【GL】Fox Maiden-狐巫女の洗礼-

部屋に入るといつものようにこちらに背を向けて座っている巫女がいた。

「巫女様」
「……? あー、来たか。こっちにくるとよい、花月」
「はい」

静かに扉を開け言われた通りに隣にちょこんと座り込む。
巫女は大きな水晶の中を覗いていて、何が見えるのですか?と問いかけると見るか?といたずらっほく笑いかけてくる。
花月はそれならと水晶の中を覗き込む。
そこには人が写っていて、首を傾げていると仲が良さそうだろう?と目を細める巫女。

「彼女たちは?」
「なぁに、そのうちわかるさ。さて、花月。そろそろ妾の加護を受けても良い頃合いだと思ってな。覚悟はよいな?」
「よくわかりませんが、花月は何をすればいいですか?」
「何もせずとも良い。そなたは妾のされるがままになっていればな」

そう言って巫女は花月の手を引き後ろに敷かれていた布団の上に押し倒す。
突然の出来事に少し驚くも花月はじっと巫女を見ていて、これからなにをされるのかよくわかっていないようで。
そんな彼女に巫女はどんな反応を見せてくれるか楽しみだなとにやりと笑い、親指で小さな唇を撫でるとそのまま自らの唇を重ねた。
突然のことに驚きながら花月はとくに抗うこともなく巫女にされるがままになった。

──次の日。

「……」
「またいつものムスッと顔に戻ってしまったなぁ? 」
「幼児虐待で訴えます。巫女様」
「言っておくが妾は人間の世界では裁けんぞ? 人間なんぞより高尚な身分だからな」

朝を迎えた花月はいつもの無表情に戻っていて。
けれど巫女にされた事に酷く腹を立てているようでじーっと彼女を睨みつけていた。
巫女は余裕そうに笑いそう怒るなと花月の頭をぽんぽんと撫でた。

「これで汝にも凄まじい力が生まれるはずだぞ。妾に仕えるため、使いこなしてみせよ、花月」
「幼女性虐待をする巫女様にですか? 花月は知ってます。幼い女児にそのような感情を向ける人のことをロリコンというそうです」
「妾はそんなものではないぞ。まぁとりあえずいいからどんな力か見せてみよ」

まずは立って、と言われ花月は不服そうな顔をしながら立ち上がる。
右手を前へと言われ、言われた通りにすると巫女にこう唱えろと教えられる。

“巫女使い花月の名のもと顕現せよ”と。

花月はよくわからないまま言われた通りにその言葉を唱えた。
すると彼女の周りを青い花びらが舞い、突風とともにその枚数を増やし、花月を姿をすっぽりと隠してしまう。
驚く花月の目の前にはネモフィラの花と青いリボンがついた青い柄の薙刀で。
それを手にすると花びらが散っていき風も収まった。

「ネモフィラ、か。しかし薙刀とは、そなたの身の丈に合わんものが出てきたな」
「これはどうやって使うものですか? 花月はこんなもの見たことがありません」
「ふむ……薙刀ならたしか桜月が使えたはずだ。聞いてみるといい」
「わかりました」
「そなたの花はネモフィラ。可憐なそなたにはぴったりだな。いずれその能力の使い方も教えてやるからまずはその長物を使えるようになるといい」
「わかりました。桜月のところに行ってきます」
「あー、使う時以外は消せよ。社が壊れてしまう」
「消し方がわかりません」

手を離せばよいと言われ花月は言われた通りに薙刀から手を離す。
すると青い花びらと共に薙刀は跡形もなく消え去った。

「消えました」
「見ればわかるぞ」
「巫女様、花月は桜月のところに行けばいいですか?」
「そうだな」
「わかりました」
「花月」
「はい、なんでしょうか?」

巫女に言われたとおり桜月のところに行こうとした花月は突然呼び止められて巫女の方に向き直る。
巫女はそんな花月の様子に苦笑しそろそろ自分の意思を持ったらどうだ?と提案する。
けれどそれがなんのことかわからない花月はただ首を傾げるだけで。

「そなたは自分でこーしたい、あーしたいという意思はないのか?」
「花月は巫女様に拾われ、救われました。だから巫女様が好きなように花月を使えばいいと思います」
「それでは人形と同じではないか?」
「では花月にどうしろと? 花月はわかりません。巫女様の質問の意図が」
「あー……そうだったな。そなたはそういうやつだ。なら妾をもっと敬ったらどうだ?」
「敬ってますが?」
「その態度がか?」
「はい。巫女様のことを心から尊敬してます。ロリコンですけど」
「その一言! その一言だ! そなたは一言多いんだ!」
「花月は本当の事を言っただけです」

なにも悪気のない花月に巫女はもうよいと肩を竦めさっさといけと部屋から追い出した。
一体何だったんだろうかと思いながら花月は桜月のもとへと向かう。
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