凍てつく姫に、春を告ぐ-蒼き獅子の騎士譚-
遠征が始まってから数日後。
王宮の一室では、お留守番の二人がすっかり打ち解けた様子で過ごしていた。
「ねえねえリリィちゃん、二人が帰ってきたら何しよっかー? 俺ね、アルヴィーノが帰ってきたら、ぜーったい美味しいお菓子作って食べてもらうんだ! あなたは何したい?」
ルミは水色の長い髪を揺らしながら、ベッドの上でゴロゴロと寝転がり、無邪気に笑いかけた。
白いロリータ服のフリルが、彼の動きに合わせて軽やかに跳ねる。
リリィは膝を抱えて座りながら、少し考えてから、ぽつりと、けれど嬉しそうに呟いた。
「私は……レオ様と、またあのふかふかのベッドで、一緒に……お昼寝が、したいです。レオ様が隣にいてくれると、すごく温かくて、安心するから……」
「そっかそっかー。早く帰ってくるといいねー!」
ルミがあなたの手を引いて無邪気に はしゃぐと、リリィの赤い瞳にも、未来へのささやかな希望の光が宿るのだった。
◆
一方、その頃の北方演征組。
地獄の特訓を数日間生き延びたレオは、初日に比べれば、泥にまみれながらも随分と機敏に動けるようになっていた。
限界を超えた肉体は急速に戦場の空気に適応し、兵士たちの陣形を素早く見極めるだけの余裕が、微かに生まれつつあった。
しかし、目の前の「魔王」がそれを生温く見逃すはずがない。
「動きが鈍いですよ、レオ。初日よりマシになった程度で、満足しているのですか?」
軍馬の上から、アルヴィーノの容赦のない叱責が、冷たい風に乗って突き刺さる。
細く切れ長な紫の瞳は、甥の僅かな隙も見逃さず、冷酷に言葉の刃を重ねていく。
「そんな腑抜けた太刀筋では、隣国の精鋭に一瞬で首を刎ねられ、その死体の前であの少女が連れ去られるのをただ眺めることになりますね。まさか、自分が『光の王子』だからと、戦場でも世界が優しく甘やかしてくれるとでも思っているのですか? 片腹痛い。貴方がここで無様に時間を浪費している間にも、彼女の首にかかった見えない縄は、一刻一刻と引き締まっているというのに」
「く……っ、まだ……です……!」
叔父の容赦ない煽りと冷徹な言葉は、レオの脳髄を確実に抉った。
だが、今のレオはその煽りすらも己の狂気的な独占欲の糧へと変換する。
「私は――絶対に、彼女を誰にも渡しはしない!!」
冷酷な軍師からの怒号と煽りをその身に浴びながら、レオはさらに昏く、鋭い執念を瞳に宿し、再び泥を蹴って実戦演習の渦中へと突き進んでいくのだった。
王宮の一室では、お留守番の二人がすっかり打ち解けた様子で過ごしていた。
「ねえねえリリィちゃん、二人が帰ってきたら何しよっかー? 俺ね、アルヴィーノが帰ってきたら、ぜーったい美味しいお菓子作って食べてもらうんだ! あなたは何したい?」
ルミは水色の長い髪を揺らしながら、ベッドの上でゴロゴロと寝転がり、無邪気に笑いかけた。
白いロリータ服のフリルが、彼の動きに合わせて軽やかに跳ねる。
リリィは膝を抱えて座りながら、少し考えてから、ぽつりと、けれど嬉しそうに呟いた。
「私は……レオ様と、またあのふかふかのベッドで、一緒に……お昼寝が、したいです。レオ様が隣にいてくれると、すごく温かくて、安心するから……」
「そっかそっかー。早く帰ってくるといいねー!」
ルミがあなたの手を引いて無邪気に はしゃぐと、リリィの赤い瞳にも、未来へのささやかな希望の光が宿るのだった。
◆
一方、その頃の北方演征組。
地獄の特訓を数日間生き延びたレオは、初日に比べれば、泥にまみれながらも随分と機敏に動けるようになっていた。
限界を超えた肉体は急速に戦場の空気に適応し、兵士たちの陣形を素早く見極めるだけの余裕が、微かに生まれつつあった。
しかし、目の前の「魔王」がそれを生温く見逃すはずがない。
「動きが鈍いですよ、レオ。初日よりマシになった程度で、満足しているのですか?」
軍馬の上から、アルヴィーノの容赦のない叱責が、冷たい風に乗って突き刺さる。
細く切れ長な紫の瞳は、甥の僅かな隙も見逃さず、冷酷に言葉の刃を重ねていく。
「そんな腑抜けた太刀筋では、隣国の精鋭に一瞬で首を刎ねられ、その死体の前であの少女が連れ去られるのをただ眺めることになりますね。まさか、自分が『光の王子』だからと、戦場でも世界が優しく甘やかしてくれるとでも思っているのですか? 片腹痛い。貴方がここで無様に時間を浪費している間にも、彼女の首にかかった見えない縄は、一刻一刻と引き締まっているというのに」
「く……っ、まだ……です……!」
叔父の容赦ない煽りと冷徹な言葉は、レオの脳髄を確実に抉った。
だが、今のレオはその煽りすらも己の狂気的な独占欲の糧へと変換する。
「私は――絶対に、彼女を誰にも渡しはしない!!」
冷酷な軍師からの怒号と煽りをその身に浴びながら、レオはさらに昏く、鋭い執念を瞳に宿し、再び泥を蹴って実戦演習の渦中へと突き進んでいくのだった。