主と従者の檻に、世界で一番甘い誓いを

そしてルミは、上空から弾丸のように割り込み、アルヴィーノを庇うようにして、その身に直撃の魔導光線をまともに食らった。
​凄まじい衝撃波。
崩落する天井。
地面がえぐれ、兵士たちが一斉に吹き飛ぶ。
光が収まったとき、そこには肉を焼く嫌な匂いと、信じられないほどの量の鮮血が広がっていた。

この一瞬で何が起こったのか。
死ぬはずだった自分がこうして無傷で立っている。
一体何がどうなっている?
なぜ、私が生きているんだ?

そう思考を巡らせたとき、ふと閃光が弾ける寸前に聞こえた声を思い出す。
それはあれから聞いていなかったルミの心からの叫び声。
まさかそんなはずない。
彼はいま前線にいるはず、と視線を地面へ落とすとそこには糸の切れた人形のように地面に倒れ伏すルミがいた。
真っ白だったはずの服は、瞬く間にドス黒い赤に染まっていく。

​「あ……、が……っ、お、うじ……さま……」

​ルミの小さな身体が、ガタガタと痙攣している。
その瞬間アルヴィーノの頭の中で、これまで精緻に組み立てられていたすべての計画、数式、野心、冷徹な思考回路が、音を立てて完全に崩壊した。

​(……なんだ、この感情は)

​胸が焼けるように痛い。
呼吸が乱れる。
視界が揺れる。

​(やめろ……やめろ……やめろ……! 死ぬな……! 私の……ルミ……!)

​「ルミ……ッ!!」

​優雅な王子、冷徹な軍師の姿はそこにはなかった。
アルヴィーノは泥まみれの地面にスライディングするようにしてルミに駆け寄り、その身体を抱き起こした。
手が、ガタガタと震える。
​自分の手がこんなに震えるなんて、これまでの人生で一度もなかった。

​「目を開けなさい、ルミ! 許可なく眠ることは許しません! ルミ!!」

​周囲の部下たちが「殿下、危険です、一度退避を!」と叫ぶ声を、アルヴィーノは黙れ!!と聞いたこともないような怒号で撥ね退け、自身が使える魔法を頭の中で瞬時に並び立てる。
その中にルミを助けられる術があるはずだと。
けれど彼が使える術式にそんなものなどなかった。
なぜなら彼が習得した術は全て邪魔なものを殲滅するための攻撃に特化したものばかりだったからで。

​「……ッ! 医官を呼べ!!早くしろ!!この子が死んだら、お前たちを全員一族もろとも八つ裂きにしてやる……ッ!!!」

アルヴィーノは声の限り叫ぶ。
後方にいるまだ残っている兵たちに。
​その叫びは、もはや理性の欠片もなかった。
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