氷の騎士に、白百合の恋を

賑やかな通りを駆け抜け、二人が行き着いたのは洗練された装飾品店であった。
店内に足を踏み入れた瞬間、色とりどりの装飾品に視線を奪われたリリアーヌは、ある一つのショーケースの前で足を止めた。
その翠色の瞳がパッと輝きを増す。

「あ……! セレフィアさん、見て! これ、すごく綺麗!」

胸の高鳴りを抑えきれない様子で、リリアーヌはガラス越しに指をさした。
そこにあったのは、繊細なピンクゴールドの台座に、澄んだ紫色の宝石が嵌め込まれた細身のピンキーリングであった。
セレフィアの神秘的な瞳の色彩をそのまま閉じ込めたかのような、美しい指輪。
それが並んで二つ、置かれている。
感情が高ぶったリリアーヌは、ぎゅっと胸の前で手を握りしめ、言葉を弾ませた。

「これ! リリア、これがいいです! セレフィアさんの瞳とおそろいの色……! 二つあるから、リリアとセレフィアさんでおそろいにしたいの!」

一人称が幼い名前に変わり、無邪気に目を輝かせるリリアーヌ。
語気には無垢な期待が溢れている。
提案を受けたセレフィアは、視線を落として二つの指輪を見つめた。
自らのために装飾品を求める価値などないと考えていたはずだった。
しかし、目の前で自分の瞳と同じ色の宝石を愛おしそうに見つめる少女の情熱と、自分とおそろいにしたいという純粋な言葉が、胸の奥に静かに染み渡っていく。

「……リリアーヌ殿下が、それが良いとおっしゃるのなら」

セレフィアは感情を削ぎ落とした静かな声調のまま、ゆっくりと頷いた。
拒絶ではなく、己の意思で受け入れた小さな承諾。その言葉を聞いたリリアーヌは、「本当!?」と顔全体で喜びを弾けさせ、駆けつけてきたレオとルミの方を振り向いた。

「レオ兄様、ルミお兄ちゃん! これにするの! リリアとセレフィアさんのおそろい!」

はしゃぐリリアーヌの姿と、どこか気恥ずかしそうに僅かに視線を泳がせるセレフィア。
二人のやり取りを、追いついた青年たちは温かな眼差しで見守るのだった。
代金を支払い、店主の手によって慎重に包みから取り出された小さな指輪。
繊細なピンクゴールドの輪は、吸い込まれるように二人の左手の小指へと収まった。
小指に嵌められた輝きを見つめた瞬間、リリアーヌの胸に抑えきれない愛おしさが込み上げた。その可憐な身体を弾ませるやいなや、彼女はセレフィアの小さな身体へと勢いよく抱きついた。

「おそろい! セレフィアさんとリリアのおそろいです……!」

ぎゅっとしがみつき、跳ねるように喜びを爆発させるリリアーヌ。
小指に宿る微かな重量感と、肌を通して伝わってくる少女の温もり。
いつもなら無機質に受け流すはずの接触に、セレフィアの胸の奥で、カタリと小さな結び目が解ける音がした。
彼女は抱きつかれたまま、そっと自らの小指を持ち上げ、光を照り返す紫の宝石を見つめた。
自らの瞳と同じ色の輝き。
それを「綺麗だ」と言い、同じものを身につけて心から喜んでくれる存在が、今こうして腕の中にいる。

「……そうですね」

静かな呟きとともに、セレフィアの唇が小さく弧を描いた。
感情を殺し、冷徹な刃として生きようとしていた少女の面に浮かんだのは、極上の氷細工のように儚く、けれど鮮やかな笑みであった。

「……っ」

間近でその笑みを目にしたリリアーヌは、思わず息を呑んだ。
胸がぎゅっと締めつけられるような愛おしさに、雪解けのような美しい表情が重なり、リリアーヌの薄桃色の頬がじんわりと赤く染まっていく。

「……えへへ」

照れくさそうに笑いをこぼしながら、リリアーヌはさらに強くセレフィアにしがみついた。
その様子を少し離れた場所から眺めていたルミは、目元を熱くさせながら優しく微笑み、隣に立つレオもまた、崩れぬ笑みのまま静かに二人の絆の始まりを見届けのだった。
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