氷の騎士に、白百合の恋を
リリアーヌをそっとベッドへ横たえ、セレフィアは不安そうにその顔を覗き込んでいた。
先ほどまで真っ赤だった頬は少し落ち着いたものの、あまりのショックで気を失った彼女は、まだすやすやと心地よさそうな寝息を立てている。
そこへ、一日の執務を終えたアルヴィーノとルミが部屋を訪れた。
「ただいまー! って、えぇ!?」
扉を開けたルミが、ベッドに倒れるリリアーヌと、その傍らで申し訳なさそうに佇むセレフィアを見て声を裏返らせる。
アルヴィーノもまた、わずかに眉をひそめて室内へと足を踏み入れた。
セレフィアは姿勢を正すと、事の顛末を包み隠さず報告した。
釣書を持ってこられたことで狂いそうになったこと。
壁に追い詰めて唇を奪ってしまったこと。
そして耳元で愛を告げたら、そのまま気を失わせてしまったこと――。
すべてを聞き終えたルミは、口をぽかんと開けたまま固まり、次の瞬間には顔を覆って「あちゃー……!」と悶絶した。
「セラ……! それ、告白っていうか、撃墜だよ! 初撃で全力を叩き込みすぎ!」
一方、アルヴィーノは静かに思考を巡らせた後、ふっと小さく息を吐いた。
「なるほど。自身の感情に決着がついた途端、後先考えずに限界まで攻め立てたわけですか。……加減というものを知りませんね、あなたは」
「……私は、何かとんでもないことをしてしまったのでしょうか」
困ったように首を傾げ、紫の瞳を不安げに揺らすセレフィア。
そんな彼女に、アルヴィーノは呆れたような、けれどどこか満足げな眼差しを向けた。
「いいえ。……あの姫君が望んでいた結果そのものです。ただ、あまりに過剰な毒を一気に与えすぎただけでしょう」
「毒、ですか……?」
「ええ。目覚めたら、今度はあなたが責任を取って優しく介抱してあげなさい。……よくやりましたね、セレフィア」
父であり師であるアルヴィーノからの言葉に、セレフィアは小さく「はい」と頷く。
眠るリリアーヌの手をそっと握り直し、彼女が目を覚ますその瞬間を、今度はどこまでも愛おしそうに待つのだった。
「はっ……!?」
勢いよく跳ね起き、リリアーヌは荒い息をつきながら自分の置かれた状況を見回した。
見慣れた自室のベッド、柔らかい天蓋、そして――目の前に座る、世界で一番大好きな少女の姿。
「ゆ、夢……っ!?」
あまりに劇的で甘すぎる出来事にパニックを起こし、リリアーヌは思わず自分の柔らかい頬をぎゅーっと力任せにつねった。
痛い。
ということは、現実? いや、でも、あんな……!
「目が覚めましたか、リリア様」
静かな声が耳に届く。
セレフィアはベッドの脇の椅子に腰掛け、心配そうに、けれどどこか熱を孕んだ紫の瞳でリリアーヌを見つめていた。
リリアーヌは正気に戻ろうと必死になりながら、目の前のセレフィアの顔をまじまじと見つめ返した。
整いすぎている端正な顔立ち、少しだけ赤みを帯びた唇、そして自分を閉じ込めた冷たい指先の感触。
「ゆ、夢……じゃ……ない……?」
まだどこか信じられず、ぽかんとしながら壊れた玩具のように呟くリリアーヌ。
すると、セレフィアの唇の端がすっと上がり、先ほどの夜会や壁ドンで見せたような、どこか不敵で魅惑的な笑みが浮かんだ。
セレフィアはゆっくりと顔を近づけると、リリアーヌの耳元に唇を寄せ、低く甘い声で囁く。
「……忘れてしまわれたのなら、もう一度言いましょうか? ――リリアーヌ」
「〜〜〜〜〜っっっ!!!???」
ぼんっ!! と、文字通り効果音が鳴り響きそうなほどの勢いで、リリアーヌの顔全体が耳の先まで一瞬で真っ赤に沸騰した。
「い、言わなくていいです! 言わなくていいですっ!!」
両手で熟したリンゴのような頬をぎゅっと覆い隠し、ベッドの上で小さく丸まるリリアーヌ。
恥ずかしさで心臓がはち切れそうになりながらも、指の隙間からチラリとセレフィアを見つめ、胸の奥から溢れ出す圧倒的な幸福感に包まれていた。
(夢じゃない……本当に、セラに告白されたんだ……っ! しかも、あんなに……あんなに格好よく……っ!)
