孤独な神官は幼鬼に絆される
──次の日。
「頭痛い……」
「大丈夫ですかー? ラヴィニア様ー?」
昨日の酒がまだ残っているのか頭が痛くて仕方ない。
ガンガン痛む頭を抑えながら私は本日も資料整理。
それと月一の神殿での集会が待っている。
異形がどうこう言う割には神やら天使やらを信仰しているこの国も世界も矛盾だらけだなと半ば呆れていた。
「エリシア、そろそろ行ってくる」
「はーい。行ってらっしゃいませー!」
壁に立てかけた杖を手に私は私室を後にすると城の傍にある神殿へと向かう。
神殿には既に他の神官たちが何人か集まっており私の姿を見るとみな、ラヴィニア様と頭を垂れてくる。
私は皆の間を通り自分の定位置である最前列へと進むと王妃を待った。
暫くしてやってきた王妃は何故か隣にリジーを連れていて、何故とざわつく私たちの間を通り抜け振り返ると静かにと告げた。
「今日は皆さんに大切なお話があってリジーを呼んだのです」
「大切な話……?」
「そう。ラヴィニア、貴女のことで」
「は……?」
王妃に名指しされ私はどういうことだと酷く動揺した。
それと同時に嫌な予感が頭に浮かんで胸がざわついて。
まさか、とリジーの方を見るとラヴィちゃんが悪いんだからね?と言わんばかりに笑うとリジーは王妃に促されるままとんでもないことを言い出した。
「王室神官たるラヴィニア様が異形を匿い、あろうことか生け捕りにした者を逃しているのです」と。
私はやはりかとぎりっと歯を食いしばるとリジーに襲いかかりたい気持ちを抑え平静を装うように私が?と返した。
「証拠もないというのにそんな世迷い言を。貴様はこの私を陥れようとしているのか?」
「そんな滅相もございませんよ、ラヴィニア様? でも僕は見ちゃったんですよ。貴女が異形と手を組んでこの国を滅ぼそうとしているところをね」
「は?」
「だって、ほら」
そう言ってリジーは私に襲い掛かってくると被っていたフードに手をかけ力任せに引っ張った。
咄嗟のことに反応できなかった私はあれほど嫌だった素顔を皆の前に晒してしまう。
初めて見る私の顔に、瞳に他の神官たちはざわつき、なんだあの瞳はと口々に言い合っていて。
「ご覧のとおり! この瞳はまるで異形そのもの! 彼女は人間の皮を被った異形なのです!」
「ち、ちが……っ、これ、は……っ」
「なんと醜い……。まさか異形がこの城に隠れていようとは……」
「違う……っ!! 私は……っ、私は化け物じゃないっ!! 」
見るなっ!と私はその場に蹲り取られたフードを目深にかぶり直し叫んだ。
違う、違う、と叫んでも周りの神官たちも王妃も聞いてはくれない。
引っ捕らえろ!と言うリジーの号令と共に私はあっけなく周りのやつらに押さえつけられた。
くそっ!!とリジーを見上げ、睨みつけると彼は私の傍にしゃがみ込み残念だったねぇと笑い、連れて行けと神殿から引きずり出され、牢屋へと打ち込まれた。
異形のものにこれ以上触りたくないといったどころだろうか、着ていた身包みこそ剥がれなかったが私の心はそれどころではない。
私は異形じゃない。
化け物じゃない。
昔も何度も訴えた。
けれど誰も聞いてはくれなかった。
だから私はこの瞳を隠した。
上手くいっていたはずなのにと私は部屋の隅で震えて泣いた。
どうして、なんでと。
誰か助けてと。
「頭痛い……」
「大丈夫ですかー? ラヴィニア様ー?」
昨日の酒がまだ残っているのか頭が痛くて仕方ない。
ガンガン痛む頭を抑えながら私は本日も資料整理。
それと月一の神殿での集会が待っている。
異形がどうこう言う割には神やら天使やらを信仰しているこの国も世界も矛盾だらけだなと半ば呆れていた。
「エリシア、そろそろ行ってくる」
「はーい。行ってらっしゃいませー!」
壁に立てかけた杖を手に私は私室を後にすると城の傍にある神殿へと向かう。
神殿には既に他の神官たちが何人か集まっており私の姿を見るとみな、ラヴィニア様と頭を垂れてくる。
私は皆の間を通り自分の定位置である最前列へと進むと王妃を待った。
暫くしてやってきた王妃は何故か隣にリジーを連れていて、何故とざわつく私たちの間を通り抜け振り返ると静かにと告げた。
「今日は皆さんに大切なお話があってリジーを呼んだのです」
「大切な話……?」
「そう。ラヴィニア、貴女のことで」
「は……?」
王妃に名指しされ私はどういうことだと酷く動揺した。
それと同時に嫌な予感が頭に浮かんで胸がざわついて。
まさか、とリジーの方を見るとラヴィちゃんが悪いんだからね?と言わんばかりに笑うとリジーは王妃に促されるままとんでもないことを言い出した。
「王室神官たるラヴィニア様が異形を匿い、あろうことか生け捕りにした者を逃しているのです」と。
私はやはりかとぎりっと歯を食いしばるとリジーに襲いかかりたい気持ちを抑え平静を装うように私が?と返した。
「証拠もないというのにそんな世迷い言を。貴様はこの私を陥れようとしているのか?」
「そんな滅相もございませんよ、ラヴィニア様? でも僕は見ちゃったんですよ。貴女が異形と手を組んでこの国を滅ぼそうとしているところをね」
「は?」
「だって、ほら」
そう言ってリジーは私に襲い掛かってくると被っていたフードに手をかけ力任せに引っ張った。
咄嗟のことに反応できなかった私はあれほど嫌だった素顔を皆の前に晒してしまう。
初めて見る私の顔に、瞳に他の神官たちはざわつき、なんだあの瞳はと口々に言い合っていて。
「ご覧のとおり! この瞳はまるで異形そのもの! 彼女は人間の皮を被った異形なのです!」
「ち、ちが……っ、これ、は……っ」
「なんと醜い……。まさか異形がこの城に隠れていようとは……」
「違う……っ!! 私は……っ、私は化け物じゃないっ!! 」
見るなっ!と私はその場に蹲り取られたフードを目深にかぶり直し叫んだ。
違う、違う、と叫んでも周りの神官たちも王妃も聞いてはくれない。
引っ捕らえろ!と言うリジーの号令と共に私はあっけなく周りのやつらに押さえつけられた。
くそっ!!とリジーを見上げ、睨みつけると彼は私の傍にしゃがみ込み残念だったねぇと笑い、連れて行けと神殿から引きずり出され、牢屋へと打ち込まれた。
異形のものにこれ以上触りたくないといったどころだろうか、着ていた身包みこそ剥がれなかったが私の心はそれどころではない。
私は異形じゃない。
化け物じゃない。
昔も何度も訴えた。
けれど誰も聞いてはくれなかった。
だから私はこの瞳を隠した。
上手くいっていたはずなのにと私は部屋の隅で震えて泣いた。
どうして、なんでと。
誰か助けてと。