孤独な神官は幼鬼に絆される
「あー! ラヴィニア様ー! 遅いですよー!」
「すまない。野暮用でな。今日のスケジュールを」
「はーい」
今日はですねーと遅れて私室へ来た私にエリシアは予定を伝えてくる。
今日の処刑場当番はなし。
その代わり大量の書類の片付けとその他雑用が待っていた。
深いため息をついたあと私は早速書類の片付けに手を付ける。
いつもどおり仕分けをしていらない書類はエリシアに処分させ、承認した書類や再検討の書類は別にしてある程度溜まったのを確認したら提出してきた人たちに返していく。
その道中。
「神官ラヴィニア様!」
「何用だ。手短に話せ」
突然城の衛兵に声をかけられ振り返ると彼は私に跪き、頭を垂れ緊急事態でしてと話しを始めた。
「は、はいっ。至急、処刑場へいらしてほしいとのことでして……」
「今日は私ではないだろう? それに今日の処刑はないはずだ」
「そ、それが、リジー執行官が……」
「チッ……あいつか。あれがなにかしたのか?」
「勝手に異形者の処刑を行っておりまして……。誰もあの方を止めることができず……」
「それで私に、ということか。わかった。すぐに行くと伝えておけ」
「はっ……!」
めんどくさい、と思いながら私は私室へ戻る。
突然戻ってきた私を見たエリシアは大きな瞳をさらに大きく見開きどうしたんですか?と駆け寄ってきた。
「あれ? ラヴィニア様、お早いですね」
「あの馬鹿が暴れているらしい。止めるのも私の仕事だからな」
「では、久々にラヴィニア様の勇姿を拝めるのですね! 私もいきます!」
「好きにしろ」
キャッキャっとはしゃいでいるエリシアに簡単にそう伝えると杖を手に処刑場へと向かう。
そこには勝手に処刑されようとしている異形者たちを守るようにリジーと対峙する王子とそのお付きがいて。
王子はリジーにこんなことやめて!と叫んでいるけれど彼は聞く耳を持たないようだった。
私はその間に入ると王子たちを背に庇いリジーに杖を突きつけここから退けと警告をした。
「おっとー? ラヴィちゃん、来るの早いなぁ。ねぇ、僕と一緒に処刑やろうよ! 一人二人殺したところでバレやしないって!」
「私の警告を聞いてなかったのか? さっさとこの場を去れ、リジー・サーペント」
「それは出来ないなぁ。だってせっかくラヴィちゃんが来てくれたんだし、ね?」
「これは王室神官ラヴィニア・ユーフェンからの命である。貴様に拒否する権利はない。万が一警告を無視するようであれば私は貴様を実力にて排除する」
再度そう警告するとリジーはいいねぇと舌なめずりをすると自分の武器であるサーベルを構え臨戦態勢に入った。
そんな彼に仕方ないとため息をつき、後ろの王子たちに少し後ろに下がっててほしいと伝える。
「ラヴィニアさん、ごめん……」
「構わない。……ラグナは?」
「あの子は大丈夫。俺の部屋でぐっすり眠ってるから」
「そう。ならいい」
それだけ聞ければ十分だと私は杖を構えると一気に駆け出す。
リジーは一瞬怯んだが少し後ろに退いてから振り下ろした私の杖をサーベルで受け止めそのまま押し返してくる。
押し返された瞬間リジーの右腕めがけて蹴りを一発お見舞いすると元の場所へ着地し再び駆け出し杖を振るう。
キーンキーンとサーベルと交わる度に金属音が会場に鳴り響く。
そうして交わらせていくと一瞬の隙をつきサーベルを下から跳ね上げるように弾き飛ばす。
武器のなくなった彼はやべっと更に怯んで後ろに退こうとした足を払い、杖を腹に思いっきり叩きつけると彼は簡単に地面に倒れ起き上がろうとしてきたところを先端を突きつけ、しまいだと見下ろした。
