記憶の檻に世界で一番甘い初恋を-7日ごとに貴方に恋する-
最愛を奪われたアルヴィーノの手筈は、文字通り世界を滅ぼす嵐のようだった。
アルフレッドが国家権力すらその手で歪めて完全な包囲網を敷き、アルヴィーノ直属の精鋭実行部隊が動く。拉致からわずか2時間――彼らはルミが囚われている廃倉庫の地下室を完全に特定し、物理的に圧殺した。
鉄製の重い扉が、内部の空気を爆発させるほどの凄まじい衝撃と共に吹き飛ぶ。
「ひっ……!? な、なんだ、お前ら――」
銃声をあげる一瞬の猶予すら与えなかった。部屋に踏み込んだ黒服の男たちが、ルミを監禁していた大人たちを容赦なく床にねじ伏せる。肉が潰れ、骨が砕ける鈍い音が地下室に冷たく響き渡った。
その阿鼻叫喚の地獄の真ん中を、硝煙の煙を割って、冷徹な足音を響かせながら歩いてくる男がいた。
漆黒の高級スリーピーススーツ。ネクタイは微かに緩み、その切れ長の紫の瞳には、この世のすべての生命を価値なきゴミクズとしか見なしていないような、絶対的な殺意と狂気が宿っている。
「……ルミ」
アルヴィーノが、低く、掠れた声でその名を呼んだ。
部屋の最奥、冷たいパイプ椅子に無残に縛り付けられている、小さな影。
けれど、その姿を視界に捉えた瞬間、あの冷徹無比な天才、アルヴィーノの身体が、生まれて初めて「恐怖」という名の氷によって完全に凍りついた。
「ぁ……」
ルミは、ピクリとも動かなかった。
つい数日前、アルヴィーノが「お前を世界で一番美しく装おう」と、ミリ単位までこだわって仕立てさせた真っ白なロリータ服。それは今や冷たい泥にまみれ、無理やり目を開けさせられた時に流れた涙の痕で汚れ、無惨に引き裂かれていた。
細く折れそうな手首には鉄の手錠が深く食い込み、痛々しい赤黒い鬱血の痕を作っている。
だが、何よりもアルヴィーノの魂を絶望の底へと叩き落としたのは、ルミの「目」だった。
大きく見開かれたその水色の瞳には、何の感情も、光も、映っていなかった。
アルヴィーノが近づいても、怯えもしなければ、喜びもしない。ただ、光を失ったガラス玉のように虚ろに、虚空を見つめている。
その脳内では、今も凄まじい速度で、無理やり詰め込まれた何万桁もの冷たい違法データ、企業の暗号文字列が、網膜の裏で無限に明滅を繰り返しているのだ。
「ルミ、私だ。アルヴィーノだ……! 迎えに来た。おい、私を見ろ!!」
アルヴィーノはなりふり構わずルミの前に膝をつくと、手錠の鎖を力任せに叩き割り、その細い肩を強く、壊さんばかりに抱きしめた。
いつもなら、すぐに「アルヴィーノさん……っ」と泣きついて、その胸に顔を埋めて甘えてくるはずの、愛おしい小さな身体。
けれど今のルミは、抱きしめられても、まるで精巧に作られたプラスチックの人形のように、ただ冷たく、ぐったりとアルヴィーノの腕に身を預けるだけだった。
「……う、そ……データが、いっぱい……。コード、4、8、2……裏金、口座……。消えちゃう、アルヴィーノの、かお、きえちゃう……」
ルミの青白い薄い唇から、うわ言のように呪わしい数字の羅列が溢れ出す。
一度見たものは二度と消せないルミの絶対記憶。
暴力的に注ぎ込まれた泥水のようなデータが、ルミの脳内を完全に占拠し、ここ数日間の「真っ白で甘い生活」の記憶を、奥底へ、奥底へと完全に押し流して、上書きしてしまったのだ。
「……ぁ……あ」
アルヴィーノは目を見開いたまま、言葉を失った。
