孤独な神官は幼鬼に絆される

「やばいな」

可愛くてやばい。
ふわふわで細くて柔い銀色の髪の毛、少し触れただけでもわかるもちもちの肌。
あれはやばい。
まさに私が理想とする男の子。
これからどうするかと考えながらあの子が着れそうな服を探す。
白いTシャツを発見し、とりあえずこれでも着せとくかと脱衣所へ戻ると棚からバスタオルを取り、浴室に戻るとおとなしく彼はお風呂の中にいた。

「逆上せちゃうとつらいからそろそろあがろっか」
「あ、はい」

立ち上がり出てきた彼をふわふわのタオルで包み込んで水気を取ると持ってきたTシャツに着替えさせる。
下着はさすがにないので履かせてあげられないけれど。
そのまま髪を拭いてから手を引いてソファーに座らせるとドライヤーで乾かし完成。
思った通りふわふわの銀髪で、そしてやっぱり角がある。
見間違いじゃないかーと苦笑するも匿ってしまった以上仕方ない。
逃がせそうな頃合いまでここで匿い続けるしかないかと決意する。

「あの、おねーさん……。ありがとうございました……。ぼくを、たすけてくれて……」
「いや別に大したことはしてないって」
「あの、ぼく、ラグナっていいます。見ての通り、子鬼です……」
「ですよねー……」
「おねーさん、は……?」
「え? 私? 私はラヴィニアよ」
「らびにあさん……?」
「あー、そうね……。ニアでいいわ」
「にあさん……」

ラグナはそう私の名前を何度か繰り返したかと思うと、にあさん!と満面の笑みで見上げてきた。

「にあさんはおしごとなにされてるんですか?」
「城の神官よ。あんたを追いかけてきたやつらを束ねてるとこ」
「え……」

きらきらな笑顔が一変し、顔面蒼白になるラグナに私は差し出すつもりはないからと安心させるようにしゃがみこむけど体は震えてるし大きな瞳には涙も浮かんでる。
さっきまで自分を追いかけていたやつらの仲間。
それだけでこの小さな彼にはたまらなく恐怖だろう。
仕方ないと彼から離れてなにもしないからと両手を上げてみた。

「にあさん……こわいひとたちの、なかま……なんですよね……?」
「まぁ、そうね」
「でも、さっき、こわいひとたち、おいかえしてくれました、よね……? にあさん、そんなことしてだいじょーぶなんですか……?」
「まぁ、バレなきゃ大丈夫でしょ」

バレたらいろんな意味で終わる。
私のこの趣味嗜好は職場では隠し通しているから。
バレるわけにはいかないと心の中で思い、ラグナにはしばらく騒動が収まるまで家から出ないでほしいとだけ伝える。
彼は私の指示に小さく頷き、お世話になりますと深く頭を下げた。

「にあさん、なにかぼくにできることがあればいってくださいね!」
「いやでも、まだ小さい子供だし。そういえば子鬼って何ができるの?」
「えっと、ぼくはまだちいさくて、このくらいしか……」

そう言ってラグナは小さなかまいたちを発生させた。
その大きさは彼の小さな両手に収まるくらい小さくて。
可愛いと見ていると照れ臭そうに笑ってあまり見つめないでください……といわれてしまった。

「ぼく、むらではおちこぼれで……ずっとひとりぼっちで……。だから、にあさんのやくにたちたいんです! ぼくにできることならなんでもいってください!」
「なんでも……?」
「はい!」
「じゃあ一つお願いしようかしら」

じゃあこっちに来てと私はラグナを先にベッドに寝かせると隣に入って電気を消す。
それから小さな体を優しく抱きしめて今日はこうやって寝かせてと伝えると私はそのまま幸せな眠りに落ちた。
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