【バカンス編】真夏の楽園に、世界で一番甘い休日を
賑やかなお祭り会場の喧騒を少し離れ、二人は海岸線に沿って続く、小高い丘の上の展望台へと足を運んでいた。
そこは街灯の光も届かない、静かな人気のない場所だった。
生い茂る夜の木々が周囲の視線を完全に遮り、目の前には、ただ黒一色に染まった穏やかな南国の海と、無数の星が瞬く夜空だけが広がっている。
ここまで来れば、もう「主従の仮面」を被り続ける必要はなかった。
アルヴィーノは軍帽を傍らのベンチに置くと、漆黒の軍服の襟元を少しだけ緩め、ようやく大きく息を吐き出した。
「――お疲れ様でした、ルミ。本当によく辛抱してくれましたね。有象無象の目の前で、貴方を抱きしめることもできず、他人のように振る舞わねばならない時間が、これほど長く感じられるとは……」
「えへへ、アルヴィーノ、お顔はずっと格好いいよくて、ちょっと怖いままだったけど……手がずっと優しかったから、俺、全然寂しくなかったよ?」
ルミはひまわりの麦わら帽子を脱ぎ、ふわりと水色の長い髪を夜風に揺らしながら、愛しい伴侶の胸へとトトトッと飛び込んだ。
アルヴィーノは待っていましたとばかりに、その華奢な身体を長い腕で強く、壊れ物を扱うように大切に抱きすくめる。
衣服越しに伝わるルミの体温と、夏の夜の匂いに混ざる仄甘い香りが、軍師の張り詰めていた独占欲を急速に融かしていった。
「ルミ、貴方が金魚をすくって無邪気に笑うたび、貴方を攫ってしまいたかった……。本当に、貴方は世界一愛らしい」
「もうアルヴィーノったら……。えへへ……でも俺の『ご主人様』がアルヴィーノで、本当に良かった」
ルミが腕の中で上目遣いに微笑んだ、その瞬間。
――シュルシュルシュル……と、夜空を切り裂くような静かな音が響き渡った。
二人がハッとして空を見上げた刹那、ドォン……! という腹に響く大きな地鳴りのような音とともに、漆黒の夜空に大輪の「火の花」が咲き誇った。
鮮やかな赤、青、金色の光が、南国の海と二人の姿を美しく、鮮烈に照らし出す。
次々と打ち上がる色とりどりの花火は、まるで夜空に宝石を散りばめたかのようにきらめき、寄せては返す波打ち際までを幻想的に染め上げていた。
「わぁ……っ! すごい、アルヴィーノ、見て! すっごく大きい……!」
水色の瞳を限界まで輝かせ、光のシャワーを見上げるルミ。
その横顔があまりにも純粋で、美しくて、アルヴィーノは花火から目を離し、ただ最愛の少年だけを狂おしいほどの熱を湛えた紫の瞳で見つめた。
「ええ、美しいですね。……ですが、私にとっては、この光に照らされる貴方の髪も、肌も、すべての方が遥かに美しい」
「あ……、アルヴィーノ……っ」
耳元で囁かれた直後、ルミの唇は、深く、抗えないほどの重吻によって塞がれた。
花火が打ち上がるたびに、眩い光が二人の影を岩肌に長く映し出す。
アルヴィーノはルミの細い腰をぐっと引き寄せ、もう一歩も後ろへ退かせないように抱きしめた。
ルミは驚きに小さく身体を震わせたものの、すぐにアルヴィーノの白いリネンシャツの胸元を小さな手でぎゅっと掴み、その深い愛を一身に受け入れる。
何度も、何度も、夜空に咲く大輪の音にるように、甘い水音が静かな丘の上に響く。
お互いの呼吸が熱く混ざり合い、ルミの水着のフリルが風に揺れる。
アルヴィーノの唇が、ルミの濡れた唇から、ほんのり赤く染まった頬、そして柔らかな首筋へとゆっくりと下りていく。
「ん……、ふぁ……、アルヴィーノ、花火……っ、消えちゃうよ……?」
「消えれば、また何度でも私がこの空に極大魔法で灯して差し上げましょう。……今は私だけを見て、私の名前だけを呼んでください、ルミ」
「……ん、アルヴィーノ……っ。大好き、大好きだよ……」
涙目で愛を囁くルミを、アルヴィーノはさらに深く、世界中から隠すように強く抱きしめて、その愛らしい唇を再び貪った。
夜空を焦がす鮮やかな花火の光と、遠く響く潮騒の音。