あの、マカロンを食べて嬉しそうに笑っていたルミが。自分の胸の中で、安らぎに満ちた顔で「おやすみなさい」と囁いてくれたルミが。
自分のたった一瞬の油断のせいで、再び「データのゴミ箱」へと引きずり落とされてしまった。
胸の奥から、経験したことのないような、ドス黒い怒りと絶望が濁流となってせり上がってくる。
アルヴィーノの腕にじわじわと常軌を逸した力がこもり、ルミを壊すほどの強さで抱きしめながら、その紫の瞳が、床にねじ伏せられている男たちへと向けられた。
「お前たち、が……」
その声は、もはや人間の紡ぐそれではなかった。
地獄の底から響く、魔王の呪詛。
「私のルミの頭に、そんなゴミを詰め込んだのか。……私との記憶を、お前たちの汚い泥で塗り潰したのか……っ!!」
「あ、ぎゃああっ!?」
アルヴィーノの明確な合図を待たず、殺気を察した黒服たちが男たちの四肢を容赦なく踏み砕く。だが、そんな生ぬるい暴力で、アルヴィーノの狂気が収まるはずがなかった。
「レオ。この者たちの親族、関係企業、資産、戸籍、すべてを調べ上げろ。明日までに、この世からその存在の形跡ごと、文字通り『塵』にしてすり潰してやる」
冷酷非情な命令を下しながらも、アルヴィーノは震える手で、ルミの虚ろな頬を何度も、何度も愛おしそうに撫でた。
「ルミ……ルミ、すまない……。だが、大丈夫だ。どんな泥でお前が汚されようと、私がすべて、何度でも奪い返してやる。お前の頭の中を、もう一度、私だけの記憶で塗り潰してやるからな……っ」
光を失った少年を、漆黒のスーツの男が、狂気的な愛を込めて暗闇の奥へと抱きかかえていく。
すべてを上書きされたルミと、それをさらに「過剰な愛」で上書きし返そうとするアルヴィーノの、本当の執着の物語が、ここから始まろうとしていた。
どれほど社会的に敵を抹殺しようとも、ルミの脳内に刻まれた傷(データ)が消えるわけではなかった。
都心の邸宅に戻ったアルヴィーノは、いつもなら完璧に整えられている上着もネクタイも乱暴に放り出し、ただ一心にルミを自らの寝室のベッドへ抱き上げていた。
カーテンが閉め切られた部屋の明かりは落とされ、濃密な静寂が満ちている。
けれど、ルミの薄い唇は、今も微かに震えながら冷たい文字列を紡ぎ続けていた。
「……コード、AB、セクターセブン……送金記録、4億、8千万……。違法、インサイダー、ルート、は……」
その水色の瞳は、至近距離にいるはずのアルヴィーノを映していない。一度開かれてしまった「生きたハードディスク」の回路は、過剰な情報に焼き切れそうになりながら、強制的にデータを再生し続けている。
まるで、そうして文字を紡ぎ続けていなければ、自分は存在してはいけないと怯えているかのように。
「ルミ」
アルヴィーノはベッドの縁に腰掛け、ルミの冷え切った小さな両手を、自分の大きな掌で包み込んだ。
そして、その震える唇を塞ぐように、優しく、けれどこれ以上ないほど深い口づけを交わす。
「……ん……っ……、コ、ード……」
唇が離れても、なお強迫観念に駆られたように数字を呟こうとするルミ。アルヴィーノはその額に、自分の額をぴったりと押し当てた。
切れ長の紫の瞳が、至近距離でルミの虚ろな瞳を真っ直ぐに見つめる。
「もういい」
その声は、ビジネスの場で見せる冷徹なものでも、先ほど廃倉庫で見せた独占欲に狂ったものでもなかった。
ただただ、世界で一番愛しい存在を慈しむ、低く、酷く穏やかな声音。
「もういいんだ、ルミ。……その数字を、これ以上お前が抱える必要はない」
