主と従者の檻に、世界で一番甘い誓いを
研究所の敷地に足を踏み入れた二人の間に、警備の兵士の姿はない。
おそらく中にはまだルミのデータを使い実験を繰り返している研究員たちがいるだろう。
もちろん実験体たちも。
しかし今の彼らにとってはそんな些細な事、どうでもよかった。
ここはルミにとって必要のない場所。
そしてやっと結ばれた二人の初めての共同作業を行う場所でしかなった。
「ここを壊せば……」
「怖いですか? ルミ」
「……うん……。でも、王子様がそばにいるから大丈夫」
ルミがアルヴィーノから贈られた黄金の杖を強く握りしめる。
杖の先端で魔力が共鳴し、ルミの瞳が闇の深淵を宿して怪しく輝いた。
「ルミ。その恐怖も今日で終わりです。……さあ、貴方の力を示してください。共に、この忌々しき記憶を終わらせましょう」
「うんっ! 見ててね、王子様!」
ルミは黄金の杖を高く掲げ、闇の魔力を一点に集中させた。
「――虚無へ還れ、永劫の暗影よ……エクレプス・オブ・ヴォイド!」
杖の先から放たれた黒い霧が研究所を飲み込み、建物の物理的な結合を根底から腐食させていく。
かつての実験の記憶さえも溶け落ちるような冷徹な静寂が広がる中、内部からは研究員たちの悲鳴が上がった。
「な、なんだこれは!? 壁が、壁が溶けている……!?」
「逃げろ! 早く外へ出ろ!」
建物が軋み、崩落が始まると、白衣を纏った研究員たちが蜘蛛の子を散らすように出口へと殺到する。
しかし、外に出た彼らが目にしたのは、冷ややかな瞳で崩壊を見守るアルヴィーノと、杖を構えたルミの姿だった。
アルヴィーノは逃げ惑う彼らを一瞥もせず、ルミの肩にそっと手を添える。
彼は全属性を掌握する魔力を、唯一愛する者のために選んだ炎へと収束させた。
「貴方の闇が礎を崩し、私の焔が全てを浄化する。――この罪、灰すらも残さぬほどに焼き尽くしましょう」
アルヴィーノが空中に向かって出現させた銀の杖をかざす。
「――裁きの理、天上の赫炎を以て罪を喰らえ。イグニス・ジャッジメント・ゼロ」
ルミが闇で侵食した隙間に、アルヴィーノの放つ黄金の炎が奔流となって叩き込まれる。
逃げ惑う研究員たちは、その圧倒的な魔力の奔流に飲み込まれ、声を上げる間もなく光の粒子となって崩壊に消えた。
凄まじい熱量が研究所を内部から爆ぜさせ、鉄も石も、過去の汚物もすべてが灰となって空へ舞い上がる。
倒壊の轟音が響く中、二人は手を取り合っていた。
ルミは黄金の杖の輝きと、アルヴィーノの放つ炎のコントラストを恍惚とした表情で見つめている。
「きれいだね、王子様」
「ええ。貴方の瞳に映るこの光景が、何よりも美しいですよ」
倒壊の轟音さえも、二人にとっては終焉を告げる祝祭の合図のように響く。
すべての痕跡が消え去り、そこにはただ、澄み切った更地だけが残されていた。
アルヴィーノはルミを抱き寄せ、その髪に唇を落とす。
「お疲れ様です。これで、貴方を縛るものの一つがなくなりましたね」
「うん。次はもっと悪い人たち、だね」
「ええ、そうです。そこを処分すれば貴方はもう何にも怯えることなく安心で穏やかな日々を私の隣で送れますからね」
「うんっ! 俺、頑張るね!」
二人は燃え盛る炎の余韻を背に、ゆっくりと次の処分対象となる貴族たちが待つ屋敷へと歩き出した。
おそらく中にはまだルミのデータを使い実験を繰り返している研究員たちがいるだろう。
もちろん実験体たちも。
しかし今の彼らにとってはそんな些細な事、どうでもよかった。
ここはルミにとって必要のない場所。
そしてやっと結ばれた二人の初めての共同作業を行う場所でしかなった。
「ここを壊せば……」
「怖いですか? ルミ」
「……うん……。でも、王子様がそばにいるから大丈夫」
ルミがアルヴィーノから贈られた黄金の杖を強く握りしめる。
杖の先端で魔力が共鳴し、ルミの瞳が闇の深淵を宿して怪しく輝いた。
「ルミ。その恐怖も今日で終わりです。……さあ、貴方の力を示してください。共に、この忌々しき記憶を終わらせましょう」
「うんっ! 見ててね、王子様!」
ルミは黄金の杖を高く掲げ、闇の魔力を一点に集中させた。
「――虚無へ還れ、永劫の暗影よ……エクレプス・オブ・ヴォイド!」
杖の先から放たれた黒い霧が研究所を飲み込み、建物の物理的な結合を根底から腐食させていく。
かつての実験の記憶さえも溶け落ちるような冷徹な静寂が広がる中、内部からは研究員たちの悲鳴が上がった。
「な、なんだこれは!? 壁が、壁が溶けている……!?」
「逃げろ! 早く外へ出ろ!」
建物が軋み、崩落が始まると、白衣を纏った研究員たちが蜘蛛の子を散らすように出口へと殺到する。
しかし、外に出た彼らが目にしたのは、冷ややかな瞳で崩壊を見守るアルヴィーノと、杖を構えたルミの姿だった。
アルヴィーノは逃げ惑う彼らを一瞥もせず、ルミの肩にそっと手を添える。
彼は全属性を掌握する魔力を、唯一愛する者のために選んだ炎へと収束させた。
「貴方の闇が礎を崩し、私の焔が全てを浄化する。――この罪、灰すらも残さぬほどに焼き尽くしましょう」
アルヴィーノが空中に向かって出現させた銀の杖をかざす。
「――裁きの理、天上の赫炎を以て罪を喰らえ。イグニス・ジャッジメント・ゼロ」
ルミが闇で侵食した隙間に、アルヴィーノの放つ黄金の炎が奔流となって叩き込まれる。
逃げ惑う研究員たちは、その圧倒的な魔力の奔流に飲み込まれ、声を上げる間もなく光の粒子となって崩壊に消えた。
凄まじい熱量が研究所を内部から爆ぜさせ、鉄も石も、過去の汚物もすべてが灰となって空へ舞い上がる。
倒壊の轟音が響く中、二人は手を取り合っていた。
ルミは黄金の杖の輝きと、アルヴィーノの放つ炎のコントラストを恍惚とした表情で見つめている。
「きれいだね、王子様」
「ええ。貴方の瞳に映るこの光景が、何よりも美しいですよ」
倒壊の轟音さえも、二人にとっては終焉を告げる祝祭の合図のように響く。
すべての痕跡が消え去り、そこにはただ、澄み切った更地だけが残されていた。
アルヴィーノはルミを抱き寄せ、その髪に唇を落とす。
「お疲れ様です。これで、貴方を縛るものの一つがなくなりましたね」
「うん。次はもっと悪い人たち、だね」
「ええ、そうです。そこを処分すれば貴方はもう何にも怯えることなく安心で穏やかな日々を私の隣で送れますからね」
「うんっ! 俺、頑張るね!」
二人は燃え盛る炎の余韻を背に、ゆっくりと次の処分対象となる貴族たちが待つ屋敷へと歩き出した。
