氷の騎士に、白百合の恋を
毎日のお散歩や移動のたびに繰り返される、セレフィアのスマートで過保護なエスコート。
そのたびに胸が破裂しそうなほどバクバクし、顔を真っ赤にして逃げ出す日々を送っていたリリアーヌは、ついに耐えかねて両親の部屋へと駆け込んでいた。
「お父様、お母様……っ! リリア、なんだか変なんです……!」
豪奢な応接セットのソファで、両手で温かい紅茶のカップを抱えながら、リリアーヌは真っ赤な顔で一連の出来事を打ち明けた。
手を取られて移動するたびにドキドキすること。
頭の上に虫が落ちてきそう(本人は気づいていない)なのを守られるような距離感で、至近距離から見つめられると息が止まりそうになること。
そして、あの綺麗で凛々しいお顔と優しい声を思い出すだけで、胸の奥がキュッと苦しくなること。
「セレフィアさんと一緒にいると、胸がずっとトクン、トクンってうるさくて……リリア、何か恐ろしい病気にかかってしまったのでしょうか……?」
涙目になりながら本気で心配そうに訴える娘の姿に、アルフレッドとエルザは顔を見合わせ、思わず目元を和ませた。
「そうか、そうか……。それは大変な『病気』にかかってしまったね、リリア」
アルフレッドは朗らかな笑みを浮かべ、優しく娘の頭を撫でた。
元修道女見習いとして静かに育った愛娘が、初めて経験する甘い感情。
それが弟アルヴィーノの愛娘であるセレフィアに向けられているという事実に、目元が緩んで隠しきれない。
「お父様……!? やっぱり病気なのですか!?」
「ふふ、大丈夫ですよ、リリアーヌ」
青ざめるリリアーヌに、王妃エルザが慈愛に満ちた笑みを向けながらそっと寄り添った。
「それはね、とても素敵で、温かい気持ちなのですよ。決して悪いことではありませんから、安心しなさいね」
「素敵で……温かい気持ち……?」
「ええ。セレフィアさんがリリアにとって、それだけ特別な存在になったということさ。アルヴィーノに鍛えられているだけあって、彼女のエスコートは僕から見ても実に男前で格好良いからね。……うん、ドキドキしてしまうのも無理はないよ」
アルフレッドは弟の冷徹な佇まいを完璧に受け継ぎつつ、どこか無自覚に王女様を翻弄している少女の姿を想像し、楽しそうに頷いた。
「セレフィアさんはね、ルミくんやアルヴィーノのもとで『優しさ』を学んでいる最中なんだ。だからリリアも、逃げ出さずにその気持ちをゆっくり確かめてみるといい」
「逃げ出さずに……」
「ええ。そのドキドキを、大切にしてあげてくださいね」
エルザの優しい言葉と、両親のどこか微笑ましそうな温かい視線に包まれ、リリアーヌはぽかんと首をかしげた。
病気ではないと分かってホッとしたものの、胸の奥の甘い疼きはいっそう強くなっていく。
ご両親に見守られながら、無自覚な恋心に包まれた王女様は、明日からのセレフィアとの時間に期待と照れくささを込めて、そっと小指の指輪を撫でるのだった。
そのたびに胸が破裂しそうなほどバクバクし、顔を真っ赤にして逃げ出す日々を送っていたリリアーヌは、ついに耐えかねて両親の部屋へと駆け込んでいた。
「お父様、お母様……っ! リリア、なんだか変なんです……!」
豪奢な応接セットのソファで、両手で温かい紅茶のカップを抱えながら、リリアーヌは真っ赤な顔で一連の出来事を打ち明けた。
手を取られて移動するたびにドキドキすること。
頭の上に虫が落ちてきそう(本人は気づいていない)なのを守られるような距離感で、至近距離から見つめられると息が止まりそうになること。
そして、あの綺麗で凛々しいお顔と優しい声を思い出すだけで、胸の奥がキュッと苦しくなること。
「セレフィアさんと一緒にいると、胸がずっとトクン、トクンってうるさくて……リリア、何か恐ろしい病気にかかってしまったのでしょうか……?」
涙目になりながら本気で心配そうに訴える娘の姿に、アルフレッドとエルザは顔を見合わせ、思わず目元を和ませた。
「そうか、そうか……。それは大変な『病気』にかかってしまったね、リリア」
アルフレッドは朗らかな笑みを浮かべ、優しく娘の頭を撫でた。
元修道女見習いとして静かに育った愛娘が、初めて経験する甘い感情。
それが弟アルヴィーノの愛娘であるセレフィアに向けられているという事実に、目元が緩んで隠しきれない。
「お父様……!? やっぱり病気なのですか!?」
「ふふ、大丈夫ですよ、リリアーヌ」
青ざめるリリアーヌに、王妃エルザが慈愛に満ちた笑みを向けながらそっと寄り添った。
「それはね、とても素敵で、温かい気持ちなのですよ。決して悪いことではありませんから、安心しなさいね」
「素敵で……温かい気持ち……?」
「ええ。セレフィアさんがリリアにとって、それだけ特別な存在になったということさ。アルヴィーノに鍛えられているだけあって、彼女のエスコートは僕から見ても実に男前で格好良いからね。……うん、ドキドキしてしまうのも無理はないよ」
アルフレッドは弟の冷徹な佇まいを完璧に受け継ぎつつ、どこか無自覚に王女様を翻弄している少女の姿を想像し、楽しそうに頷いた。
「セレフィアさんはね、ルミくんやアルヴィーノのもとで『優しさ』を学んでいる最中なんだ。だからリリアも、逃げ出さずにその気持ちをゆっくり確かめてみるといい」
「逃げ出さずに……」
「ええ。そのドキドキを、大切にしてあげてくださいね」
エルザの優しい言葉と、両親のどこか微笑ましそうな温かい視線に包まれ、リリアーヌはぽかんと首をかしげた。
病気ではないと分かってホッとしたものの、胸の奥の甘い疼きはいっそう強くなっていく。
ご両親に見守られながら、無自覚な恋心に包まれた王女様は、明日からのセレフィアとの時間に期待と照れくささを込めて、そっと小指の指輪を撫でるのだった。