主と従者の檻に、世界で一番甘い誓いを
狂愛の檻と、光の揺り籠㊶
賑やかな音楽と、眩いきらめきに満ちていた舞踏会が幕を閉じ、王宮は静謐な夜の静けさを取り戻していた。
レオの部屋に戻り、ドレスから着心地の良い柔らかな寝衣へと着替えたリリィは、大きなふかふかのベッドの上で、未だにトクトクと早く刻まれる自身の鼓動を聞いていた。
(……まるで、夢の中にいるみたいでした……っ)
目を閉じれば、今でも鮮やかに蘇る。
たくさんの大人たちに囲まれたフロアの中心で、自分を優しく、力強くリードしてくれたレオの温かい手。
自分だけを真っ直ぐに見つめてくれた、あの新緑の瞳。
世界で一番綺麗だと祝福されているような、あの夢のような時間の余韻が、今も身体の芯に残って熱を持っている。
リリィは胸元にシーツをぎゅっと抱きしめ、ゴロンとベッドの上を転がった。
「ふふ……っ、ふふふ……」
思い出しては、抑えきれない幸せが胸の奥から溢れ出し、愛らしい笑みが何度も零れてしまう。
あんなにたくさんの人の前で、レオの婚約者としてお披露目されたのだ。
もう二度と、あの暗い檻に引き裂かれることもない。その絶対的な安心感と幸福感に、リリィの心は満たされていた。
カチャ、と静かな部屋に、扉の開く小さな音が響いた。
「ただいま戻りました、リリィ。……まだ、起きていましたか?」
入ってきたのは、最後まで残っていた貴族たちの見送りをすべて終え、ようやく戻ってきたレオだった。
上着のボタンを少しだけ緩め、流石に少し疲れた様子を見せながらも、リリィの姿を認めると、その新緑の瞳がすぐに優しく和らぐ。
ベッドの上でだらしなく転がっていたリリィは、愛しい婚約者の帰還に、驚いたように勢いよく跳ね起きた。
そして、ベッドからトトトッと小さな足取りで滑り降りると、レオの元へと真っ直ぐに駆け寄っていく。
「レオ様……! おかえりなさい、です……! おみおくり、たくさん……お疲れ様でした……っ」
レオの前に立ち、見上げるようにして一生懸命に労いの言葉を紡ぐリリィ。
その紅い瞳は、さっきまでベッドで悶えていたせいで少し潤んでおり、頬はまだ夢の余韻でほんのりと桜色に染まったままだった。
「ただいま、リリィ。待たせてしまいましたね」
駆け寄ってきたリリィの小さな身体を、レオは愛おしさを抑えきれない様子で、そっとその逞しい両腕の中に抱きすくめた。
腕の中にすっぽりと収まる、柔らかで温かな体温。
ドレスを脱いで寝衣姿になったリリィからは、いつも彼女が使っている石鹸の、 どこか甘く優しい香りがふわりと鼻腔をくすぐる。
(――ああ、愛しい。堪らなく、愛しいな……)
昼間の舞踏会で、世界中の誰よりも美しく輝いていた彼女。
たくさんの人々の前で、自分の伴侶として堂々と手を繋いだ彼女。
それが今、この静かな夜の部屋で、自分だけの帰りをこうして健気に待ってくれている。
その事実だけで、レオの胸には言葉にならないほどの独占欲と、深い愛情が満ち満ちていった。
「レオ、様……?」
突然強く抱きしめられ、リリィがレオの胸元で小さく声を漏らす。
レオは腕の力を少しだけ緩めると、リリィの白銀の髪にそっと触れ、その愛らしい顔を手のひらで優しく包み込んで持ち上げた。
至近距離で重なり合う、新緑の瞳と紅い瞳。
「リリィ。今日の貴方は、本当に……世界中のどんな宝石よりも、誰よりも美しかった。私のために、あの仕立てたドレスを纏ってくれて、ありがとう」
「あ、あの……それは、レオ様が……たくさん、お勉強して……選んでくださったから、です……っ」
