主と従者の檻に、世界で一番甘い誓いを
狂愛の檻と、光の揺り籠㊸
それから数ヶ月。
レイストール王国の平和を揺るがす数々の事件が綺麗に解決し、誰もが穏やかな日々を謳歌するようになった、ある日の午後。
かつて数々の激務を終え、今は平穏を取り戻したはずのアルフレッド王の執務室は、なぜか再び、別の意味で緊迫した熱気に包まれていた。
「――ですから、叔父上。リリィのあの白銀の髪と紅い瞳のコントラスト、そして私を頼るように見つめてくるあの愛らしい仕草は、世界中のどの宝石、どの芸術品よりも価値があると言っているのです! 先日のドレス姿など、もはや神話の女神そのものでした!」
机をバンと叩き、新緑の瞳を爛々と輝かせて熱弁を振るうのは、すっかり大人びた第一王子レオ。
「フン、若いですね、レオ。ルミの魅力はそんな一過性の派手さだけではありません。あの完璧に着こなされたフリルの美しさ、時折見せる年上としての包容力、そして私だけに向けられるあの無邪気な笑顔……。多角的な視点から見ても、ルミがこの世界で至高の存在であることは自明の理。貴方の身内贔屓には科学的根拠が足りません」
対するアルヴィーノも、白銀の軍服の襟元を優雅に整えながら、冷徹な口調で一歩も引かずに応戦する。
そう、ここは今や、どちらの伴侶が世界一可愛いかを競い合う「熾烈なマウント合戦」の最前線と化していた。
「……ねえ、二人とも。ここは一国の王が執務を行う、神聖な部屋なんだけどな……。そういう惚気は、自分の部屋か、庭の真ん中あたりでやってくれないかなぁ……」
山積みの書類を前に、アルフレッドは机に突っ伏して完全に頭を抱えていた。
せっかく書類仕事が早く終わりそうだったのに、突如乱入してきた息子と弟のせいで、全く集中できない。
「まぁまぁ、良いではありませんか。あんなにトゲトゲしていた二人が、今ではこんなに仲良く競い合えるようになったのですから」
そんな夫の肩を、王妃エルザはクスクスと上品に笑いながら、優しく揉んで慰める。エルザにとっては、この騒がしさこそが、命がけで守り抜いた「平和な日常」の象徴だった。
---
当事者である二人はというと――。
「えへへ、アルヴィーノ様ったら……。そんなに言われると照れちゃうよー」
ルミは自分の天青色のドレスの裾をつまんで小さくステップを踏みながら、嬉しそうにニコニコとアルヴィーノの言葉を聞いていた。男の娘としての自信に満ち溢れたその姿は、相変わらず無敵の愛らしさである。
一方、その隣では。
「……っ、う、うぅ……っ」
リリィがゆで卵のように顔を真っ赤にして、完全にオーバーヒートしていた。
レオのストレートすぎる「世界一可愛い」「女神」という賛辞の嵐に、恥ずかしさのあまり一言も喋れなくなり、両手で顔を覆って黙り込んでしまっている。
「ほら見なさい、レオ。貴方が大声を出すから、リリィが困っているでしょう」
「これは困っているのではなく、私の愛の深さに感じ入っているのです! ルミにぃのように煽り耐性が高いわけではありません!」
「なんですって?」
「あああ……もう、誰か彼らを連れ出してくれ……」
再びヒートアップする若き魔王の雛と天才軍師。
そんな二人を、呆れる王と、微笑む王妃、楽しむ男の娘と、恥ずかしがる少女が囲んでいる。
かつて冷たい檻と孤独に囚われていた子供たちは、もうどこにもいない。
騒がしくも、呆れるほどに温かい、絶対的な幸福の歯車は、今日もこの国で賑やかに回り続けている。
それから数ヶ月。
レイストール王国の平和を揺るがす数々の事件が綺麗に解決し、誰もが穏やかな日々を謳歌するようになった、ある日の午後。
かつて数々の激務を終え、今は平穏を取り戻したはずのアルフレッド王の執務室は、なぜか再び、別の意味で緊迫した熱気に包まれていた。
「――ですから、叔父上。リリィのあの白銀の髪と紅い瞳のコントラスト、そして私を頼るように見つめてくるあの愛らしい仕草は、世界中のどの宝石、どの芸術品よりも価値があると言っているのです! 先日のドレス姿など、もはや神話の女神そのものでした!」
机をバンと叩き、新緑の瞳を爛々と輝かせて熱弁を振るうのは、すっかり大人びた第一王子レオ。
「フン、若いですね、レオ。ルミの魅力はそんな一過性の派手さだけではありません。あの完璧に着こなされたフリルの美しさ、時折見せる年上としての包容力、そして私だけに向けられるあの無邪気な笑顔……。多角的な視点から見ても、ルミがこの世界で至高の存在であることは自明の理。貴方の身内贔屓には科学的根拠が足りません」
対するアルヴィーノも、白銀の軍服の襟元を優雅に整えながら、冷徹な口調で一歩も引かずに応戦する。
そう、ここは今や、どちらの伴侶が世界一可愛いかを競い合う「熾烈なマウント合戦」の最前線と化していた。
「……ねえ、二人とも。ここは一国の王が執務を行う、神聖な部屋なんだけどな……。そういう惚気は、自分の部屋か、庭の真ん中あたりでやってくれないかなぁ……」
山積みの書類を前に、アルフレッドは机に突っ伏して完全に頭を抱えていた。
せっかく書類仕事が早く終わりそうだったのに、突如乱入してきた息子と弟のせいで、全く集中できない。
「まぁまぁ、良いではありませんか。あんなにトゲトゲしていた二人が、今ではこんなに仲良く競い合えるようになったのですから」
そんな夫の肩を、王妃エルザはクスクスと上品に笑いながら、優しく揉んで慰める。エルザにとっては、この騒がしさこそが、命がけで守り抜いた「平和な日常」の象徴だった。
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当事者である二人はというと――。
「えへへ、アルヴィーノ様ったら……。そんなに言われると照れちゃうよー」
ルミは自分の天青色のドレスの裾をつまんで小さくステップを踏みながら、嬉しそうにニコニコとアルヴィーノの言葉を聞いていた。男の娘としての自信に満ち溢れたその姿は、相変わらず無敵の愛らしさである。
一方、その隣では。
「……っ、う、うぅ……っ」
リリィがゆで卵のように顔を真っ赤にして、完全にオーバーヒートしていた。
レオのストレートすぎる「世界一可愛い」「女神」という賛辞の嵐に、恥ずかしさのあまり一言も喋れなくなり、両手で顔を覆って黙り込んでしまっている。
「ほら見なさい、レオ。貴方が大声を出すから、リリィが困っているでしょう」
「これは困っているのではなく、私の愛の深さに感じ入っているのです! ルミにぃのように煽り耐性が高いわけではありません!」
「なんですって?」
「あああ……もう、誰か彼らを連れ出してくれ……」
再びヒートアップする若き魔王の雛と天才軍師。
そんな二人を、呆れる王と、微笑む王妃、楽しむ男の娘と、恥ずかしがる少女が囲んでいる。
かつて冷たい檻と孤独に囚われていた子供たちは、もうどこにもいない。
騒がしくも、呆れるほどに温かい、絶対的な幸福の歯車は、今日もこの国で賑やかに回り続けている。
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