「はぁはぁっ……ラヴィちゃん、っ、やるねぇ……っ。てっきり戦闘に駆り出されてないから鈍ってると思ってたよ?」
「舐められたものだな。王室神官であるこの私が貴様如きに伏せられるわけないだろう?」
「言ってくれるねぇ……」
今日こそ勝てると思ったのになぁとリジーは抵抗を無くし力なくその場に倒れていて。
それでも私が杖を離さないのはこいつがちゃんと降参したのを見ていないからで。
リジーは察して降参だよといつものように片手をひらひらさせてきて、それを見て杖を退かすと私の手を煩わせるなと告げ王子たちのところへ戻っていった。
「はぁ〜あ。今日こそせめてラヴィちゃんのフードくらいは取らせることができるかなぁって思ってたんだけどなぁ。てかそんな重そうな装備でよくあんなに動けるよね」
「貴様は雑な動きが多いんだ。それにわかりやすい」
「ちぇ〜」
手厳しいなぁ、とぼやきながらリジーは処刑場をあとにし、その背を見送るともう大丈夫だと王子たちに声をかけた。
「ありがとう、ラヴィニアさん……」
「構わない。それより早くラグナのところに戻って欲しい。彼らは私が収容所に戻しておく」
「あ、いや、それなんだけど、この人たち、あの塔につれていきたいんだ。ウィードがまた来たときに封印してもらうために…… 」
「それで?」
「ラヴィニアさんにお願いできないかなって……」
「は?」
だめかな?と申し訳なさそうに私を見てくる王子にさすがにそれは承認しかねると伝えエリシアを傍に呼ぶ。
エリシアはテンション高めになんですかー?と私の傍にくると王子たちに気づきこれはこれはと恭しく頭を下げ私に何か用ですかー?と首を傾げた。
「エリシア、諸々の事情は王子たちに聞いてくれ。私は私室へ戻る。あ~、その前にあの馬鹿のことを王へ報告せねば……クソッ……」
仕事を増やしやがってと思いながら私はエリシアにこの場を任せて謁見の間へと向かった。
「すまない。野暮用でな。今日のスケジュールを」
「はーい」
今日はですねーと遅れて私室へ来た私にエリシアは予定を伝えてくる。
今日の処刑場当番はなし。
その代わり大量の書類の片付けとその他雑用が待っていた。
深いため息をついたあと私は早速書類の片付けに手を付ける。
いつもどおり仕分けをしていらない書類はエリシアに処分させ、承認した書類や再検討の書類は別にしてある程度溜まったのを確認したら提出してきた人たちに返していく。
その道中。
「神官ラヴィニア様!」
「何用だ。手短に話せ」
突然城の衛兵に声をかけられ振り返ると彼は私に跪き、頭を垂れ緊急事態でしてと話しを始めた。
「は、はいっ。至急、処刑場へいらしてほしいとのことでして……」
「今日は私ではないだろう? それに今日の処刑はないはずだ」
「そ、それが、リジー執行官が……」
「チッ……あいつか。あれがなにかしたのか?」
「勝手に異形者の処刑を行っておりまして……。誰もあの方を止めることができず……」
「それで私に、ということか。わかった。すぐに行くと伝えておけ」
「はっ……!」
めんどくさい、と思いながら私は私室へ戻る。
突然戻ってきた私を見たエリシアは大きな瞳をさらに大きく見開きどうしたんですか?と駆け寄ってきた。
「あれ? ラヴィニア様、お早いですね」
「あの馬鹿が暴れているらしい。止めるのも私の仕事だからな」
「では、久々にラヴィニア様の勇姿を拝めるのですね! 私もいきます!」
「好きにしろ」
キャッキャっとはしゃいでいるエリシアに簡単にそう伝えると杖を手に処刑場へと向かう。
そこには勝手に処刑されようとしている異形者たちを守るようにリジーと対峙する王子とそのお付きがいて。