誰の目もない、二人だけの閉ざされた南国の特等席で、二人の甘く濃密な夏の夜は、火花が消え去った後も、どこまでも深く、熱く続いていくのだった。
そこは街灯の光も届かない、静かな人気のない場所だった。
生い茂る夜の木々が周囲の視線を完全に遮り、目の前には、ただ黒一色に染まった穏やかな南国の海と、無数の星が瞬く夜空だけが広がっている。
ここまで来れば、もう「主従の仮面」を被り続ける必要はなかった。
アルヴィーノは軍帽を傍らのベンチに置くと、漆黒の軍服の襟元を少しだけ緩め、ようやく大きく息を吐き出した。
「――お疲れ様でした、ルミ。本当によく辛抱してくれましたね。有象無象の目の前で、貴方を抱きしめることもできず、他人のように振る舞わねばならない時間が、これほど長く感じられるとは……」
「えへへ、アルヴィーノ、お顔はずっと格好いいよくて、ちょっと怖いままだったけど……手がずっと優しかったから、俺、全然寂しくなかったよ?」
ルミはひまわりの麦わら帽子を脱ぎ、ふわりと水色の長い髪を夜風に揺らしながら、愛しい伴侶の胸へとトトトッと飛び込んだ。
アルヴィーノは待っていましたとばかりに、その華奢な身体を長い腕で強く、壊れ物を扱うように大切に抱きすくめる。
衣服越しに伝わるルミの体温と、夏の夜の匂いに混ざる仄甘い香りが、軍師の張り詰めていた独占欲を急速に融かしていった。
「ルミ、貴方が金魚をすくって無邪気に笑うたび、貴方を攫ってしまいたかった……。本当に、貴方は世界一愛らしい」
「もうアルヴィーノったら……。えへへ……でも俺の『ご主人様』がアルヴィーノで、本当に良かった」
ルミが腕の中で上目遣いに微笑んだ、その瞬間。
――シュルシュルシュル……と、夜空を切り裂くような静かな音が響き渡った。
二人がハッとして空を見上げた刹那、ドォン……! という腹に響く大きな地鳴りのような音とともに、漆黒の夜空に大輪の「火の花」が咲き誇った。
鮮やかな赤、青、金色の光が、南国の海と二人の姿を美しく、鮮烈に照らし出す。
次々と打ち上がる色とりどりの花火は、まるで夜空に宝石を散りばめたかのようにきらめき、寄せては返す波打ち際までを幻想的に染め上げていた。
「わぁ……っ! すごい、アルヴィーノ、見て! すっごく大きい……!」
水色の瞳を限界まで輝かせ、光のシャワーを見上げるルミ。
その横顔があまりにも純粋で、美しくて、アルヴィーノは花火から目を離し、ただ最愛の少年だけを狂おしいほどの熱を湛えた紫の瞳で見つめた。
「ええ、美しいですね。……ですが、私にとっては、この光に照らされる貴方の髪も、肌も、すべての方が遥かに美しい」
「あ……、アルヴィーノ……っ」
耳元で囁かれた直後、ルミの唇は、深く、抗えないほどの重吻によって塞がれた。
花火が打ち上がるたびに、眩い光が二人の影を岩肌に長く映し出す。
アルヴィーノはルミの細い腰をぐっと引き寄せ、もう一歩も後ろへ退かせないように抱きしめた。
ルミは驚きに小さく身体を震わせたものの、すぐにアルヴィーノの白いリネンシャツの胸元を小さな手でぎゅっと掴み、その深い愛を一身に受け入れる。
何度も、何度も、夜空に咲く大輪の音にるように、甘い水音が静かな丘の上に響く。
お互いの呼吸が熱く混ざり合い、ルミの水着のフリルが風に揺れる。
アルヴィーノの唇が、ルミの濡れた唇から、ほんのり赤く染まった頬、そして柔らかな首筋へとゆっくりと下りていく。
「ん……、ふぁ……、アルヴィーノ、花火……っ、消えちゃうよ……?」
「消えれば、また何度でも私がこの空に極大魔法で灯して差し上げましょう。……今は私だけを見て、私の名前だけを呼んでください、ルミ」
「……ん、アルヴィーノ……っ。大好き、大好きだよ……」
涙目で愛を囁くルミを、アルヴィーノはさらに深く、世界中から隠すように強く抱きしめて、その愛らしい唇を再び貪った。
夜空を焦がす鮮やかな花火の光と、遠く響く潮騒の音。
誰の目もない、二人だけの閉ざされた南国の特等席で、二人の甘く濃密な夏の夜は、火花が消え去った後も、どこまでも深く、熱く続いていくのだった。