氷の騎士に、白百合の恋を
そんなある日、二人は城下町の市場へと買い出しに訪れていた。
実はリリアーヌの方がセレフィアよりも少しだけ身長が高い。
だからこそ、隣を歩くセレフィアの可憐で引き締まった横顔や、少し小さめの肩を、リリアーヌはいつもどこか愛おしい気持ちで見下ろしていた。
「見てください、セラ! このリボン、すごく綺麗なのです!」
「ええ、とてもよくお似合いになりそうです、リリア様」
互いに目を輝かせながら店先を巡っていた、その時だった。
賑やかな大通りの路地裏から、数人の粗暴な男たちがぞろぞろと姿を現した。
街を荒らす野盗の群れだ。
ギラついた目で獲物を探していた彼らの視線が、上質な衣服を纏った二人の少女へと注がれる。
特に彼らの目が留まったのは、小柄で可憐なセレフィアだった。
「ヒヒッ……いいカモがいやがるぜ。おいおい、そっちの小娘は随分とおちびさんじゃねえか。このくらいのガキなら、腕の一本も捻りあげれば一コロだな」
ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべ、獲物を囲い込むように距離を詰めてくる野盗たち。
リリアーヌがハッと息を呑んだ瞬間――。
「下がっていてください、リリア様」
凛とした声と共に、セレフィアがすっと一歩前に躍り出た。
自分より少し背の高いリリアーヌを、その小さな背中でしっかりと遮るようにかばう。
小柄な体を庇護欲の対象だと高を括っていた野盗たちは、その直後にセレフィアから放たれた尋常ではない「圧」に息を詰まらせた。
静かに立ち塞がったセレフィアの紫の瞳には、氷点下の冷酷さが宿っていた。
「私の身長を揶揄することは一万歩譲って看過するとしても……リリア様にその醜悪な視線を向けたこと、万死に値します」
冷ややかな言葉と共に、セレフィアの手元から凍てつくような冷気が吹き荒れる。
自分より背の高い大好きな王女様を背中に感じながら、冷徹な小柄な剣士は、野盗たちへ向けて一切の容赦がない牙を剥くのだった。
一瞬の出来事だった。
セレフィアが腰の剣を抜いたかと思った瞬間、静寂を切り裂く刃の煌めきと激しい冷気が路地裏を支配した。
野盗たちが叫び声をあげる暇すら与えず、セレフィアは容赦のない無駄のない連撃で男たちを瞬時に切り伏せてみせた。
「……引き渡しを完了いたしました」
騒ぎを聞きつけて駆けつけた街の巡回兵たちに惨状を引き渡すと、セレフィアは一切の乱れもない身のこなしで刃の血を払い、静かに鞘へと収めた。
「セラ……っ! 大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!?」
自分より背の高いリリアーヌが、スカートの裾を揺らしながら慌てて駆け寄ってくる。
心配そうに自分の身体をあちこち検分しようとするリリアーヌを見上げ、セレフィアはふっと息を吐いた。
「ご安心ください、リリア様。かすり傷ひとつありません。……ただ、最近ようやく気づいたことがありまして」
「えっ? 気づいたこと……ですか?」
心配そうに首を傾げるリリアーヌに、セレフィアは澄んだ紫の瞳を向け、ごく淡々と語り始めた。
「私のこの幼い顔立ちと小柄な姿は、相手に大きな油断を生むようです。あのように私を『ただのおちびさん』だと高を括って襲いかかってくる輩は、こちらの手札や間合いを見誤るため……非常に始末がしやすい、と」
そこまで言うと、セレフィアはほんの少しだけ口元を緩め、どこか誇らしげで得意げな笑みを浮かべてみせた。
「戦略上、極めて有効な利点であると判断いたしました」
己の可憐な外見すらも『敵を欺くための好条件』として割り切ってみせる、あまりにも無駄がなく完璧な立ち振る舞い。
そして、ふいに見せた年相応のどこか得意げな微笑み。
背の高い自分を小さな背中で完璧に守り切り、そんな凛々しい台詞を平然と言ってのける少女の姿に、リリアーヌの胸はドクンと激しく跳ね上がった。
(かっこいい……っ! なになに、今の笑い方……ずるすぎます、セラ……っ!!)
