氷の騎士に、白百合の恋を
それから数日が過ぎた、ある日のこと。
セレフィアはアルヴィーノの後ろに静かに従い、演習場へと続く長い回廊を歩いていた。
規則正しい足音だけが静寂に響く中、視界の端に広大な庭園の風景が広がっていく。
鮮やかな花々が咲き誇るその一角に、セレフィアの紫の瞳がふと留まった。
日差しを浴びて黄金色に輝く波打つ長髪と、澄んだ翠色の瞳を持つ一人の少女がそこにいた。
彼女は咲き誇る白百合の傍らで優しく目を細め、身を寄せてくる小さな小鳥たちや小動物と、穏やかに言葉を交わすように戯れている。
戦場や公邸の冷冽な空気とは一線を画す、
あまりにも柔らかな光を纏ったその佇まいに、セレフィアは無意識に足を止めた。
「父上……あの方はいったい?」
淡々とした声で問いかけたセレフィアに対し、前に立つアルヴィーノもまた足を止め、庭園の少女へと静かに視線を送った。
「リリアーヌです。兄上が視察先の古びた修道院から引き取られた少女ですよ。元は修道女の見習いだったそうですが、現在は王女として迎え入れられています」
「王女……」
「ええ。ですが貴方と同様、血筋や立場以上に過酷な過去を背負った子です。あの子の持つ穏やかさと芯の強さは、兄上にとっても救いとなっているのでしょう」
アルヴィーノはそう短く説明を終えると、再び冷ややかな瞳を前方に向け、歩みを進めた。
「行きますよ、セレフィア。今日の訓練を始めます」
「はい、父上」
セレフィアは短く応じ、もう一度だけ庭園に佇む金髪の少女を見つめた。
あたたかな光の中で微笑む『リリアーヌ』という少女の姿。
その眩しすぎる存在が、自身の無彩色だった世界にどのような意味をもたらすのか、この時のセレフィアはまだ知る由もなかった。
セレフィアはアルヴィーノの後ろに静かに従い、演習場へと続く長い回廊を歩いていた。
規則正しい足音だけが静寂に響く中、視界の端に広大な庭園の風景が広がっていく。
鮮やかな花々が咲き誇るその一角に、セレフィアの紫の瞳がふと留まった。
日差しを浴びて黄金色に輝く波打つ長髪と、澄んだ翠色の瞳を持つ一人の少女がそこにいた。
彼女は咲き誇る白百合の傍らで優しく目を細め、身を寄せてくる小さな小鳥たちや小動物と、穏やかに言葉を交わすように戯れている。
戦場や公邸の冷冽な空気とは一線を画す、
あまりにも柔らかな光を纏ったその佇まいに、セレフィアは無意識に足を止めた。
「父上……あの方はいったい?」
淡々とした声で問いかけたセレフィアに対し、前に立つアルヴィーノもまた足を止め、庭園の少女へと静かに視線を送った。
「リリアーヌです。兄上が視察先の古びた修道院から引き取られた少女ですよ。元は修道女の見習いだったそうですが、現在は王女として迎え入れられています」
「王女……」
「ええ。ですが貴方と同様、血筋や立場以上に過酷な過去を背負った子です。あの子の持つ穏やかさと芯の強さは、兄上にとっても救いとなっているのでしょう」
アルヴィーノはそう短く説明を終えると、再び冷ややかな瞳を前方に向け、歩みを進めた。
「行きますよ、セレフィア。今日の訓練を始めます」
「はい、父上」
セレフィアは短く応じ、もう一度だけ庭園に佇む金髪の少女を見つめた。
あたたかな光の中で微笑む『リリアーヌ』という少女の姿。
その眩しすぎる存在が、自身の無彩色だった世界にどのような意味をもたらすのか、この時のセレフィアはまだ知る由もなかった。