王子はリジーにこんなことやめて!と叫んでいるけれど彼は聞く耳を持たないようだった。
私はその間に入ると王子たちを背に庇いリジーに杖を突きつけここから退けと警告をした。
「おっとー? ラヴィちゃん、来るの早いなぁ。ねぇ、僕と一緒に処刑やろうよ! 一人二人殺したところでバレやしないって!」
「私の警告を聞いてなかったのか? さっさとこの場を去れ、リジー・サーペント」
「それは出来ないなぁ。だってせっかくラヴィちゃんが来てくれたんだし、ね?」
「これは王室神官ラヴィニア・ユーフェンからの命である。貴様に拒否する権利はない。万が一警告を無視するようであれば私は貴様を実力にて排除する」
再度そう警告するとリジーはいいねぇと舌なめずりをすると自分の武器であるサーベルを構え臨戦態勢に入った。
そんな彼に仕方ないとため息をつき、後ろの王子たちに少し後ろに下がっててほしいと伝える。
「ラヴィニアさん、ごめん……」
「構わない。……ラグナは?」
「あの子は大丈夫。俺の部屋でぐっすり眠ってるから」
「そう。ならいい」
それだけ聞ければ十分だと私は杖を構えると一気に駆け出す。
リジーは一瞬怯んだが少し後ろに退いてから振り下ろした私の杖をサーベルで受け止めそのまま押し返してくる。
押し返された瞬間リジーの右腕めがけて蹴りを一発お見舞いすると元の場所へ着地し再び駆け出し杖を振るう。
キーンキーンとサーベルと交わる度に金属音が会場に鳴り響く。
そうして交わらせていくと一瞬の隙をつきサーベルを下から跳ね上げるように弾き飛ばす。
武器のなくなった彼はやべっと更に怯んで後ろに退こうとした足を払い、杖を腹に思いっきり叩きつけると彼は簡単に地面に倒れ起き上がろうとしてきたところを先端を突きつけ、しまいだと見下ろした。
「はぁはぁっ……ラヴィちゃん、っ、やるねぇ……っ。てっきり戦闘に駆り出されてないから鈍ってると思ってたよ?」
「舐められたものだな。王室神官であるこの私が貴様如きに伏せられるわけないだろう?」
「言ってくれるねぇ……」
今日こそ勝てると思ったのになぁとリジーは抵抗を無くし力なくその場に倒れていて。
それでも私が杖を離さないのはこいつがちゃんと降参したのを見ていないからで。
リジーは察して降参だよといつものように片手をひらひらさせてきて、それを見て杖を退かすと私の手を煩わせるなと告げ王子たちのところへ戻っていった。
「はぁ〜あ。今日こそせめてラヴィちゃんのフードくらいは取らせることができるかなぁって思ってたんだけどなぁ。てかそんな重そうな装備でよくあんなに動けるよね」
「貴様は雑な動きが多いんだ。それにわかりやすい」
「ちぇ〜」
手厳しいなぁ、とぼやきながらリジーは処刑場をあとにし、その背を見送るともう大丈夫だと王子たちに声をかけた。
「ありがとう、ラヴィニアさん……」
「構わない。それより早くラグナのところに戻って欲しい。彼らは私が収容所に戻しておく」
「あ、いや、それなんだけど、この人たち、あの塔につれていきたいんだ。ウィードがまた来たときに封印してもらうために…… 」
「それで?」
「ラヴィニアさんにお願いできないかなって……」
「は?」
だめかな?と申し訳なさそうに私を見てくる王子にさすがにそれは承認しかねると伝えエリシアを傍に呼ぶ。
エリシアはテンション高めになんですかー?と私の傍にくると王子たちに気づきこれはこれはと恭しく頭を下げ私に何か用ですかー?と首を傾げた。
「エリシア、諸々の事情は王子たちに聞いてくれ。私は私室へ戻る。あ~、その前にあの馬鹿のことを王へ報告せねば……クソッ……」
仕事を増やしやがってと思いながら私はエリシアにこの場を任せて謁見の間へと向かった。