「いいえ、貴方だからあんなに美しく着こなせたのですよ。……あの広いフロアで、貴方の手を引いて踊っている時、私は確信しました。貴方を私の伴侶として迎えられる私は、この世界で一番の幸せ者です」
レオは熱を帯びた声で、心からの甘い言葉を一つ一つ、リリィの耳元へ、唇へと、蕩けるように囁いていく。
言葉が紡がれるたびに、リリィの白い頬はますます赤く染まり、その紅い瞳が熱っぽく潤んでいった。
「もう誰にも、貴方を渡さない。貴方は私のものだ、リリィ……。心の底から、貴方を愛しています」
「わたしも……わたしも、レオ様を……あいして、います……っ」
愛の誓いを確認し合うように、リリィが恥ずかしそうに、けれど真っ直ぐに想いを返してくれた瞬間。
レオはそれ以上、愛おしさを我慢することができなかった。
そっと顔を近づけ、リリィの少し開いた愛らしい唇に、自身の唇を優しく重ね合わせる。
「……ん、……っ」
触れるだけの優しいキスから、やがて互いの体温を確かめ合うような、深く、甘いキスへ。何度も、何度も、角度を変えて、唇が触れ合う小気味よい音が静かな部屋に優しく響いていく。
リリィの小さな手が、レオの背中の服をぎゅっと掴み、彼に全てを委ねるようにその身体を預けてきた。
息が苦しくなるほど深く唇を重ねた後、名残惜しそうに唇を離すと、二人の間には細い銀の糸が微かに引いた。
リリィは完全に息を弾ませ、潤んだ瞳でレオをじっと見つめている。
レオはそんな彼女の額、目元、そして赤く腫れた唇に、もう一度優しく愛おしむように口づけを落とした。
「今夜は、まだ眠らせてあげませんよ、リリィ。……私だけの、可愛いリリィ」
優しく彼女の身体を横たえ、レオは夜の闇のなかで、最愛の少女を深く、どこまでも甘く甘く、抱き締め続けるのだった。
賑やかな音楽と、眩いきらめきに満ちていた舞踏会が幕を閉じ、王宮は静謐な夜の静けさを取り戻していた。
レオの部屋に戻り、ドレスから着心地の良い柔らかな寝衣へと着替えたリリィは、大きなふかふかのベッドの上で、未だにトクトクと早く刻まれる自身の鼓動を聞いていた。
(……まるで、夢の中にいるみたいでした……っ)
目を閉じれば、今でも鮮やかに蘇る。
たくさんの大人たちに囲まれたフロアの中心で、自分を優しく、力強くリードしてくれたレオの温かい手。
自分だけを真っ直ぐに見つめてくれた、あの新緑の瞳。
世界で一番綺麗だと祝福されているような、あの夢のような時間の余韻が、今も身体の芯に残って熱を持っている。
リリィは胸元にシーツをぎゅっと抱きしめ、ゴロンとベッドの上を転がった。
「ふふ……っ、ふふふ……」
思い出しては、抑えきれない幸せが胸の奥から溢れ出し、愛らしい笑みが何度も零れてしまう。
あんなにたくさんの人の前で、レオの婚約者としてお披露目されたのだ。
もう二度と、あの暗い檻に引き裂かれることもない。その絶対的な安心感と幸福感に、リリィの心は満たされていた。
カチャ、と静かな部屋に、扉の開く小さな音が響いた。
「ただいま戻りました、リリィ。……まだ、起きていましたか?」
入ってきたのは、最後まで残っていた貴族たちの見送りをすべて終え、ようやく戻ってきたレオだった。
上着のボタンを少しだけ緩め、流石に少し疲れた様子を見せながらも、リリィの姿を認めると、その新緑の瞳がすぐに優しく和らぐ。
ベッドの上でだらしなく転がっていたリリィは、愛しい婚約者の帰還に、驚いたように勢いよく跳ね起きた。
そして、ベッドからトトトッと小さな足取りで滑り降りると、レオの元へと真っ直ぐに駆け寄っていく。
