恋を売る夜に、ただひとつの愛を
「リリィちゃん、今日も紫苑のところ行こうよ〜! 俺がまたお金出してあげるからさ!」
あの日以来、店にやってくるルミから何度もそんな風に無邪気に誘われたリリィだったが、彼女はそのたびに胸元の四葉のクローバーをそっと握りしめ、申し訳なさそうに、けれどきっぱりと頭を下げて断っていた。
「ごめんなさい、ルミ様。私、レオさんと『もう行かない』って固くお約束したんです。だから……絶対に行けません」
「え〜、チェッ。蓮くんとの約束なら仕方ないかぁ……」
ルミがどんなにおねだりしても、どれほど豪華なキラキラを提案しても、リリィがその約束を破ることは一度としてなかった。
そして、その報告をルミやアルヴィーノから遠回しに聞かされたレオは、胸の奥で静かに深い安堵の息をついていた。
(……本当に、真面目で素直な人だ)
自分がどれほど泥に塗れた夜の世界で生きようとも、彼女だけはあたたかく清らかな昼の光の中にいてくれる。
自分の言葉を信じ、大切に守り続けてくれているという事実だけで、レオの胸の奥にはどんな高級酒でも得られない満足感が満ちていた。
「神城 蓮」としての日常は、相変わらず激動と虚飾に満ちていた。
締め日が来れば血を吐くような売上バトルを繰り広げ、太客の姫たちには「君が一番だ」と甘い毒を注ぎ込み、連日連夜グラスを干してはコールに身を投じる。
紫苑の背中は依然として遠く、No.1奪還への道のりは険しい。
けれど、どれだけ夜の街ですり減り、疲れ果てようとも。
「いらっしゃいませ、レオさん!」
ドアベルを鳴らせば、変わらぬ笑顔で出迎えてくれるあの小さな喫茶店がある。
自分が贈ったクローバーのネックレスを胸に光らせ、いつものブレンドコーヒーを運んでくれる彼女がいる。
自分を「神城 蓮」ではなく、ただの「レオ」として受け入れてくれる唯一の居場所を守り抜いた満足感を胸に、レオは今夜も白スーツの襟を正し、眩いネオンが待つ歌舞伎町のフロアへと優雅に足を踏み出していくのだった。
あの日以来、店にやってくるルミから何度もそんな風に無邪気に誘われたリリィだったが、彼女はそのたびに胸元の四葉のクローバーをそっと握りしめ、申し訳なさそうに、けれどきっぱりと頭を下げて断っていた。
「ごめんなさい、ルミ様。私、レオさんと『もう行かない』って固くお約束したんです。だから……絶対に行けません」
「え〜、チェッ。蓮くんとの約束なら仕方ないかぁ……」
ルミがどんなにおねだりしても、どれほど豪華なキラキラを提案しても、リリィがその約束を破ることは一度としてなかった。
そして、その報告をルミやアルヴィーノから遠回しに聞かされたレオは、胸の奥で静かに深い安堵の息をついていた。
(……本当に、真面目で素直な人だ)
自分がどれほど泥に塗れた夜の世界で生きようとも、彼女だけはあたたかく清らかな昼の光の中にいてくれる。
自分の言葉を信じ、大切に守り続けてくれているという事実だけで、レオの胸の奥にはどんな高級酒でも得られない満足感が満ちていた。
「神城 蓮」としての日常は、相変わらず激動と虚飾に満ちていた。
締め日が来れば血を吐くような売上バトルを繰り広げ、太客の姫たちには「君が一番だ」と甘い毒を注ぎ込み、連日連夜グラスを干してはコールに身を投じる。
紫苑の背中は依然として遠く、No.1奪還への道のりは険しい。
けれど、どれだけ夜の街ですり減り、疲れ果てようとも。
「いらっしゃいませ、レオさん!」
ドアベルを鳴らせば、変わらぬ笑顔で出迎えてくれるあの小さな喫茶店がある。
自分が贈ったクローバーのネックレスを胸に光らせ、いつものブレンドコーヒーを運んでくれる彼女がいる。
自分を「神城 蓮」ではなく、ただの「レオ」として受け入れてくれる唯一の居場所を守り抜いた満足感を胸に、レオは今夜も白スーツの襟を正し、眩いネオンが待つ歌舞伎町のフロアへと優雅に足を踏み出していくのだった。