主と従者の檻に、世界で一番甘い誓いを

狂愛の檻と、光の揺り籠⑬


――ずっと、この白くて冷たい場所が、わたしの世界のすべてだった。

物心がつく前から、わたしはあの城の最奥にある、高く聳え立つ白亜の塔に閉じ込められていた。
窓から見える景色は、切り取られた四角い空と、遥か下に見える薔薇園だけ。

お母様は、わたしがまだ幼い頃に殺されてしまった。
なぜ殺されなければならなかったのか、誰も教えてはくれない。
ただ、この国の頂点に君臨する偉い王様が、わたしの本当のお父様なのだということだけは、風の噂で知っていた。

けれど、実の父親にとって、わたしは「存在してはならない不浄の子供」でしかないらしかった。

塔に運ばれてくる食事は、いつも冷え切った、誰かの食べ残しのようなものばかり。
スープは薄く、パンは石のように硬かった。
それでも、わたしが腐っても王の血を引く「姫」だからという、歪んだ体裁のためだけに、与えられる衣服だけはいつも、白くて綺麗なドレスだった。

「リリィ。あなたには、その初雪の髪と、呪われた血の瞳がある。決して誰の目にも触れてはなりませんよ」

週に数度、食事を運んでくる侍女たちの冷ややかな視線と、重苦しい沈黙。それがわたしの日常だった。
あの日も、わたしは許された僅かな時間だけ、塔のふもとに広がる薔薇園を静かに歩いていた。
人目を忍び、生垣の陰を隠れるようにして進むだけの、いつもの退屈で寂しい散歩。

そこで、出会ったのだ。

大理石の噴水の傍らで、ぽつんと佇んでいた一人の男の子。
きらきらとした、けれどどこか生気を失った新緑の瞳。
仕立ての良い、真っ白な王子様の服を着たその人は、まるで世界のすべてに拒絶されたかのような、ひどく悲しそうな瞳をしていた。

いつも檻の中にいるわたしよりも、ずっと、ずっと寂しそうな背中。

(……放っておけない)

見つかったら、また叱られて、暗い部屋に閉じ込められてしまうかもしれない。
そう思ったけれど、どうしても足が動かなかった。
気づけば、わたしはおずおずと生垣の陰から這い出し、その人のもとへと歩み寄っていた。

「だ、だいじょーぶ……ですか……?」

勇気を出して、声をかけた。
振り返ったその人は、驚いたように真っ直ぐにわたしを見つめてくれた。その新緑の瞳に、わたしの真っ赤な瞳が映る。

その人は、わたしを拒絶しなかった。
「呪われた血の瞳」と蔑まれるわたしの目を、ただ静かに見つめ返し、答えてくれたのだ。

『待っていた、ずっと』

紡がれた言葉は、とても優しかった。
けれど、その響きは、胸が締め付けられるほどに酷く悲しい色を帯びていた。
誰かを激しく求め、そして、完璧に引き裂かれてしまったかのような、痛々しい拒絶の残影。

城の人の声が聞こえて、わたしは怖くなってすぐに逃げ出してしまったけれど。
冷たい塔のベッドに横たわる今も、わたしの胸の奥には、あの新緑の瞳をした悲しい王子様の残像が、消えない灯火のように、ずっと温かく残り続けている。
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