氷の騎士に、白百合の恋を
遠征から帰還したアルヴィーノは、戦火の臭いを纏わせたまま、アルフレッドの執務室へと足を向けた。
その背後には、捉えられたあの小柄な子供が、軍兵の手によって静かに従わされている。
重厚な扉が開かれ、執務机に座っていたアルフレッドが顔を上げた。
「無事の帰還、何よりだ、アルヴィーノ」
労いの言葉をかけようとしたアルフレッドの視線が、弟の背後に立つ小さな存在に留まる。
水色の豊かな髪、そして見つめ返してくる底知れぬ紫の瞳。
そのあまりにも歪で静謐な佇まいに、アルフレッドは息を飲んだ。
「その子は……一体どこで」
「戦場です。我が方の先鋒部隊を、単身で叩き潰していた戦災孤児ですよ」
アルヴィーノは淡々と事実のみを告げた。
驚きを見せる兄に対し、声音ひとつ変えることなく言葉を続ける。
「年齢も、出自も、性別すらも定かではありません。ですが、我が兵を容易く葬り去る圧倒的な戦力と、己の死すら客観視する冷徹な合理性を備えている。野に放っておくには少々危険すぎる存在です」
アルヴィーノの冷ややかな紫の瞳が、背後の子供を一瞥した。
「ですから、私が引き取ります。我が手元で精鋭として鍛え上げ、レイストールに忠誠を誓う有用な駒として育て上げるつもりです」
「駒、か……」
アルフレッドは一瞬だけ痛ましげに目を細めたが、弟の言わんとすることを理解し、静かに息を吐いた。
野放しにして処分されるか、あるいは他国の刺客となる危険を思えば、アルヴィーノの監視下に置くことが最も現実的な判断であると察したからだ。
「分かった。……その子の扱いは君に任せるよ、アルヴィーノ」
王の許しを得たアルヴィーノは、短く一礼すると、素直に従う正体不明の子供を連れて私室へと戻るのだった。
その背後には、捉えられたあの小柄な子供が、軍兵の手によって静かに従わされている。
重厚な扉が開かれ、執務机に座っていたアルフレッドが顔を上げた。
「無事の帰還、何よりだ、アルヴィーノ」
労いの言葉をかけようとしたアルフレッドの視線が、弟の背後に立つ小さな存在に留まる。
水色の豊かな髪、そして見つめ返してくる底知れぬ紫の瞳。
そのあまりにも歪で静謐な佇まいに、アルフレッドは息を飲んだ。
「その子は……一体どこで」
「戦場です。我が方の先鋒部隊を、単身で叩き潰していた戦災孤児ですよ」
アルヴィーノは淡々と事実のみを告げた。
驚きを見せる兄に対し、声音ひとつ変えることなく言葉を続ける。
「年齢も、出自も、性別すらも定かではありません。ですが、我が兵を容易く葬り去る圧倒的な戦力と、己の死すら客観視する冷徹な合理性を備えている。野に放っておくには少々危険すぎる存在です」
アルヴィーノの冷ややかな紫の瞳が、背後の子供を一瞥した。
「ですから、私が引き取ります。我が手元で精鋭として鍛え上げ、レイストールに忠誠を誓う有用な駒として育て上げるつもりです」
「駒、か……」
アルフレッドは一瞬だけ痛ましげに目を細めたが、弟の言わんとすることを理解し、静かに息を吐いた。
野放しにして処分されるか、あるいは他国の刺客となる危険を思えば、アルヴィーノの監視下に置くことが最も現実的な判断であると察したからだ。
「分かった。……その子の扱いは君に任せるよ、アルヴィーノ」
王の許しを得たアルヴィーノは、短く一礼すると、素直に従う正体不明の子供を連れて私室へと戻るのだった。