ずっとずっと追いかけて、好きになってもらいたくて背伸びをしてきた。その努力が、想像を遥かに超える形で結ばれたのだ。
「……ふふ、ほんとに……告白、されたんだ……」
頬を押さえたまま、かみ締めるようにぽつりと呟くリリアーヌ。
その愛くるしい反応を前に、セレフィアは今度こそ愛おしさに耐えかねたように、柔らかく、温かな笑みを咲かせるのだった。
先ほどまで真っ赤だった頬は少し落ち着いたものの、あまりのショックで気を失った彼女は、まだすやすやと心地よさそうな寝息を立てている。
そこへ、一日の執務を終えたアルヴィーノとルミが部屋を訪れた。
「ただいまー! って、えぇ!?」
扉を開けたルミが、ベッドに倒れるリリアーヌと、その傍らで申し訳なさそうに佇むセレフィアを見て声を裏返らせる。
アルヴィーノもまた、わずかに眉をひそめて室内へと足を踏み入れた。
セレフィアは姿勢を正すと、事の顛末を包み隠さず報告した。
釣書を持ってこられたことで狂いそうになったこと。
壁に追い詰めて唇を奪ってしまったこと。
そして耳元で愛を告げたら、そのまま気を失わせてしまったこと――。
すべてを聞き終えたルミは、口をぽかんと開けたまま固まり、次の瞬間には顔を覆って「あちゃー……!」と悶絶した。
「セラ……! それ、告白っていうか、撃墜だよ! 初撃で全力を叩き込みすぎ!」
一方、アルヴィーノは静かに思考を巡らせた後、ふっと小さく息を吐いた。
「なるほど。自身の感情に決着がついた途端、後先考えずに限界まで攻め立てたわけですか。……加減というものを知りませんね、あなたは」
「……私は、何かとんでもないことをしてしまったのでしょうか」
困ったように首を傾げ、紫の瞳を不安げに揺らすセレフィア。
そんな彼女に、アルヴィーノは呆れたような、けれどどこか満足げな眼差しを向けた。
「いいえ。……あの姫君が望んでいた結果そのものです。ただ、あまりに過剰な毒を一気に与えすぎただけでしょう」
「毒、ですか……?」
「ええ。目覚めたら、今度はあなたが責任を取って優しく介抱してあげなさい。……よくやりましたね、セレフィア」
父であり師であるアルヴィーノからの言葉に、セレフィアは小さく「はい」と頷く。
眠るリリアーヌの手をそっと握り直し、彼女が目を覚ますその瞬間を、今度はどこまでも愛おしそうに待つのだった。
「はっ……!?」
勢いよく跳ね起き、リリアーヌは荒い息をつきながら自分の置かれた状況を見回した。
見慣れた自室のベッド、柔らかい天蓋、そして――目の前に座る、世界で一番大好きな少女の姿。
「ゆ、夢……っ!?」
あまりに劇的で甘すぎる出来事にパニックを起こし、リリアーヌは思わず自分の柔らかい頬をぎゅーっと力任せにつねった。
痛い。
ということは、現実? いや、でも、あんな……!
「目が覚めましたか、リリア様」
静かな声が耳に届く。
セレフィアはベッドの脇の椅子に腰掛け、心配そうに、けれどどこか熱を孕んだ紫の瞳でリリアーヌを見つめていた。
リリアーヌは正気に戻ろうと必死になりながら、目の前のセレフィアの顔をまじまじと見つめ返した。
整いすぎている端正な顔立ち、少しだけ赤みを帯びた唇、そして自分を閉じ込めた冷たい指先の感触。
「ゆ、夢……じゃ……ない……?」
まだどこか信じられず、ぽかんとしながら壊れた玩具のように呟くリリアーヌ。
すると、セレフィアの唇の端がすっと上がり、先ほどの夜会や壁ドンで見せたような、どこか不敵で魅惑的な笑みが浮かんだ。
セレフィアはゆっくりと顔を近づけると、リリアーヌの耳元に唇を寄せ、低く甘い声で囁く。
「……忘れてしまわれたのなら、もう一度言いましょうか? ――リリアーヌ」
「〜〜〜〜〜っっっ!!!???」
ぼんっ!! と、文字通り効果音が鳴り響きそうなほどの勢いで、リリアーヌの顔全体が耳の先まで一瞬で真っ赤に沸騰した。
「い、言わなくていいです! 言わなくていいですっ!!」
両手で熟したリンゴのような頬をぎゅっと覆い隠し、ベッドの上で小さく丸まるリリアーヌ。
恥ずかしさで心臓がはち切れそうになりながらも、指の隙間からチラリとセレフィアを見つめ、胸の奥から溢れ出す圧倒的な幸福感に包まれていた。
(夢じゃない……本当に、セラに告白されたんだ……っ! しかも、あんなに……あんなに格好よく……っ!)
ずっとずっと追いかけて、好きになってもらいたくて背伸びをしてきた。その努力が、想像を遥かに超える形で結ばれたのだ。
「……ふふ、ほんとに……告白、されたんだ……」
頬を押さえたまま、かみ締めるようにぽつりと呟くリリアーヌ。
その愛くるしい反応を前に、セレフィアは今度こそ愛おしさに耐えかねたように、柔らかく、温かな笑みを咲かせるのだった。