氷の騎士に、白百合の恋を

一方、ところ変わって王と王妃の私室内。
温かな木もれ日のような灯りが満ちる室内で、リリアーヌは先ほど回廊で起きた出来事を
、目を輝かせながらエルザへ報告していた。
「本当に凄かったのですよ、お母様! あんなにたくさんいた虫さんたちを、少しも痛がらせずに、あっという間に追い払ってくださって……!」

先ほどまでの涙目はどこへやら、リリアーヌは胸の前で両手をギュッと握りしめ、興奮冷めやらぬ様子で言葉を重ねる。

「あの子は、どなたなのですか? 小さくて可愛らしいのに、すごく綺麗で……隙がなくて、とってもかっこいい方でした!」

純粋な憧れとときめきを隠そうともしない娘の言葉に、エルザは優しく頬を緩め、その黄金色の髪を撫でていた。
その時、重厚な部屋の扉が静かに開いた。

「ふぅ……ようやく今日の執務が終わったよ」

疲労感を滲ませながらも、柔らかい笑みを浮かべて入ってきたのは、国王アルフレッドであった。
その姿を目にした瞬間、リリアーヌの顔がパッと華やいだ。

「お父様!」

リリアーヌは嬉しそうに声を上げると、パタパタと可憐な足音を響かせてアルフレッドのもとへ駆け寄った。
アルフレッドは疲れた顔を一瞬で破顔させ、駆け寄ってきた愛娘を優しく受け止める。

「お帰りなさいませ、お父様! あのね、お聞きください! さっき庭園で、とってもかっこいい方にお助けいただいたのです!」

抱きつきながら、先ほどエルザに語った興奮そのままに繰り返し話し始めるリリアーヌ。
洗練された軍装を纏い、無表情でありながら自分を部屋まで送り届けてくれた少女の姿――それが弟アルヴィーノの引き取った『セレフィア』のことだと察したアルフレッドは、隣で微笑むエルザと視線を交わし、どこか感慨深そうに娘の頭を撫でるのだった。
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