ルミの瞳から、自覚のないまま大粒の涙が溢れ、枕を濡らしていく。
せっかく真っ白な服を着せてもらい、甘いマカロンの味を知ったのに、頭の中の引き出しはまた汚い泥で埋まってしまった。
「アルヴィーノ」という、自分の世界で一番大切だったはずの名前さえ、無数のデータの奥に埋もれて、見えなくなってしまいそうだった。
アルヴィーノは、ルミの頬を伝う涙を指先で丁寧に、何度も何度も拭う。
「叩かれなどしない。お前を傷つける有象無象は、私がこの手ですべて社会の塵に変えた。二度とお前の前に現れることはない」
「……ほんと、う……?」
ルミはかすれた声で呟き、ようやく、その虚ろな瞳の焦点をアルヴィーノへと向けた。
アルヴィーノはそんなルミの髪に愛おしそうに指を絡め、胸を締め付けられるような悲痛な声を絞り出す。
「本当です。お前が無理やり覚えさせられた汚いデータなど、私がすべて、これから毎日与える愛で押し流してやる。マカロンの味も、お洋服の選び方も、私の名前も……お前が忘れてしまったのなら、私が何度でも、一生をかけて教え直してやる。だから――」
アルヴィーノはルミの手をさらに強く握りしめ、その耳元で甘く、決定的な呪文を囁いた。
「全て忘れてしまっていい。私の腕の中で、眠りなさい」
その言葉は、ルミを縛る冷たいシステムを拒絶する、絶対的な抱擁だった。
アルヴィーノの言葉を聞いたルミは、張り詰めていた何かが切れたように小さく頷くと、ゆっくりとその目を閉じ、ぐったりと意識を失うように深い眠りへと落ちていった。
溢れ続ける涙の温もりだけを残して、ルミの脳内を支配していた冷たい数字の嵐が、静かに止まっていく。
アルヴィーノは眠りに就いた愛しい少年の身体をきつく抱きしめ、二度と誰にも触れさせないと誓うように、暗闇の中でいつまでもその背中を撫で続けるのだった。
アルフレッドが国家権力すらその手で歪めて完全な包囲網を敷き、アルヴィーノ直属の精鋭実行部隊が動く。拉致からわずか2時間――彼らはルミが囚われている廃倉庫の地下室を完全に特定し、物理的に圧殺した。
鉄製の重い扉が、内部の空気を爆発させるほどの凄まじい衝撃と共に吹き飛ぶ。
「ひっ……!? な、なんだ、お前ら――」
銃声をあげる一瞬の猶予すら与えなかった。部屋に踏み込んだ黒服の男たちが、ルミを監禁していた大人たちを容赦なく床にねじ伏せる。肉が潰れ、骨が砕ける鈍い音が地下室に冷たく響き渡った。
その阿鼻叫喚の地獄の真ん中を、硝煙の煙を割って、冷徹な足音を響かせながら歩いてくる男がいた。
漆黒の高級スリーピーススーツ。ネクタイは微かに緩み、その切れ長の紫の瞳には、この世のすべての生命を価値なきゴミクズとしか見なしていないような、絶対的な殺意と狂気が宿っている。
「……ルミ」
アルヴィーノが、低く、掠れた声でその名を呼んだ。
部屋の最奥、冷たいパイプ椅子に無残に縛り付けられている、小さな影。
けれど、その姿を視界に捉えた瞬間、あの冷徹無比な天才、アルヴィーノの身体が、生まれて初めて「恐怖」という名の氷によって完全に凍りついた。
「ぁ……」
ルミは、ピクリとも動かなかった。
つい数日前、アルヴィーノが「お前を世界で一番美しく装おう」と、ミリ単位までこだわって仕立てさせた真っ白なロリータ服。それは今や冷たい泥にまみれ、無理やり目を開けさせられた時に流れた涙の痕で汚れ、無惨に引き裂かれていた。
細く折れそうな手首には鉄の手錠が深く食い込み、痛々しい赤黒い鬱血の痕を作っている。
