然としており、次第に追い詰められていく。
そうして追い詰めた桜月の薙刀をその手から弾き飛ばし無力化させると次こそと風月にそれを振り上げる。
「おまえさえ、おまえさえいなければ!!」
「こ、怖いです……! 葉月ねえさま! 助けて……!」
「葉月も桜月も花月のです!! おまえなんかに、渡してたまるか!!」
「花月ちゃん……!」
薙刀が振り下ろされる瞬間、桜月が咄嗟に花月の前に回るとその身をぎゅっと抱きしめ、ごめんねと小さく呟いた。
花月は薙刀を振り上げたまま振り下ろすこともできずただじっとしていて、溢れてくる感情のままそれを地面に落とすと声を上げて泣きだす。
今までの花月からは考えられないほど、大きな声を張り上げて、まるで幼い子供のように泣きじゃくっていていて、そんな姿を知らない桜月と葉月は驚いてその様子を見ていて。
「さつきもはづきもかげつのそばにずっといてくれるっていってくれたのに!! なんでかげつからはなれるですか!! かげつをひとりぼっちにするですか!! 」
「寂しかったんだね、花月ちゃん。ごめんね……。ごめんね花月ちゃん……」
「さつきもはづきもかげつのだいじなのにっ!! なんでっ!! なんでですかっ!!」
「うんうん、そうだね。ごめん……。あたしたち、巫女様に風月ちゃんのお世話を頼まれて、花月ちゃんのこと、一人にしちゃったんだね。ごめんね」
「う、ぁああああああーーっ!! ばかぁっ! ばかーっ!! かげつからはなれるなですーっ!!」
「ごめん、ごめんね……」
よしよしと泣きじゃくり、叫ぶ花月に桜月はごめんねごめんねと繰り返しながら優しく宥めるように頭を撫でていて。
風月を守るようにしていた葉月もそんな花月に歩み寄りごめんねと背中を撫でて泣いていた。
花月は社の中でいつもと変わらない毎日を送る。
力を求めてやってきた人間を巫女のもとへ連れていき、与えられた者を送り返す。
時折巫女の目に適った者も居たりしてその人は社内に迎えられていたりもして。
桜月と葉月は次第にその人のお世話をすることになり花月の世話係から外されることとなった。
「なんで桜月と葉月は花月から外されるのですか」
「なんでって、そなたはもう世話係などいらぬだろう?」
「納得いきません」
「いくもいかぬもこれは決定事項だ」
「いやです。桜月も葉月も花月のです」
「わからず屋だな。よいではないか。妾がおるだろう?」
「そう、ですが……」
「ならこの話は終いだ。やることがないのなら美月たちの動向でも探ってこい。バレぬようにな」
「わかりました」
ムスッとしたまま花月は身を翻しさっさと部屋を出ていき、巫女に言われたとおりに行動を開始する。
長い廊下を歩き社を出、鳥居を潜る。
すると前から楽しげに話しながら戻ってくる桜月、葉月、そして新入りの娘と出会した。
花月はその光景を見ると自分を落ち着けるために一つ深呼吸をする。
今の花月には巫女に言われた大切な任務がある。
美月たちを監視する大切な任務。
まずはそれを遂行しなくてはと石畳の階段を一段一段降りていった。
「あ! 花月ちゃん! これからお仕事?」
「そうです。桜月たちは見回りからの帰りですか?」
「うん!
「はいっ! ふづきは桜月ねえさまと葉月ねえさまといっしょにいろいろ見れてとっても楽しかったです!」
「……そうですか」
元気よくニコニコ笑う緑色の娘。
その姿が花月にはとても眩しくて、羨ましくて。
──妬ましく感じた。
その場所は花月のものなのに。
その場所は花月がいるべき場所なのに。
桜月と葉月の隣にいるのは花月だけでいいのに。
ぎりっと歯を食いしばるけれど、生まれた感情をうまく理解できない花月は懐から小刀を取り出すとそのまま躊躇うことなくその娘に向けて刺しこむ。
けれど間一髪のところで葉月が風月を抱え避けられてしまう。
二人は花月の突然の行動に驚くほかなく、どうしたの!?と戸惑いを隠せない様子だった。
「花月ちゃん! 風月ちゃんになにするの!?」
「……さいっ……」
「花月ちゃん、きっとなにか理由があるんだよね? ね? あたしに教えてよ、ね?」
「……るさい……っ! 五月蝿い五月蝿い五月蝿い!! おまえなんか!! おまえなんか!!」
死んじゃえ!!と叫びながら花月は力を解放し薙刀を手に風月に襲いかかり、まずいと思った桜月が咄嗟に自身の武器で応戦する。
「葉月! 風月ちゃんを安全なとこに連れてって!」
「わ、わかった! 桜月も気をつけて!」
「大丈夫!」
桜月に言われるまま怯える風月を抱きかかえ葉月がこの場を去ろうとする。
けれどそれを見過ごさない花月はその二人の身体を青い宝珠のついた数珠に力を込めて拘束し、逃げられないようにしてしまう。
「花月ちゃん……! どうしたの!? 落ち着いて、話しをしようよ……!」
「五月蝿い!! 五月蝿い!!」
「花月ちゃん……」
五月蝿い五月蝿いと叫びながら無造作に薙刀を振るう様はまるで癇癪を起こした子供さながらで。
桜月は必死に受け流していくが、力の差は歴然としており、次第に追い詰められていく。
そうして追い詰めた桜月の薙刀をその手から弾き飛ばし無力化させると次こそと風月にそれを振り上げる。
「おまえさえ、おまえさえいなければ!!」
「こ、怖いです……! 葉月ねえさま! 助けて……!」
「葉月も桜月も花月のです!! おまえなんかに、渡してたまるか!!」
「花月ちゃん……!」
薙刀が振り下ろされる瞬間、桜月が咄嗟に花月の前に回るとその身をぎゅっと抱きしめ、ごめんねと小さく呟いた。
花月は薙刀を振り上げたまま振り下ろすこともできずただじっとしていて、溢れてくる感情のままそれを地面に落とすと声を上げて泣きだす。
今までの花月からは考えられないほど、大きな声を張り上げて、まるで幼い子供のように泣きじゃくっていていて、そんな姿を知らない桜月と葉月は驚いてその様子を見ていて。
「さつきもはづきもかげつのそばにずっといてくれるっていってくれたのに!! なんでかげつからはなれるですか!! かげつをひとりぼっちにするですか!! 」
「寂しかったんだね、花月ちゃん。ごめんね……。ごめんね花月ちゃん……」
「さつきもはづきもかげつのだいじなのにっ!! なんでっ!! なんでですかっ!!」
「うんうん、そうだね。ごめん……。あたしたち、巫女様に風月ちゃんのお世話を頼まれて、花月ちゃんのこと、一人にしちゃったんだね。ごめんね」
「う、ぁああああああーーっ!! ばかぁっ! ばかーっ!! かげつからはなれるなですーっ!!」
「ごめん、ごめんね……」
よしよしと泣きじゃくり、叫ぶ花月に桜月はごめんねごめんねと繰り返しながら優しく宥めるように頭を撫でていて。
風月を守るようにしていた葉月もそんな花月に歩み寄りごめんねと背中を撫でて泣いていた。