【ルミ敵堕ち編】絶望の果てに、世界で一番甘い奇跡を
後遺症の陰りが完全に消え去ったレイストール城には、以前にも増して凄まじい風が吹き荒れていた。
原因は他でもない、完全復活を遂げた天才軍師、アルヴィーノである。
魔力回路のエラーも後遺症も万に一つもない、文字通り「パーフェクト」な状態に戻った彼は、軍事遠征に出るや否や、王国を脅かしていた反乱分子の拠点を瞬時に特定。
その圧倒的なチート級の魔力をもって、文字通り「影も形もない更地」へと変えて王都へ帰還したのだった。
「――ただいま戻りました、兄上。遠征の報告書です」
新王の執務室の扉が勢いよく開かれ、寸分の乱れもない漆黒の軍服を纏ったアルヴィーノが歩み寄ってくる。
彼は手際よく数枚の報告書をアルフレッドの机に置くと、続けて、その数倍の厚みがある別の書類の山を容赦なくドスンと隣に積み上げた。
「あぁ、お帰りアルヴィーノ。無事で何よりだ……って、ん? この凄まじい量の書類は一体何だい?」
首を傾げるアルフレッドに、アルヴィーノは表情一つ変えずに冷徹に言い放った。
「敵拠点の完全消滅に伴う、周辺土地の戦後処理、および戦利品の接収・分配に関する決済書類です。更地にしたあとの戦後統治、法的手続きや事務作業は私の管轄外ですので、すべて『王(あなた)』にお任せします。速やかにサインを」
「は……? ちょっと待ちたまえ、更地にした後の処理を、これ全部僕に丸投げしていくのかい!?」
アルフレッドは思わず碧眼を見開き、ひっくり返りそうな声を出した。
いくら体調が万全になったからといって、遠征から帰ってきた直後の弟に、これほどの超弩級の公務を押し付けられるとは思っていなかったのだ。
「お前ってやつは、本当に……!!」
アルフレッドがいつもの調子で声を荒らげて抗議する。
しかし、アルヴィーノは腕を組んだまま、片眉をピクリと上げて見下ろすと、いつも通り「何か問題でも?」とでも言いたげな、至極当然といった傲慢な顔をして見せた。
「何か不満でも? 私は脅威をこの世界から完全に排除して差し上げたのです。これ以上の効率的な軍事行動がどこにありますか。残った雑務を処理することこそ、内政を司る王の役目でしょう。……では、私はルミが首を長くして待っていますので、これで失礼します」
「あ、これ、アルヴィーノ! まだ話は終わって――」
アルフレッドの制止の声など鼓膜にも残っていないかのように、アルヴィーノはフイッと身を翻すと、漆黒のマントを優雅に揺らして、風のように執務室から退散していった。
バタン、と無情にも閉まる扉。
「もう……っ!! 本当にあの男は、少しは兄を敬うとか、遠慮するという言葉を知らないのかい!?」
アルフレッドは大きな溜息をつきながら、脱力したようにドサリと椅子の背もたれに身体を預けた。
目の前には、未だかつてないほど綺麗に「更地」にされた戦地の報告書と、山のような事務書類。
だが――。
「……はは、本当に、困った弟だよ」
書類の束を見つめながら、アルフレッドの唇からは、怒りではなく自然と温かい苦笑が漏れ出していた。
つい数日前までは、誰もが禁術の代償に怯え、後遺症の痛みに耐え、静かな緊張感が城を包んでいた。
けれど今、目の前にいるアルヴィーノは、一切の容赦もなく、傲慢で、冷酷で、そして驚くほど素直に最愛の少年の元へと帰っていった。
これ以上ないほど「通常運転」に戻った、いつものアルヴィーノ。
その理不尽なまでのマイペースさと圧倒的な強さに、アルフレッドは呆れ果てながらも、胸の奥で、確かな、そしてこの上ない「安心感」を深く深く覚えているのだった。
原因は他でもない、完全復活を遂げた天才軍師、アルヴィーノである。
魔力回路のエラーも後遺症も万に一つもない、文字通り「パーフェクト」な状態に戻った彼は、軍事遠征に出るや否や、王国を脅かしていた反乱分子の拠点を瞬時に特定。
その圧倒的なチート級の魔力をもって、文字通り「影も形もない更地」へと変えて王都へ帰還したのだった。
「――ただいま戻りました、兄上。遠征の報告書です」
新王の執務室の扉が勢いよく開かれ、寸分の乱れもない漆黒の軍服を纏ったアルヴィーノが歩み寄ってくる。
彼は手際よく数枚の報告書をアルフレッドの机に置くと、続けて、その数倍の厚みがある別の書類の山を容赦なくドスンと隣に積み上げた。
「あぁ、お帰りアルヴィーノ。無事で何よりだ……って、ん? この凄まじい量の書類は一体何だい?」
首を傾げるアルフレッドに、アルヴィーノは表情一つ変えずに冷徹に言い放った。
「敵拠点の完全消滅に伴う、周辺土地の戦後処理、および戦利品の接収・分配に関する決済書類です。更地にしたあとの戦後統治、法的手続きや事務作業は私の管轄外ですので、すべて『王(あなた)』にお任せします。速やかにサインを」
「は……? ちょっと待ちたまえ、更地にした後の処理を、これ全部僕に丸投げしていくのかい!?」
アルフレッドは思わず碧眼を見開き、ひっくり返りそうな声を出した。
いくら体調が万全になったからといって、遠征から帰ってきた直後の弟に、これほどの超弩級の公務を押し付けられるとは思っていなかったのだ。
「お前ってやつは、本当に……!!」
アルフレッドがいつもの調子で声を荒らげて抗議する。
しかし、アルヴィーノは腕を組んだまま、片眉をピクリと上げて見下ろすと、いつも通り「何か問題でも?」とでも言いたげな、至極当然といった傲慢な顔をして見せた。
「何か不満でも? 私は脅威をこの世界から完全に排除して差し上げたのです。これ以上の効率的な軍事行動がどこにありますか。残った雑務を処理することこそ、内政を司る王の役目でしょう。……では、私はルミが首を長くして待っていますので、これで失礼します」
「あ、これ、アルヴィーノ! まだ話は終わって――」
アルフレッドの制止の声など鼓膜にも残っていないかのように、アルヴィーノはフイッと身を翻すと、漆黒のマントを優雅に揺らして、風のように執務室から退散していった。
バタン、と無情にも閉まる扉。
「もう……っ!! 本当にあの男は、少しは兄を敬うとか、遠慮するという言葉を知らないのかい!?」
アルフレッドは大きな溜息をつきながら、脱力したようにドサリと椅子の背もたれに身体を預けた。
目の前には、未だかつてないほど綺麗に「更地」にされた戦地の報告書と、山のような事務書類。
だが――。
「……はは、本当に、困った弟だよ」
書類の束を見つめながら、アルフレッドの唇からは、怒りではなく自然と温かい苦笑が漏れ出していた。
つい数日前までは、誰もが禁術の代償に怯え、後遺症の痛みに耐え、静かな緊張感が城を包んでいた。
けれど今、目の前にいるアルヴィーノは、一切の容赦もなく、傲慢で、冷酷で、そして驚くほど素直に最愛の少年の元へと帰っていった。
これ以上ないほど「通常運転」に戻った、いつものアルヴィーノ。
その理不尽なまでのマイペースさと圧倒的な強さに、アルフレッドは呆れ果てながらも、胸の奥で、確かな、そしてこの上ない「安心感」を深く深く覚えているのだった。