「レオ様……! おかえりなさい、です……! おみおくり、たくさん……お疲れ様でした……っ」
レオの前に立ち、見上げるようにして一生懸命に労いの言葉を紡ぐリリィ。
その紅い瞳は、さっきまでベッドで悶えていたせいで少し潤んでおり、頬はまだ夢の余韻でほんのりと桜色に染まったままだった。
「ただいま、リリィ。待たせてしまいましたね」
駆け寄ってきたリリィの小さな身体を、レオは愛おしさを抑えきれない様子で、そっとその逞しい両腕の中に抱きすくめた。
腕の中にすっぽりと収まる、柔らかで温かな体温。
ドレスを脱いで寝衣姿になったリリィからは、いつも彼女が使っている石鹸の、 どこか甘く優しい香りがふわりと鼻腔をくすぐる。
(――ああ、愛しい。堪らなく、愛しいな……)
昼間の舞踏会で、世界中の誰よりも美しく輝いていた彼女。
たくさんの人々の前で、自分の伴侶として堂々と手を繋いだ彼女。
それが今、この静かな夜の部屋で、自分だけの帰りをこうして健気に待ってくれている。
その事実だけで、レオの胸には言葉にならないほどの独占欲と、深い愛情が満ち満ちていった。
「レオ、様……?」
突然強く抱きしめられ、リリィがレオの胸元で小さく声を漏らす。
レオは腕の力を少しだけ緩めると、リリィの白銀の髪にそっと触れ、その愛らしい顔を手のひらで優しく包み込んで持ち上げた。
至近距離で重なり合う、新緑の瞳と紅い瞳。
「リリィ。今日の貴方は、本当に……世界中のどんな宝石よりも、誰よりも美しかった。私のために、あの仕立てたドレスを纏ってくれて、ありがとう」
「あ、あの……それは、レオ様が……たくさん、お勉強して……選んでくださったから、です……っ」
「いいえ、貴方だからあんなに美しく着こなせたのですよ。……あの広いフロアで、貴方の手を引いて踊っている時、私は確信しました。貴方を私の伴侶として迎えられる私は、この世界で一番の幸せ者です」
レオは熱を帯びた声で、心からの甘い言葉を一つ一つ、リリィの耳元へ、唇へと、蕩けるように囁いていく。
言葉が紡がれるたびに、リリィの白い頬はますます赤く染まり、その紅い瞳が熱っぽく潤んでいった。
「もう誰にも、貴方を渡さない。貴方は私のものだ、リリィ……。心の底から、貴方を愛しています」
「わたしも……わたしも、レオ様を……あいして、います……っ」
愛の誓いを確認し合うように、リリィが恥ずかしそうに、けれど真っ直ぐに想いを返してくれた瞬間。
レオはそれ以上、愛おしさを我慢することができなかった。
そっと顔を近づけ、リリィの少し開いた愛らしい唇に、自身の唇を優しく重ね合わせる。
「……ん、……っ」
触れるだけの優しいキスから、やがて互いの体温を確かめ合うような、深く、甘いキスへ。何度も、何度も、角度を変えて、唇が触れ合う小気味よい音が静かな部屋に優しく響いていく。
リリィの小さな手が、レオの背中の服をぎゅっと掴み、彼に全てを委ねるようにその身体を預けてきた。
息が苦しくなるほど深く唇を重ねた後、名残惜しそうに唇を離すと、二人の間には細い銀の糸が微かに引いた。
リリィは完全に息を弾ませ、潤んだ瞳でレオをじっと見つめている。
レオはそんな彼女の額、目元、そして赤く腫れた唇に、もう一度優しく愛おしむように口づけを落とした。
「今夜は、まだ眠らせてあげませんよ、リリィ。……私だけの、可愛いリリィ」
優しく彼女の身体を横たえ、レオは夜の闇のなかで、最愛の少女を深く、どこまでも甘く甘く、抱き締め続けるのだった。