頼もしさと、至近距離で見上げられた得意げな笑顔の破壊力にノックアウトされ、リリアーヌの顔は熟したリンゴを通り越して一瞬で真っ赤に染まった。
「あぅ……ず、ずるいです……っ!」
両手で真っ赤な頬を押さえ、プイッと顔をそらしてしまうリリアーヌ。
そんな彼女の様子に、セレフィアは「……不快にさせてしまいましたでしょうか?」と、再びパチクリと紫の瞳を瞬かせるのだった。
実はリリアーヌの方がセレフィアよりも少しだけ身長が高い。
だからこそ、隣を歩くセレフィアの可憐で引き締まった横顔や、少し小さめの肩を、リリアーヌはいつもどこか愛おしい気持ちで見下ろしていた。
「見てください、セラ! このリボン、すごく綺麗なのです!」
「ええ、とてもよくお似合いになりそうです、リリア様」
互いに目を輝かせながら店先を巡っていた、その時だった。
賑やかな大通りの路地裏から、数人の粗暴な男たちがぞろぞろと姿を現した。
街を荒らす野盗の群れだ。
ギラついた目で獲物を探していた彼らの視線が、上質な衣服を纏った二人の少女へと注がれる。
特に彼らの目が留まったのは、小柄で可憐なセレフィアだった。
「ヒヒッ……いいカモがいやがるぜ。おいおい、そっちの小娘は随分とおちびさんじゃねえか。このくらいのガキなら、腕の一本も捻りあげれば一コロだな」
ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべ、獲物を囲い込むように距離を詰めてくる野盗たち。
リリアーヌがハッと息を呑んだ瞬間――。
「下がっていてください、リリア様」
凛とした声と共に、セレフィアがすっと一歩前に躍り出た。
自分より少し背の高いリリアーヌを、その小さな背中でしっかりと遮るようにかばう。
小柄な体を庇護欲の対象だと高を括っていた野盗たちは、その直後にセレフィアから放たれた尋常ではない「圧」に息を詰まらせた。
静かに立ち塞がったセレフィアの紫の瞳には、氷点下の冷酷さが宿っていた。
「私の身長を揶揄することは一万歩譲って看過するとしても……リリア様にその醜悪な視線を向けたこと、万死に値します」
冷ややかな言葉と共に、セレフィアの手元から凍てつくような冷気が吹き荒れる。
自分より背の高い大好きな王女様を背中に感じながら、冷徹な小柄な剣士は、野盗たちへ向けて一切の容赦がない牙を剥くのだった。
一瞬の出来事だった。
セレフィアが腰の剣を抜いたかと思った瞬間、静寂を切り裂く刃の煌めきと激しい冷気が路地裏を支配した。
野盗たちが叫び声をあげる暇すら与えず、セレフィアは容赦のない無駄のない連撃で男たちを瞬時に切り伏せてみせた。
「……引き渡しを完了いたしました」
騒ぎを聞きつけて駆けつけた街の巡回兵たちに惨状を引き渡すと、セレフィアは一切の乱れもない身のこなしで刃の血を払い、静かに鞘へと収めた。
「セラ……っ! 大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!?」
自分より背の高いリリアーヌが、スカートの裾を揺らしながら慌てて駆け寄ってくる。
心配そうに自分の身体をあちこち検分しようとするリリアーヌを見上げ、セレフィアはふっと息を吐いた。
「ご安心ください、リリア様。かすり傷ひとつありません。……ただ、最近ようやく気づいたことがありまして」
「えっ? 気づいたこと……ですか?」
心配そうに首を傾げるリリアーヌに、セレフィアは澄んだ紫の瞳を向け、ごく淡々と語り始めた。
「私のこの幼い顔立ちと小柄な姿は、相手に大きな油断を生むようです。あのように私を『ただのおちびさん』だと高を括って襲いかかってくる輩は、こちらの手札や間合いを見誤るため……非常に始末がしやすい、と」
そこまで言うと、セレフィアはほんの少しだけ口元を緩め、どこか誇らしげで得意げな笑みを浮かべてみせた。
「戦略上、極めて有効な利点であると判断いたしました」
己の可憐な外見すらも『敵を欺くための好条件』として割り切ってみせる、あまりにも無駄がなく完璧な立ち振る舞い。
そして、ふいに見せた年相応のどこか得意げな微笑み。
背の高い自分を小さな背中で完璧に守り切り、そんな凛々しい台詞を平然と言ってのける少女の姿に、リリアーヌの胸はドクンと激しく跳ね上がった。
(かっこいい……っ! なになに、今の笑い方……ずるすぎます、セラ……っ!!)
頼もしさと、至近距離で見上げられた得意げな笑顔の破壊力にノックアウトされ、リリアーヌの顔は熟したリンゴを通り越して一瞬で真っ赤に染まった。
「あぅ……ず、ずるいです……っ!」
両手で真っ赤な頬を押さえ、プイッと顔をそらしてしまうリリアーヌ。
そんな彼女の様子に、セレフィアは「……不快にさせてしまいましたでしょうか?」と、再びパチクリと紫の瞳を瞬かせるのだった。