だが、何よりもアルヴィーノの魂を絶望の底へと叩き落としたのは、ルミの「目」だった。
大きく見開かれたその水色の瞳には、何の感情も、光も、映っていなかった。
アルヴィーノが近づいても、怯えもしなければ、喜びもしない。ただ、光を失ったガラス玉のように虚ろに、虚空を見つめている。
その脳内では、今も凄まじい速度で、無理やり詰め込まれた何万桁もの冷たい違法データ、企業の暗号文字列が、網膜の裏で無限に明滅を繰り返しているのだ。
「ルミ、私だ。アルヴィーノだ……! 迎えに来た。おい、私を見ろ!!」
アルヴィーノはなりふり構わずルミの前に膝をつくと、手錠の鎖を力任せに叩き割り、その細い肩を強く、壊さんばかりに抱きしめた。
いつもなら、すぐに「アルヴィーノさん……っ」と泣きついて、その胸に顔を埋めて甘えてくるはずの、愛おしい小さな身体。
けれど今のルミは、抱きしめられても、まるで精巧に作られたプラスチックの人形のように、ただ冷たく、ぐったりとアルヴィーノの腕に身を預けるだけだった。
「……う、そ……データが、いっぱい……。コード、4、8、2……裏金、口座……。消えちゃう、アルヴィーノの、かお、きえちゃう……」
ルミの青白い薄い唇から、うわ言のように呪わしい数字の羅列が溢れ出す。
一度見たものは二度と消せないルミの絶対記憶。
暴力的に注ぎ込まれた泥水のようなデータが、ルミの脳内を完全に占拠し、ここ数日間の「真っ白で甘い生活」の記憶を、奥底へ、奥底へと完全に押し流して、上書きしてしまったのだ。
「……ぁ……あ」
アルヴィーノは目を見開いたまま、言葉を失った。
あの、マカロンを食べて嬉しそうに笑っていたルミが。自分の胸の中で、安らぎに満ちた顔で「おやすみなさい」と囁いてくれたルミが。
自分のたった一瞬の油断のせいで、再び「データのゴミ箱」へと引きずり落とされてしまった。
胸の奥から、経験したことのないような、ドス黒い怒りと絶望が濁流となってせり上がってくる。
アルヴィーノの腕にじわじわと常軌を逸した力がこもり、ルミを壊すほどの強さで抱きしめながら、その紫の瞳が、床にねじ伏せられている男たちへと向けられた。
「お前たち、が……」
その声は、もはや人間の紡ぐそれではなかった。
地獄の底から響く、魔王の呪詛。
「私のルミの頭に、そんなゴミを詰め込んだのか。……私との記憶を、お前たちの汚い泥で塗り潰したのか……っ!!」
「あ、ぎゃああっ!?」
アルヴィーノの明確な合図を待たず、殺気を察した黒服たちが男たちの四肢を容赦なく踏み砕く。だが、そんな生ぬるい暴力で、アルヴィーノの狂気が収まるはずがなかった。
「レオ。この者たちの親族、関係企業、資産、戸籍、すべてを調べ上げろ。明日までに、この世からその存在の形跡ごと、文字通り『塵』にしてすり潰してやる」
冷酷非情な命令を下しながらも、アルヴィーノは震える手で、ルミの虚ろな頬を何度も、何度も愛おしそうに撫でた。
「ルミ……ルミ、すまない……。だが、大丈夫だ。どんな泥でお前が汚されようと、私がすべて、何度でも奪い返してやる。お前の頭の中を、もう一度、私だけの記憶で塗り潰してやるからな……っ」
光を失った少年を、漆黒のスーツの男が、狂気的な愛を込めて暗闇の奥へと抱きかかえていく。
すべてを上書きされたルミと、それをさらに「過剰な愛」で上書きし返そうとするアルヴィーノの、本当の執着の物語が、ここから始まろうとしていた。
どれほど社会的に敵を抹殺しようとも、ルミの脳内に刻まれた傷(データ)が消えるわけではなかった。
都心の邸宅に戻ったアルヴィーノは、いつもなら完璧に整えられている上着もネクタイも乱暴に放り出し、ただ一心にルミを自らの寝室のベッドへ抱き上げていた。
カーテンが閉め切られた部屋の明かりは落とされ、濃密な静寂が満ちている。
けれど、ルミの薄い唇は、今も微かに震えながら冷たい文字列を紡ぎ続けていた。
「……コード、AB、セクターセブン……送金記録、4億、8千万……。違法、インサイダー、ルート、は……」
その水色の瞳は、至近距離にいるはずのアルヴィーノを映していない。一度開かれてしまった「生きたハードディスク」の回路は、過剰な情報に焼き切れそうになりながら、強制的にデータを再生し続けている。
まるで、そうして文字を紡ぎ続けていなければ、自分は存在してはいけないと怯えているかのように。
「ルミ」
アルヴィーノはベッドの縁に腰掛け、ルミの冷え切った小さな両手を、自分の大きな掌で包み込んだ。
そして、その震える唇を塞ぐように、優しく、けれどこれ以上ないほど深い口づけを交わす。
「……ん……っ……、コ、ード……」
唇が離れても、なお強迫観念に駆られたように数字を呟こうとするルミ。アルヴィーノはその額に、自分の額をぴったりと押し当てた。
切れ長の紫の瞳が、至近距離でルミの虚ろな瞳を真っ直ぐに見つめる。
「もういい」
その声は、ビジネスの場で見せる冷徹なものでも、先ほど廃倉庫で見せた独占欲に狂ったものでもなかった。
ただただ、世界で一番愛しい存在を慈しむ、低く、酷く穏やかな声音。
「もういいんだ、ルミ。……その数字を、これ以上お前が抱える必要はない」
ルミの瞳から、自覚のないまま大粒の涙が溢れ、枕を濡らしていく。
せっかく真っ白な服を着せてもらい、甘いマカロンの味を知ったのに、頭の中の引き出しはまた汚い泥で埋まってしまった。
「アルヴィーノ」という、自分の世界で一番大切だったはずの名前さえ、無数のデータの奥に埋もれて、見えなくなってしまいそうだった。
アルヴィーノは、ルミの頬を伝う涙を指先で丁寧に、何度も何度も拭う。
「叩かれなどしない。お前を傷つける有象無象は、私がこの手ですべて社会の塵に変えた。二度とお前の前に現れることはない」
「……ほんと、う……?」
ルミはかすれた声で呟き、ようやく、その虚ろな瞳の焦点をアルヴィーノへと向けた。
アルヴィーノはそんなルミの髪に愛おしそうに指を絡め、胸を締め付けられるような悲痛な声を絞り出す。
「本当です。お前が無理やり覚えさせられた汚いデータなど、私がすべて、これから毎日与える愛で押し流してやる。マカロンの味も、お洋服の選び方も、私の名前も……お前が忘れてしまったのなら、私が何度でも、一生をかけて教え直してやる。だから――」
アルヴィーノはルミの手をさらに強く握りしめ、その耳元で甘く、決定的な呪文を囁いた。
「全て忘れてしまっていい。私の腕の中で、眠りなさい」
その言葉は、ルミを縛る冷たいシステムを拒絶する、絶対的な抱擁だった。
アルヴィーノの言葉を聞いたルミは、張り詰めていた何かが切れたように小さく頷くと、ゆっくりとその目を閉じ、ぐったりと意識を失うように深い眠りへと落ちていった。
溢れ続ける涙の温もりだけを残して、ルミの脳内を支配していた冷たい数字の嵐が、静かに止まっていく。
アルヴィーノは眠りに就いた愛しい少年の身体をきつく抱きしめ、二度と誰にも触れさせないと誓うように、暗闇の中でいつまでもその背中を撫で続けるのだった。